Text by 廣田一馬
『True Colors SPECIAL LIVE2024』が3月7日に渋谷・NHKホールで開催された。
同イベントは、日本財団の日本財団ダイバーシティインディアーツが2019年から展開している『True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭』の一環として開催。
出演者は新しい学校のリーダーズ、ILL-Abilities、GenGen、佐藤ひらり、田川ヒロアキ、超特急、トニー・ディー、野田あすか、遥海、FANTASTICS、森崎ウィン、Miyu、SOCIAL WORKEEERZ、True Colors DANCERS。手話パフォーマーをKuniyとRIMIが務めた。司会はウエンツ瑛士と影山優佳。
多種多様な個性が混ざり合い披露された、一夜限りのパフォーマンスの様子をレポートする。
ライブが始まる直前には、ダンスで福祉をデザインするSOCIAL WORKEEERZリーダーのDAIKIと公式応援サポーターの難聴ウサギが登場。イベントの趣旨や楽しみ方を説明した。
『True Colors SPECIAL LIVE2024』では誰もがライブを楽しめるよう、鑑賞サポートとして車椅子席、補助犬の同伴席、ライブと連動して体で振動を感じられる「ボディソニック」付きの座席などを用意。モニターには日本語字幕が表示され、ステージ上には手話通訳が配置されているほか、網膜に直接レーザーを投射し弱視を補助するRETISSA ON HANDなども準備されている。
より多くの人が楽しむために、グッズの使い方や鑑賞マナーについても説明。手を顔の横でひらひらと動かすことで、音が聞こえない人でも目で見てわかる手話の拍手を難聴うさぎが紹介した。
トップバッターはFANTASTICS。
二分脊椎症のあるジャズ・ボーカリスト、トニー・ディーは車いすに乗って登場。“Only You”を歌い上げたほか、フィリピン出身のボーカリスト遥海と“The Lady Is A Tramp”をデュエットで歌った。
パフォーマンス後のインタビューで“Only You”について聞かれ、「妻と私にとっての大切な曲です。若い時の恋はとても素敵ですが、歳を重ねていくとさらに良い愛になるという歌です」と語ったトニー。モニターには会場に訪れている妻の姿が映し出され、会場は温かい拍手に包まれた。
司会の影山とウエンツが、手話通訳の武井誠と麻生かおり、手話パフォーマーのKuniyとRIMIを紹介。あわせて、耳が聞こえないパフォーマーのリズムキープや会話伝達などを助けるフィーダーについても説明した。
会場が暗転すると共に、響き渡るチャイムの音。壮大な音楽に合わせて、新しい学校のリーダーズが登場する。
勢いのままに“Toryanse”と“Giri Giri”を披露し、熱くなっていく観客。そして、昨年の紅白歌合戦でも披露した“オトナブルー”を披露。
最高潮のボルテージとなった会場に、新しい学校のリーダーズ、SOCIAL WORKEEERZ、Miyuら総勢38人のダンサーからなるTrue Colors DANCERSが登場。テーマは「多様性」で、障害のある人からダンス強豪校の部員まで、さまざまな境遇のダンサーたちが一堂に会した。
新しい学校のリーダーズがパフォーマンスへの想いを語ると、本番に向けて緊張感が高まっていく。暗転した会場のモニターにダンサーたちによる3か月の練習期間のダイジェストが流れ、コミュニケーションが取れなかった顔合わせから、練習を経て一つの目標に向かって打ち解けていく様子が紹介された。
あらためてTrue Colors DANCERSがアナウンスされ、拍手に包まれた会場。一瞬の静寂のあと、ついにパフォーマンスが始まった。
楽曲は新しい学校のリーダーズの“踊る本能 001”。明るい音楽と共にそれぞれの個性を本能のままに表現するダンスが繰り広げられるなかで、音楽が突然ストップ。
鎮まった会場にSUZUKAの「本能のままに、細胞を鳴らせ。みんなで、ひとつに」という言葉が響き渡る。
「せーの」という掛け声と共に、足を踏み鳴らし、息のあったクラップをするダンサーたち。
SUZUKAが「踊る本能!」と叫び、音楽がリスタート。再びそれぞれの個性を爆発させるダンスが展開され、最高のボルテージのなかでクライマックスを迎えた。
ステージセットのイラストは、統合失調症の作家・笠原鉄平による作品『迷路で大いに遊んでくださいな!!』
「True Colors DANCE 2024」のパフォーマンスの後にも、多種多様なパフォーマーが登場。
全盲のシンガーソングライターで、東京パラリンピック開会式の国家独唱を務めた佐藤ひらりがピアノで“Amazing Grace”を弾き語り、全盲のロックギタリストで、ギターのネックを上側から抑える独自の奏法を使って演奏を行なう田川ヒロアキが“アヴェ・マリア”などを演奏。
MCの影山優佳も佐藤、田川、手話パフォーマーRIMIとコラボし“カントリーロード”を披露し、影山は歌声と手話で楽曲世界を表現した。ウエンツ瑛士は発達障害を抱えたピアニストの野田あすかとコラボ。選んだ楽曲はビリー・ジョエルの“Piano Man”。力強い歌声を会場に響かせた。
聴覚障害があるデフダンサーで、東京パラリンピック閉会式にも出演したGenGenはエド・シーランの“Shape of you”にのせてパフォーマンスを披露。曲の途中で音が消え、無音で踊る感覚を観客にも共有した。
超特急が登場すると、会場は声援でいっぱいに。
ILL-Abilitiesは、それぞれの障害に合わせた体の特徴を生かしたダンスを披露。観客の想像を超えるアクロバティックな動きは、まさに「言い訳なし、限界なし」というポリシーを体現した圧巻のパフォーマンスだ。
トリを飾ったのはシンガーの森崎ウィン。ウエンツと軽快なトークを繰り広げたほか、“Fly with Me~Don’t Boo ドンブラザーズ”を披露し、田川ヒロアキ、ILL-Abilities、Miyu、GenGenと“Beat it”でコラボパフォーマンスを繰り広げた。
それぞれの個性がぶつかり合うステージで最高になった会場。影山は「皆さんの音楽への愛やダンスへの愛をストレートに感じさせていただけるような素敵なライブにMCとして携わることができて本当に光栄でした」とコメントし、ウエンツも「パフォーマンス、歌、音楽はもちろん素晴らしいですが、皆さんの魂でそれぞれが繋がった。そんな一夜になったと思います」と語った。
最後にはウエンツが「ステージの皆さんでもう一曲お送りしたいと思いませんか!」と煽り、会場は大歓声。ブルーノ・マーズの“Just the Way You Are”を出演者全員で歌い、最高の盛り上がりの中で一夜限りのスペシャルなライブは幕を閉じた。