世界中の海を移動する船は、古くから貿易などに使われ、現代でも人々の移動に用いられ、各国の物流を担う重要な輸送手段です。そんな船は、用途や仕組みなどによってさまざまな種類があります。


この記事では、船の種類と、それぞれの用途や特徴をわかりやすく解説していきます。
船の種類【用途別】

古くから世界中で活発に行われている水上交通の発展により、さまざまな船が誕生しています。一般的な船は用途によって、漁船・商船・作業船・艦船の4種類に大別できます。競艇で使用されるモーターボートなど、これらの分類に当てはまらない特殊な船もあります。
ここからは、主な船の種類とその特徴について紹介していきます。
漁船

漁船は、漁師が魚や貝などの水産物を捕獲するために設計されている船です。


漁は大きく以下の3種類に分けられます。

沿岸漁業:陸の近くで漁を行う

沖合漁業:港から数日かかる沖合で漁を行う

遠洋漁業:大西洋をはじめとする世界の海で漁を行う

漁船には、それぞれに適した設備が備えられています。

また、漁船には決まった航路がなく、魚などを追って縦横無尽に航行したり、魚を引き揚げる作業などによってバランスを崩しやすかったりします。そのため、複雑な動きに対応できる設計や、船が大きく揺れても転覆しにくい構造になっているものが多いです。
商船

商船は、商業的な目的のために運航される船です。世界の船舶の大半が商船であるといわれており、主に観光客など人を乗せる旅客船と、貨物を運ぶ貨物船に分けられます。
効率よくたくさんの人や物を運ぶために、運ぶ物ごとに設備や積載能力が最適化された専用船が多く活躍しています。

世界中の海を航行するため、強風や高波に晒されたり、嵐の中を進んだりすることもあり、さまざまな気象条件でも安定して航行できるように設計されているのが特徴です。
作業船

作業船は、主に海や海岸などの土木工事に利用される船です。作業船の中には、海の底に溜まっている土砂を取り除き、水深を深くするための浚渫船や、埋め立て地に土砂を排出するリクレーマー船などの浚渫埋立作業船、地盤改良をおこなう地盤改良船やクレーンで物資や建築物を吊り上げるクレーン付台船などの構造物築造船、作業で使用する物資や作業員を工事現場まで運搬するなど、補助的な役割を担う作業補助船といった種類があります。
艦船

艦船とは、海上自衛隊や海上保安庁、海軍が所有している船舶のことです。有事の際に備えた海上の警備・警戒や水難事故の救助などを想定して設計されています。
自国の防衛力の要となるため、その設計や修理などは国内で行われることも多いです。

海上自衛隊が所有している艦船には、護衛艦や掃海艇、ミサイル艇などがあります。自国の領域や周辺海域を守るために、ミサイルやヘリコプターが搭載されている船も活躍しています。また、国内外で災害が発生した場合に備え、人を助けるための救難艇も配備されています。
さまざまな専用船【貨物船】

4種類の船の中でも特に割合の多い船が商船です。商船は貨物船と旅客船に大きく分けられます。
貨物船は、主に製品や物資、貨物を輸送するために設計された船です。一方、旅客船は人を乗せて運ぶために設計されています。ここでは、貨物船の主な種類やその特徴について解説します。
コンテナ船

コンテナ船は貨物船の中でもポピュラーなタイプです。コンテナのサイズはISOの統一規格によっていくつかのサイズに定められ、効率よく大量の荷物を運べます。コンテナは、一般的なドライコンテナや、冷蔵・冷凍が可能なリーファーコンテナ、液体やガスなどを運べるタンクコンテナなどさまざまな種類があり、中に入れる荷物によって最適な運搬方法を選択可能です。


コンテナ船には、全ての貨物がコンテナのフルコンテナ船と、コンテナ以外の貨物も一緒に積載するセミコンテナ船があります。できるだけ多くのコンテナを積み込み、船が揺れても荷崩れしにくいよう、レールを使ってセルを作り、コンテナを収納する構造になっています。
タンカー

タンカーは、石油や液化天然ガスなど、液体の貨物を輸送するために設計された船です。載貨重量トン数が数万トン~数十万トンという非常に大型の船です。岸壁や陸近くの浅瀬に近づけないため、港の沖合にタンカーを係留するためのシーバースという設備を使って積み下ろしを行います。

