2023年7月、メルカリは「世代別の消費行動・資産認識に関する調査」を実施。これにより、Z世代・ミレニアル世代・バブル世代間の消費行動と資産認識の違いが浮き彫りとなっている。


Z世代の42.7%が「保有しているモノを売れば欲しいモノが買えるという想定で、売る前に欲しいモノを購入することがある」など、フリマアプリの浸透で新しい消費行動が定着しつつあることもわかった。
○フリマアプリの浸透で消費行動・意識に変化

2023年7月、フリマアプリ「メルカリ」はサービス開始から10周年を迎えた。月間利用者数は2,200万人を超え、累計出品数は30億品以上に上っている。

メルカリの成長は個人間EC市場の拡大にも寄与しており、2021年の個人間ECの推定市場規模は前年比+12.9%の2兆2,121億円に伸長。調査開始以来、初めて2兆円を突破した(経済産業省 電子商取引に関する市場調査:2022年8月)。

フリマアプリが社会インフラとして浸透したことは、消費者の購買行動や消費に対する意識にも確実に変化をもたらしている。


メルカリが運営するメルカリ総合研究所は、2023年7月、慶應義塾大学 商学部 山本晶教授監修のもと、18歳から69歳の1,030名を対象に「世代別の消費行動・資産認識」に関する調査を実施。「Z世代(18歳~24歳)」「ミレニアル世代(28~43歳)」「バブル世代(54~58歳)」の3つの世代間の消費行動と資産認識の違いを明らかにした。
○フリマアプリ利用率は56.6%、Z世代の特徴は?

調査対象者の56.6%にフリマアプリの利用経験があり、世代別にみると、Z世代の64.1%、ミレニアル世代の60.2%、バブル世代の51.6%に利用経験があることがわかった。

フリマアプリの用途をみてみると「主に購入で利用」と回答したのはZ世代の12.6%、ミレニアル世代の18.0%、バブル世代の22.7%で、Z世代は上の世代に比べて「主に出品/販売で利用」している人の割合が多いことがわかった。
○フリマアプリ利用者の52.4%が「リセールバリュー」を考えて購入

買い物の際、その商品のリセールバリューを意識する人も増えており、フリマアプリ利用者の52.4%が「新品購入時にリセールバリューを考える」と回答している。

Z世代の12.1%、ミレニアル世代の17.3%、バブル世代の4.0%が「(新品購入時にリセールバリューを考えることが)よくある」と回答。
「よくある」と「たまにある」の合計では、Z世代が59.1%、ミレニアル世代が56.4%、バブル世代が52.0%となり、年代が若いほどリセールバリューを意識する傾向が強いことがわかった。
○Z世代の出品理由1位、「売ったお金で欲しいモノを購入するため」

フリマアプリの出品理由を聞いたところ、「使わなくなったので、欲しいと思う人に使ってもらいたいから」が64.3%を占め、全体の1位となっている。

一方、Z世代のあいだでは「売ったお金で欲しいモノを購入するため」が最多の62.9%を占めた。これを出品理由として挙げているのは、ミレニアル世代で54.9%、バブル世代で31.3%となっていることから、Z世代は他の世代よりも「フリマアプリの利用で現金収入を得る」ことを重視していることがうかがえる。

Z世代の51.5%が「自らの持ち物は現金化しやすい」と回答


前項の調査結果から、Z世代にとっては「フリマアプリに持ち物を出品して得たお金で欲しいモノを購入する」という消費行動が身近になっていることがわかる。このことは「資産」に対する意識にも影響を与えている。


「自分が保有・利用しているモノは手軽に売買ができ、現金化しやすいモノだと思うか」を質問したところ、Z世代は51.5%、ミレニアル世代は34.9%、バブル世代は18.6%が「とてもそう思う」「そう思う」「ややそう思う」と回答しており、Z世代はバブル世代と比べて約2.8倍、「自らの持ち物は現金化しやすい」と考えていることが明らかになった。

これは、Z世代の持ち物がバブル世代の持ち物よりも資産価値が高い・現金化しやすいというよりも、バブル世代が「現金化しよう/できる」とは思っていないようなモノでも、Z世代は「現金化しよう/できる」と考えているためだと解釈するべきだろう。
○売る前に欲しいモノを買う経験があるZ世代は42.7%

