Text by 生田綾
Text by 今川彩香
Text by 南麻理江
1話3分半のショートアニメ『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』は、2025年にTOKYO MXでのテレビ放送に加え、公式YouTubeでは11言語にて全世界同時配信され、大きな話題となった。そして新作パートを加え再構成した映画『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』が2月6日、公開された。
本作の脚本、キャラクターデザイン、制作という工程をほぼ1人で担当したのが亀山陽平監督。劇場版の制作を終えたてのタイミングで、Podcast番組『聞くCINRA』にゲストとして登場してくれた。
ショートアニメシリーズ放映後も反響がやまない『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』。劇場版の新作パートで、リョーコを掘り下げたその思いとは? そして、ほぼワンオペで制作に向かう亀山監督の息抜きとは? その舞台裏に迫ります。
—ショートアニメシリーズ『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』の最終回が公開されたあとも、本編では触れられなかったキャラクターの情報が発表されるたびに大きな反響がありましたね。
亀山陽平(以下、亀山):作品は1話3分半ですが、つくるにはすごく時間がかかっているので、画面越しにキャラクターと向き合っていると自分のなかで自然に設定が膨らんでいって。作中で描けるのがベストではありつつ、いろいろと限界もあるので、設定ばっかり溜まっていて。
SNSで設定を公開しても「そんな興味持ってもらえんやろ」と思っていたんですが、好きな人が盛り上がってくれて。こうやって作品を楽しんでもらうんだなと、学んだところでもありました。
亀山陽平(かめやま ようへい)
1996年生まれ。幼い頃から欧米スタイルの手描きアニメーションに憧れがあり、海外でアニメーターになることを目指していた。2016年夏からアメリカ合衆国カリフォルニア州に留学するが、欧米では手描きアニメーションが主流ではなくなっていること、そして3Dという媒体に興味を持ち始めたことから将来の方向性について考え直し、2019年に大学を自主退学し日本へ帰国。
—最近では、サイボーグのカートとマックスの過去についての情報が話題になりました。
亀山:もともとサイボーグという設定が、倫理的にきつい側面がありますよね。『ミルキー☆サブウェイ』はポップな作品なので、あまりその雰囲気を出さないようにはしていました。自分のなかで決めているこの設定は「だいぶ重たいものだよな」と思っていたんです。
でも設定を出してみたら、喜んでくれる人が結構いて(笑)。大丈夫なんだな、といまだに驚いています。
マックス(左)とカート ©亀山陽平/タイタン工業
—その設定を知らないなかでも、アニメ本編で、ほかのキャラ(チハル)から「ありがとう」と言われて、カートとマックスのこれまでと態度が変わるシーンが印象的でした。これって私たちも同じで、普段生きていて2人のような小さな不満を感じている人もたくさんいるんだろうな、と感じながら見ていました。
亀山:普段生活していて、いろんな人の見えない仕事に支えられていると思うんですけど、そういう労働に対する感謝の意識というものをつねに持ったほうがいいな、と思っているんです。
それと、仕事が楽しくないと感じる要因に「やりがいを感じられない」というのは大きな問題として存在しているかなと思っていて。難しくならない範囲でちょっとだけ、そういうものも話のなかに込められたらいいな、とあのストーリーが生まれました。
正直なところ「ありがとう」の一言で、どれだけその人の心が救われるかはわからないとは思いつつ、わかりやすくフォーマットにまとめてみた、という感じですね。
—でも、あのシーンはシンプルだからこそ刺さりました。キャラクターたちの織りなす関係性が魅力的ですよね。過去のインタビューでは、そのストーリーの部分をもっと描きたかったとおっしゃっていましたが……?
亀山:キャラクターの深掘りをしたいというよりは、お話の構成的にもっとうまくできたな、と反省してるところがありますね。ほかのドラマや漫画を見ていても、本当によくできている話は演出に無駄がなく、つくり込まれていて。そういう意味で、キャラクターをもっとうまく描けたらな、という思いがあります。
—劇場版が先日完成したそうですね。ショートアニメシリーズから劇場版までのスピード感がすごいです。
亀山:制作会社の人とも話していたんですけど、こんなに急がなくてもよかったかもしれない(笑)。「鉄は熱いうちに」ということでこの時期になったのですが、劇場版の公開日を発表したら「こんなに早いんだ」というコメントが結構ありましたね。
ただ、『ミルキー☆サブウェイ』は2~3年前からつくり始めていた作品なので、いったん終結させて、次の物語に集中したいという気持ちもありましたから、ちょうど良かったんだと思います。
—劇場版の制作で力を入れたポイントを教えてください。
亀山:細切れになっている12話を1本につなげる作業が本当に大変でした。それがまとまって楽しめるように再構成するのが、一番頭を抱えたところです。
ショートアニメだと毎回オープニングを挟めるので、じつはオチがついてなくてもオチがついたことになっている瞬間が結構あって(笑)。それが今回かなり封じられたので、どうやって映像をつなぐか、という演出の技術が求められました。追加で映像を挟んで、時間の経過をうまく表現しようとしたり。
—ショートアニメシリーズは監督、脚本、キャラクターデザイン、制作という、ほぼすべてを亀山さん1人で担当されましたが、劇場版はどうやって制作したんですか?
