渡辺直美がコラボしたドージャ・キャットの最強の実績。LAギャ...の画像はこちら >>



Text by 山元翔一
Text by アボかど



7月22日、ドージャ・キャットと渡辺直美がコラボしたリミックス“Kiss Me More feat. 渡辺直美”がリリースされた。



オリジナルバージョンは『第64回グラミー賞』で「最優秀ポップ・パフォーマンス賞(グループ)」を受賞した“Kiss Me More feat. SZA”で、今回、渡辺直美はSZAに代わってラップを披露している。



なお同楽曲には、歌詞制作・ラッププロデュースとしてAwichが、企画指揮として『水曜日のダウンタウン』などでも知られる藤井健太郎が参加。このコラボ曲のリリースを機に、ドージャ・キャットのキャリアについて紐解いていく。



昨年7月にはギャル雑誌『egg』の表紙を飾っていたDoja Cat(ドージャ・キャット)と、日本との縁がまたひとつ生まれた。ヒット曲“Kiss Me More”に渡辺直美をフィーチャーしたリミックスが新たに制作されたのだ。



プロデュースを務めたのはAwichと藤井健太郎で、ニューヨークと東京のスタジオをリモートでつないでレコーディングに挑んだという。



Awichは「元々ずっとDoja Catのことは最強の存在だと思っていました。

歌も歌えるし、ラップもできるし、踊りもできる」と語っているが、その最強ぶりは実績にも表れている。



渡辺直美がコラボしたドージャ・キャットの最強の実績。LAギャルとして『egg』の表紙に起用も

ドージャ・キャット
LA生まれ、LA育ち、1995年生まれのラッパー、シンガー。幼少期からピアノやダンスを通して音楽にハマり、バスタ・ライムス、エリカ・バドゥ、ニッキー・ミナージュ、ドレイクなどを聴いて育った。16歳のころからネット上に自身の楽曲を公開しはじめ、デビュー前からSoundCloudを通してファンを獲得。これまで3枚のフルアルバムをリリース。2022年7月、最新アルバム『Planet Her』の収録曲“Kiss Me More”に渡辺直美を招いたリミックスを発表した。



2020年にシングルカットされた“Say So”が16週連続で全米シングルチャートトップ10入りし、2021年の『グラミー賞』では「最優秀新人賞」や「最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス賞」などにノミネート。



2021年にリリースされたアルバム『Planet Her』も全米チャート初登場2位を記録し、2022年の『グラミー賞』でも主要3部門含む計8部門でノミネート。今回のリミックスの原曲“Kiss Me More feat. SZA”は「最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス」部門を獲得した。



ヒップホップが最も売れている音楽ジャンルになって久しく、歌うようなラップも浸透している現代だが、グラミー賞の「ポップ」と名のつく部門でノミネートされたラッパーは意外にもそれほど多くない。



歌うラッパーの代表格で現代屈指のポップスターのひとりであるDrake(ドレイク)ですら、ドージャ・キャットが獲得した「最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス」部門に届いたことはないのだ。そんななかでドージャ・キャットがその壁を乗り越えたことは大きな快挙と言えるだろう。



その多才さが仇となって「ラッパーなのか?」という議論の的にもなっているドージャ・キャットだが、そのラップの実力は非常に高い(※)。



“Kiss Me More”が収録されたアルバム『Planet Her』の冒頭を飾る“Woman”などで、言葉を高速で詰め込むようなスキルフルなラップを聴くことができる。



もともとラッパーとして西海岸のアンダーグラウンドでキャリアをスタートした人物であり、そのシーンから登場してポップな才能を開花させてブレイクしたという点ではBlack Eyed Peas(ブラック・アイド・ピーズ)やAloe Black(アロー・ブラック)などの系譜にあるアーティストといえる。



また、ドージャ・キャットが多くの人を惹きつける理由のひとつに、ユーモア溢れるキャラクターや奇抜なセンスが挙げられる。リリック解説などを行うサービスの「Genius」がYouTubeに公開した動画「Doja Cat’s Most Memorable Flows」ではインタビューやミュージックビデオなどがコンパクトにまとめられており、そのラップの実力とセンスを感じることができる。



そんなドージャ・キャットが今回渡辺直美らとコラボした楽曲“Kiss Me More”のテーマは、タイトルどおり「もっとキスをしたい」というもの。



プロデューサーのひとりのYeti Beats(イエティ・ビーツ)は、インタビューで「題材はシンプルで親しみやすい。社会的な交流が少ない時代に、この曲は楽しくて軽快な逃避行を提供してくれた」と話している(※)。



また、フックで「ベイビー、抱きしめて / あなたのグルーヴが好きなの」と音楽に引っかけるようなフレーズを歌っているが、それを踏まえると数々の曲名やラッパーの名前が隠されていることに気づく。



<We’re so young, boy / We ain’t got nothing to lose(若いんだから失うものなんて何もない)>は人気ラッパーのYoungBoy Never Broke Again(ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲイン)を想起させるし、何よりも繰り返し登場する「taste」という単語はドージャ・キャットとも共演経験のあるラッパーのTyga(タイガ)の曲名だ。



ほかにもSnoop Dogg(スヌープ・ドッグ)の名曲“Gin and Juice”も引用されていたり、「リップグロス」を「リックロス」っぽく発音したあと、ラッパーのRick Ross(リック・ロス)のモノマネと思しき「huh」で自分のヴァースを締めるという小ネタもある。



親しみやすいポップソングとして成立させつつ、ヒップホップとしての楽しみ方もできる曲になっているのだ。

なお、Sony Music Japanの公式YouTubeチャンネルで日本語字幕バージョンもアップされているので、詳しいリリックはそちらを。



渡辺直美もまた、Beyonce(ビヨンセ)のダンスパフォーマンスでブレイクしたヒップホップ / R&B愛を持った人物だ。原曲に参加していたSZAと「GAP」のCMで共演したこともある。今回作詞とボーカルディレクションを担当したAwichはラッパーとして強い存在感を発揮しつつも歌も得意としており、ドージャ・キャットと通じる音楽性を持っている。



今回のコラボは、ドージャ・キャットの音楽性と“Kiss Me More”で見せたヒップホップ愛を踏まえてもふさわしいものと言えるだろう。また、ドージャ・キャットの先輩格にあたるブラック・アイド・ピーズやアロー・ブラックも日本人アーティストとの親交があり、日米の交流史の新たな一ページでもある。



と、いろいろ意義のあるコラボではあるが、曲自体はあくまでも楽しく聴けるものとなっている。オールスターが生み出すグルーヴは、きっと多くの人の心を掴むはずだ。