昔話「桃太郎」を題材に、鬼の血を引く者たちと桃太郎の血を引く者たちの争いを描く“新世代ダークヒーロー鬼譚”として人気上昇中の漫画『桃源暗鬼』(秋田書店『週刊少年チャンピオン』連載)が、舞台『桃源暗鬼』として2024年2月に上演される。(東京公演:天王洲 銀河劇場 2024年2月17日~2月25日、大阪公演:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ 大阪公演 2024年2月29日~3月3日)

6月に始動した「『桃源暗鬼』プロジェクト」の第1弾であり、主人公の一ノ瀬四季を阿部顕嵐が務めるほか、立花裕大、高橋怜也、草地稜之、廣野凌大、綿谷優奈、灰塚宗史、山崎紫生、田口 涼、竹村晋太朗、岡田六花・岩本佳子(Wキャスト)、北村 諒、石川萌香、船木政秀、松田賢二らが出演。
自分が鬼の子孫であることを知った一ノ瀬四季が、現代にまで続く鬼と桃太郎の子孫同士の戦いに身を投じていくことになる。

今回は主演を務める阿部顕嵐にインタビュー。ダークヒーローが好きだという阿部は「ただ観て終わりの作品」にしたくないという思いを明かす。また、2.5次元舞台に出演する際に考えていることについても話を聞いた。

○■阿部顕嵐が感じた『桃源暗鬼』の面白さとは

――かなり熱い少年漫画の舞台化になるんじゃないかと思ったんですが、現在の印象としてはいかがですか?

まず、「桃太郎と鬼」という日本の古典物語がテーマになっているところに、面白さを感じました。大学の講義で、芥川龍之介が「桃太郎と鬼はどちらが正義なのか」と書いていたこと(短編『桃太郎』)を習って、頭に残っていたんです。
正義というものは時代によって違うだろうし、今回の『桃源暗鬼』は主人公がダークヒーローで。気になっていた、自分が好きなテーマの作品をやらせてもらえることがうれしかったし、面白みを感じました。

――今回キャストの方は、今まで共演してこなかった方も多いのかなと思います。

僕としては、(廣野)凌大がいたら、安心かな(笑)。凌大の眼鏡キャラ、絶対いいですよね。凌大には全信頼を置いているから、もうなんの心配もないです。
立花(裕大)くんは相棒みたいな形になるので楽しみですし、北村諒くんは『ACTORS☆LEAGUE in Games 2023』の時にご挨拶して、少し面識があるからこそ、気になる存在です。

――北村さんは、7ORDERのメンバーの安井謙太郎さんと共演もされてましたよね。

なら大丈夫です! (高橋)怜也くんは1回ドラマ(『さよなら、ハイスクール』)で共演したんですけど、それっきり全然会ってなかったので、またこうやってご一緒できるのはうれしいです。歌が上手なんですよね。

――そんな中で、阿部さんが座長として皆さんを引っ張っていくことになるのかなと思います。

北村くんと怜也くんと凌大以外は初めての方ばかりだけど、楽しくやっていきたいです。
稽古は、桃太郎側と鬼側の境目がないくらい、楽しくやりたい(笑)。わちゃわちゃで仲良く、みんなでいいものを作りたいなという思いしかないです。

○■2.5次元舞台は「原作へのリスペクトが1番」

――阿部さんは出演される作品の振り幅も大きいと思いますが、改めて2.5次元舞台に出られる時の極意みたいなものはありますか?

ずっと携わらせていただいたのは『ヒプステ』(『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage)で、あとはコロナ禍で1公演だけ配信できた「FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS」THE MUSICALくらいなので、そんなに大きなことは言えないですけど、演じてみて思ったのは、やっぱり原作へのリスペクトが1番だというところです。とにかく、原作ファースト。自分が1番の原作ファンにならないと、原作が好きな方に受け入れていただけないと思っているし、自分のエゴをいかに消すかを心がけています。ただ、僕はどんな作品も基本的にそのスタンスではあって、“自分”ではなく、いかに作品を愛してもらえるか、常に考えています。


だからこそ、今回の稽古中は『桃源暗鬼』しか読みたくないです。漫画好きとしては、いろいろな作品を読みたい気持ちもありますけど、稽古中と公演中は『桃源暗鬼』しか読まずに行きます!

――たしかに、「迷った時は原作に立ち返る」という話も聞いたりします。

やっぱり困ったときは、原作に戻るのがすごく大事だなと思います。『桃源暗鬼』はアニメ化もしていなくて、舞台で初めて動きのある表現が出てくるわけだから、ありがたいですが、自分で動きを作っていかないといけない。逆に、もしこの先、他のメディアミックスがあるなら、影響を与えられるくらいの動きをしたいなと思います。例えば、声優さんに真似していただいたり、「舞台であんな動きをしていたから、漫画やアニメにも取り入れたい」という話が出たりしたらうれしいです。


――原作者の漆原侑来さんも、X(旧Twitter)で阿部さんが四季を演じられることをとても喜んでました。

僕のことをもともと知ってくださっていたそうで、うれしいです。僕、漫画を描ける方のこと、すごく尊敬しているんです。その方の生み出す漫画で、どれだけの人の英気を養ってるのかと。まだお会いできてはいないんですけど、もしお会いできたら、「面白い漫画をありがとうございます」と感謝を伝えたいです。

――感謝を伝えられる機会はありそうですか?

もしかしたら稽古場に来ていただけるかもしれないし、お忙しかったら、本番を観に来ていただけるだけでもうれしいです。
舞台化を喜んでくれているからこそ、期待を裏切ることだけはしたくないというプレッシャーもあります。やっぱり、原作者の方に認められるものを作らないと、と思いながら臨んでいます。

――改めて、こんな作品にしたいという思いはありますか?

バトルや殺陣が多くなりそうと聞いています。ダークヒーローというだけあって、観終わった方が帰る頃には「悪役もいいな」と思ってもらえるような作品にしたいです。考えさせられさせるというか、「世の中の悪役って本当に悪役なのか」と考えてもらえるような作品にしたい。どの作品でも思っているんですけど、ただ観て終わりの作品だとあんまり意味がないというか、それは娯楽にすらなっていないんじゃないかな、と。何か一つ持ち帰っていただけるような作品にしたいですし、「鬼、かっこいいな」と思ってもらえたらうれしいです。

■阿部顕嵐
1997年8月30日生まれ、東京都出身。俳優、7ORDERのボーカルとしても活躍する。主な出演作に『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stageシリーズ(19年~)、「FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS」THE MUSICAL(20年)、ミュージカル『October Sky-遠い空の向こうに-』(21年)、PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『ラビットホール』、『BREAK FREE STARS』(23年)、ドラマ『さよなら、ハイスクール』(22年)、映画『ツーアウトフルベース』(22年)など。12月16日~17日に阿部顕嵐 独演会『風姿花伝』第二期上演を控える。