亀山:劇場版に関しては、映像は1人でやることになりましたね。時間がなかったので、人集めがそもそも無理だったんです。
—さらにワンオペ体制だったんですか⁉︎
亀山:音楽や音響に関してはいろいろな人に手伝ってもらっていますが、映像は本当に1人でやらなきゃいけなくて。もう本当に新作パートをつくるので手一杯でしたから、大変でしたね(笑)。
—新作パートでは、チハルちゃんたちの取り調べを担当する警察官である、リョーコさんの造形がより深まりますね。
リョーコ ©亀山陽平/タイタン工業
亀山:リョーコと(同僚の)アサミの話は、ショートアニメシリーズ制作のときから何となくやりたいと思っていた要素だったんです。今回、劇場版をつくらせてもらえるんだったらそれをやろうと思って追加しました。
リョーコは、収拾がつかないキャラクターが集まっているなかで、どうにか収拾をつけてくれるという意味でも「担任の先生」みたいなポジションになっているんじゃないかと思います。自分でも予想していなかったぐらい人気の出たキャラクターで、深掘りできるのは楽しかったですね。
—完成した劇場版を見て、いかがでしたか?
亀山:いざ完成したものを劇場で見てみたら、大画面や劇場の音響で楽しめて、スマホやPCの画面で見るのとは違う迫力があって。やっぱり映画館って面白いな、と思いました。ストーリーはほぼ一緒ですけど、違った雰囲気で楽しめると思います。
—亀山さんはたくさん映画を見てこられたとも聞いています。どんな作品に影響を受けてきましたか?
亀山:(映像作品を見るときに)もともとキャラクターの立ち居振る舞いを見どころとして好んで見ていたので、そういう意味では海外アニメーションに影響を受けている部分はあると思います。実写映画も好きでよく見ていました。
—特に好きだった実写映画があれば伺いたいです。
亀山:自分は『パイレーツ・オブ・カリビアン』とか、その辺が世代で。
あれが作品のアイコンとしてめちゃくちゃ重要で。ジャック・スパロウって「動きでキャラクターを表す」いい例として、アニメーションの参考書みたいなものでもフィーチャーされて語られることもあるんです。
—たしかにあの揺らぎ方、独特ですよね。現実世界の人間として考えると過剰かもしれませんが、あの世界観やジョニー・デップの演技力も相まって、キャラクターとしてとても魅力的ですよね。
亀山:そうなんです。全員ジャック・スパロウだったら収拾つかなくなると思うんですけど(笑)、そこにウィル(オーランド・ブルーム)という真面目なツッコミ役のような人物もいるから、どちらも魅力的に映るつくりになっているんですよね。
どれだけ迫力がある映像でも面白く感じない映画はたまにあって、それはやっぱり、キャラクターの魅力が薄いことが原因としてあるのかなと思っています。個性があって魅力的なキャラクターがいる作品は、たくさん見てきたなかでも印象に残っています。
—ほかにも好きな作品はありますか?
亀山:どれもキャラが立っている作品ばかりで、マーベル映画も見ていますし、ロバート・ダウニー・Jr.が主演の『シャーロック・ホームズ』もめちゃくちゃ好きで。ロバート・ダウニー・Jr.が演じる、結構自己中で破天荒なあのキャラクターが輝いていて、シリーズとしての人気を押し上げている面があるかなと。
©亀山陽平/タイタン工業
—あらためて、キャラクターのファッションも素敵ですよね……! リアルクローズを意識されているとのことで、服飾もお好きなのかなと思っていて。アニメーションに関わらないところで、亀山さんの好きなことも聞いてみたいです。
亀山:結構無趣味で、あんまり語れるものがなくて。それこそ映画の話とかになっちゃうんですけど、それはほぼ仕事でやっていることと変わんないし……。
普段の息抜きで何をやっているかなと思ったら、近所のスーパーで買い物する時間とかが好きなんです。本当にそういう些細なことだけですね、楽しみは。だから料理とか、日常生活のことになりますかね。
—料理もされるんですね!
亀山:料理って言っても、ちゃんとした料理じゃなくて、鶏肉をどれぐらいの時間加熱したらうまいか、みたいな。すごく素朴なところを試してみていますね。ほぼ毎日同じ料理ではあるんですけど、同じ具材をどうしたらよりうまくできるかみたいな……。
—そのコツコツな感じが作品にもつながっている感じがします。
亀山:ファッションで言うと、スーパーに行ったり、あるいは電車に乗ったりしているときに、街のなかにいるいろんな人を見て学ぶ瞬間が多いですね。
「あ、最近こういう服の組み合わせが多いな」みたいに、こうやっていまのトレンドみたいなものがつくられていくのか、と。そういうものを作中でも入れるようにするなど、意識しています。
—Podcast番組「聞くCINRA」では、ゲストの方に聞いている恒例の質問がありまして。クリエイティブな仕事を目指している人たちに、何かメッセージをいただけませんでしょうか?
亀山:自分が何を好きなのか、はっきり持っておくことが大事だなと思っています。「これをやっている瞬間、すごくやりがいを感じるな」と思えるものがあると思うんですけど、それが何なのか、はっきりわからない人ほど進路選びで苦労しているなと感じます。
本当に若いうちだと、好きな作品を見るなり、あとはいろんなものつくるなりして、自分が「これをやっている瞬間が一番楽しい」というのを、ちゃんと言語化できるようにしておくことは大事かなと思います。それがひとつ。
もうひとつは、つまらない答えになっちゃうんですけど(笑)、健康が第一ですね。
—健やかでいること、本当に大切です。
亀山:どうしてもエンタメというものは、まず生活がベースにあったうえでの楽しみだと思うので、日常生活をしっかりすることや、健康が大事だと思います。
クリエイターとしても、生活のつまらない側面をしっかり理解しておけると、そのうえにある「息抜きとしてのエンタメ」のありがたみが感じられるのかなと。ずっとエンタメだけを消費していると、そのありがたみを感じづらくなる瞬間もあると思うので。
人としての生活のベース、地盤を固めていくことが大事なのかなと思います。
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