原油などは可燃性が高く、万が一引火したり座礁などによって海に流れ出てしまったりした場合の危険性や環境汚染度も深刻であるため、船の安全性や頑丈さについて配慮されています。

ばら積み船

ばら積み船とは、バルクキャリアやバルカーとも呼ばれ、梱包されていない状態のばら積み貨物を運ぶための船です。石炭や鉄鉱石、小麦やトウモロコシなど、さまざまな貨物に使われます。

積み荷は港のクレーンやベルトコンベアなどを使って積み下ろしされますが、ハンディサイズやハンディマックスと呼ばれる大きさの船はクレーンなどの設備が船に備わっているため、荷役設備が無い港でも積み下ろしが可能です。
自動車専用船

自動車専用船とは、その名の通り自動車を輸送するための船です。一度に大量の自動車を運ぶため、船倉の内部は立体駐車場のようにいくつもの階層に分かれています。デッキの高さを調整して、バスやトラックなど車高の高い自動車を効率よく積み込める船もあります。

ランプウェイと呼ばれるスロープが装備されており、積み荷の自動車はそのスロープを通って船を乗り降りするのが特徴です。積み下ろしのために港と船の間を運転する専任のドライバーもいます。
さまざまな専用船【旅客船】

旅客船は旅行をしたり離島へ移動したりする際に使われる船であり、多くの人にとって最も身近な船の一つであるといえるでしょう。人を乗せて運ぶことに特化して設計されています。ここでは、旅客船の種類に着目して、それぞれの船について詳しく解説します。
外航クルーズ船

外航クルーズ船は、外洋を航海して世界各地の港へ寄港する旅客船です。輸送効率などを考慮して、数千人から数万人の乗客を収容できる大型の船である場合が多いです。

クルーズ(船旅)を目的とした船なので、船内は乗客が快適に過ごせるようさまざまな設備が用意されています。出港から次の目的地へ到着するまでに複数日かかることもあり、プールやショッピングエリア、ジムや映画館などのアクティビティがあったりショーなどのイベントが開催されたりすることも多いです。
フェリー

フェリーは人と荷物を同時に運ぶことのできる大型の船です。毎日決まった時間に運航しており、公共交通機関としての役割を果たしています。

元々は離島に人や物資を運ぶための輸送船でしたが、近年は観光に特化したフェリーも増加傾向です。基本的には国内の港を結ぶ中・長距離フェリーがほとんどですが、韓国や中国など、近隣の国と行き来できる国際フェリーも就航しています。クルーズ船に比べて船室や設備、サービスなどの豪華さはありませんが、その分リーズナブルに船旅を楽しめるのが魅力です。
ジェットフォイル

ジェットフォイルは、ウォータージェット推進機と水中翼によって航走する超高速旅客船です。一般的な船と同じ方式での艇走と、ジェット水流の力で海面の上に船を浮き上がらせて走る翼走を組み合わせて、時速80km程度で走ります。他の船に比べて航行速度が非常に速いため、航行中はシートベルトを着用し、着席している必要があります。

水の上を浮きながら走るので、波の影響を受けにくく、船の揺れを感じにくいのが特徴です。
遊覧船

遊覧船は海や湖などを周遊し、観光客に観光名所や美しい景色を楽しんでもらうための船です。30分から1時間程度の所要時間で、デッキから港や湾の景色を見たり、イルカなどの生き物を観察したりできます。カモメへの餌やりができる遊覧船もあり、旅の思い出になるような体験が可能です。

定員が10人程度の小型船から数百人程度の大型船まで、場所によってさまざまな遊覧船が運航されています。遊覧船のプランによっては、食事やパーティーを楽しめるものもあります。

移動よりも観光がメインの船であるため、他の旅客船とは違い、出発地と到着地が同じ場所である場合がほとんどです。
船にはたくさんの種類がある

船はその用途や目的によってたくさんの種類があります。分類も細分化されており、紹介した分類とは違う分類方法や区分が設けられているものもあります。これらの船が毎日世界中で活躍し、たくさんの人や物を運んで世界の物流を支えているのです。

海に囲まれた島国である日本は、特に水上輸送が占める割合が多く、船は私たちに必要不可欠なものであるといえるでしょう。