森秋彩が念願のパリ五輪内定! 得意のリードで逆転3位【クライミング世界選手権2023】
IFSCクライミング世界選手権(スイス・ベルン)は11日(日本時間12日)、ポストファイナンス・アリーナでボルダー&リードの女子決勝を行い、日本の19歳・森秋彩(あい)がリードでの逆転で3位に入りパリ五輪代表に内定した。3位以内に入ればこの種目で最初の五輪代表内定が決まる中、日本勢は森が準決勝2位、野中生萌が同5位でファイナリスト入り。
ボルダーは第1課題からサプライズ。本来はリードに強いピルツが前の2人とは異なるムーブをチョイスして1トライ目から第2ゾーンを獲得、2トライ目に完登する。その後このダイナミック系課題を登り切ったのはラバトゥとガンブレットのみで、ノーミスによる完登で25ポイントを得た。スラブの第2課題は流行中の反転ムーブをキムとサンダースが失敗したあと、ピルツが壁側を向いたまま攻略するなど再びキレの良さを見せてトップまでたどり着く。バランス系課題を強みとする森は完登。難しい足の踏みかえを決めた野中は最後のホールドをとらえ切れずポイントを伸ばせなかった。

体力を大きく削る第3課題では2連続完登していたピルツ、ラバトゥが失速。7人連続で失敗したが、最後に登るガンブレットが強靭なフィジカルを発揮して一撃で仕留めることに成功した。最終第4課題、何とか完登にこぎつけたい野中はゴールへのコーディネーションムーブを華麗に決めて2アテンプトで攻略。他に完登は出ず、会心の登りを見せた野中が5位に浮上してリードに望みをつなげた。1位は3完登のガンブレットで84.9ポイント、2、3位は2完登のラバトゥ、ピルツで69ポイント台、4、5位はベルトン、野中で54ポイント台。


リード課題はダイナミックなムーブはないものの、中盤の最大傾斜130度の壁面に指先を使うセクションや強いフィジカルが求められるパートがあり、まさに持久力を問う内容となった。先頭のキムは34歳になってもなおリードで結果を残し続ける素晴らしい登りで、完登まであと2手に迫る49+をマーク。日本勢の五輪内定にその成績が大きく影響するピルツはキムに次ぐ48+で合計157.1ポイントとなり3位以内が確定。100点以上の差をつけられた野中、森は完登しても彼女を上回れなくなった。


最後にはガンブレットが控えているため、3位が現実的な目標となった日本勢。野中は34+で合計93.5ポイントとし暫定3位につけるも、高度43で合計137.8ポイントのラバトゥに抜かれてしまう。野中の表彰台はなくなってしまったが、ラバトゥはそこまで大きくポイントを得られず、93.3ポイント差の森に逆転の可能性が残された。


完登まで残り1手となる高度50、96ポイントを取れば五輪に内定するギリギリの状況下で、オーソドックスなルートと相性のいい森は予想通りに手堅くムーブを重ねていく。1手につき4ポイントが与えられる最終セクションに突入しても焦る様子はなく、ついに五輪行きがかかる一手をつかんだ。

優勝は合計177ポイントのガンブレット。2度目の五輪内定を決め、競技終了後には大きくガッツポーズした。2位はピルツで、森とともにボルダー&リードで最初の五輪内定者となった。7位でフィニッシュした野中は日本が得られる残り1枠を目指し、年内のアジア予選など引き続き選考大会を戦っていくこととなる。


<リザルト>
1位:ヤンヤ・ガンブレット(SLO)
177.0pt(B 84.9pt/L 92.1pt)
2位:ジェシカ・ピルツ(AUT)
157.1pt(B 69.0pt/L 88.1pt)
3位:森 秋彩(JPN)
140.6pt(B 44.5pt/L 96.1pt)
4位:ブルック・ラバトゥ(USA)
137.8pt(B 69.8pt/L 68.0pt)
5位:キム・ジャイン(KOR)
106.2pt(B 14.1pt/L 92.1pt)
6位:オリアーヌ・ベルトン(FRA)
93.8pt(B 54.7pt/L 39.1pt)
7位:野中 生萌(JPN)
93.5pt(B 54.4pt/L 39.1pt)
8位:アナスタシア・サンダース(USA)
69.7pt(B 24.6pt/L 45.1pt)
※上段左から順位、氏名、所属国
※下段左から2種目の合計ポイント、各種目のポイント(B=ボルダー、L=リード)
※3位までがパリ五輪出場内定
大会スケジュールや出場日本人選手はこちらから
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編集部 /写真
© Jan Virt/IFSC