○■ミツカンと共同開発に至った背景
「私自身、生まれてからこれまでペットと共に生活しており、現在も犬を2匹飼っています。私たちの会社は日本だけじゃなくシンガポールとタイにもあるのですが、それらの地域には信頼されているペットフードのブランドがありません。そこで、親交のあったMizkanの代表取締役社長兼CEOの吉永智征さんと、ペットフードを一緒にやりませんか? という話になったことが始まりです」
そう話すのは、ソプラ銀座の代表取締役 CEOの須田哲崇さん。ソニーで約20年に渡り海外市場で日本の高品質な製品やサービスを提供してきた経験から、ペット業界でも「Made in Japan」を広めることを考えついたそうです。
“世界に向けて発信できるブランドを日本のもので”。そんな思いから誕生したペットフード「わん納豆」は、畑のお肉と言われる大豆を活かした、納豆をふんだんに取り入れたものだそうです。
「実際に吉永社長も犬と暮らしていて、普段から納豆をあげていたそうです。おいしく食べる一方で、やっぱり納豆を食べたあとに自分の顔を舐められるのはつらいものがあると(笑)。そのことから納豆でも、粘らず、匂いもなく、私たち人間も一緒に食べられる商品を作るのはどうだろうか? という話で意気投合。約3カ月で商品化まで進めました」
ミツカンによる独自の納豆菌と発酵方法により実現した「わん納豆」は、タレがなくても食べやすく甘い匂いがする商品であることが特徴のひとつ。
「ミツカンさんが大事にしてきたのは“家族の団らん”。手巻き寿司や、家族で鍋をかこむなど、温かいコミュニケーションを生む商品を多く提供している企業です。
○■フードロス削減に貢献も
須田社長は普段から日本全国を飛び回り、フードロス問題にも取り組んでいます。
「欧米ではアップサイクルという廃棄物や不要品に新しい価値を与える考え方が一般的になっていますが、昨今フードロス問題は深刻化しています。通常であれば廃棄してしまうような野菜や魚を、ペットフードに使えないかと思っています」
形が悪い、色が悪いといった理由で収穫できない野菜を多く抱える鎌倉の農家へ実際に足を運び、すでに契約を交わしたそう。『WITHMEAL』ブランドの野菜プレート7種のうち、3種が鎌倉野菜を使っている。
「日本のスーパーに置くことのできる野菜の基準はものすごく厳しいんです。
三陸の漁師さんが抱えている問題は、水揚げできない昆布やワカメが大量にあること。これもまた、色が悪いことや少し穴が空いているという理由だけで、売り物にすることができないのだとか。
「もったいないですよね。そんな昆布やワカメを出汁として使い、水分補給用のスープを作れるんじゃないかと思っています。海藻以外にも、未利用魚といってサイズが小さかったり骨がやたらたくさんある魚が廃棄されてしまう問題もあり、同じくスープの出汁にするなどして活用することを考えています。これらは、フードロスを減らすだけでなく、生産者の人にも貢献したいという思いから。大量生産や値段に固執する他国と比べて、このような考え方は日本人的な発想なんじゃないかなと思いますね」
○■ペットと共に食事、そしてどこにでも一緒にいける世の中を実現を目指して
そんな日本ならではのノウハウや考え方は、輸出できるのではないかと話す須田社長。
「先日はアメリカ政府に招待いただき、西海岸のペット業界の方々と意見交換をしてきました」
日本のみならず海外のペット事情も取り入れ、つねに社会貢献を念頭に置いた活動を展開する姿はとても頼もしいです。
「海外と比べると、日本でのペットの家族化はまだまだです。外で飼う番犬から、やっと家の中に入ったくらいのレベルではないでしょうか。昔こそペットに残飯をあげることは一般的でしたし、ドッグフードに移行した昨今でも同じテーブルで食事することはほとんどないと思いますが、今回共同開発したペットフードは、人間と同じものを食べながらあげられる。ペットと共に食事することができる、“令和の家族団らん”スタイルを確立したいと思っています」
一緒に同じものを食べられるというコンセプトを持った新ペットフードは、今後は野菜シリーズなども開発準備をされているとのこと。無添加の国産品を中心に使用し、健康でおいしいものを意識した栄養たっぷりのペットフードが、令和の家族団らんを彩る日は遠くなさそう。
「ペットフードのほか、現在は『パピトレ』というペットのトレーニングアプリも手がけています。
高橋もも子 たかはしももこ 雑誌編集部、WEB編集部勤務を経てフリーランスのライターに。エンタメ系のインタビューを中心に、生活に関する時事ネタや単発企画など多ジャンルで執筆中。芸能人の顔と名前を覚えるのが得意です。 Twitter:@m152cm_ この著者の記事一覧はこちら