「不用品を売って得たお金で新しいモノを買う」という消費行動は従来からあるものだが、最近では、「持ち物を売れば買えるという想定で、売る前に欲しいモノを買う」という消費行動も広がっている。

「保有しているモノを売れば欲しいモノが買えるという想定で、売る前に欲しいモノを購入することがある」か尋ねたところ、25.9%が「よくある」「たまにある」と回答。世代別にみると、Z世代が42.7%、ミレニアル世代が28.4%、バブル世代が15.5%と、Z世代が最も高い結果となっている。

フリマアプリでは、実際に出品するまでもなく、同じ/類似の商品がいくらで売れているのかが簡単に確認できるため、頻繁にフリマアプリに出品する世代ほど、自然と「これを売ればいくら入ってくる」という想定に基づいた消費行動をするようになっているようだ。

○「資産」の認識も幅広いZ世代

ほかの世代に比べ、Z世代は幅広いモノを「資産」として認識していることも明らかになった。「保有・利用をしていると想定し、資産として認識できるモノ」を聞いたところ、Z世代が「資産」としてみているモノTOP3は、1位「金融商品」2位「ゴールド・宝石」3位「不動産」となった。

一方、Z世代が他世代と比較して資産としてみている傾向が強い保有物TOP3は、1位「暗号資産(Z世代とZ世代以外の差7.6%)」、2位「アクセサリー(Z世代とZ世代以外の差5.5%)」、3位「靴・スニーカー(Z世代とZ世代以外の差4.5%)」となっている。

フリマアプリへの出品を通して、積極的に持ち物を現金化しているZ世代は、「フリマアプリに出品すればたいていのものが売れる」ことがわかっているため、ほかの世代に比べて「資産」ととらえているモノの幅が広いのだろう。

こうした意識が、前項の「自らの持ち物は現金化しやすい」という感覚や、「持ち物を売れば買えるという想定で、売る前に欲しいモノを買う」という行動につながっているとみられる。
○予算の考え方が変わり、買い物の選択肢が拡大

8月7日に開催されたメディア関係者向けの発表会において、本調査を監修した慶應義塾大学 商学部 山本晶教授は次の通りコメントした。


「モノを買うときはたいてい予算があり、自分の財布の中身と相談するものです。従来、財布の中身は手元にある現金でしたが、Z世代の場合は、頭の中の財布に自分の持ち物(を売ると得られるお金)も入っています。フリマアプリや買取サービスをはじめとする二次流通の普及が持ち物の流動性を高め、これまでは資産として認識しにくかった消耗品も現金化しやすくなったことで、『資産』の認識がフレキシブルになりました。その結果、買い物の選択肢が広がり、新しい購買行動が生まれています」

また、メルカリ 執行役員 CBO Marketplace 兼 CEO Fintech 山本真人氏は、「メルペイに後払い機能が備わり、手元に売上金がない状態でも購入できるようになったことが、こういった傾向を後押ししているのではないでしょうか」と述べた。

メルカリをはじめとするフリマアプリの普及で、個人間EC市場規模が年々拡大している一方、フリマアプリの活用度合いや活用方法には世代間で明らかな違いがみられた。人の消費行動は幼少期から青年期までに受けた社会的影響によって決まると言われており、10代からフリマアプリを使いこなしている人も多いZ世代は、まさに最新の消費トレンドを映す鏡と言えるだろう。


春奈 はるな 和歌山出身、上智大学外国語学部英語学科卒。信念は「人生は自分でつくれる」。2度の会社員経験を経て、現在はフリーランスのライター・広報として活動中。旅行やECをはじめとした幅広いジャンルの記事を執筆している。旅をこよなく愛し、アジア・ヨーロッパを中心に渡航歴は約60ヵ国。特に「旧市街」や「歴史地区」とよばれる古い街並みに目がない。ブログ「トラベルホリック~旅と仕事と人生と~(https://harubobo.com/)」も運営中。 この著者の記事一覧はこちら