映画『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』が公開され、4日間で観客動員44万人、興行収入約6億円と大ヒットスタートを切った。原作は『パタリロ!』などで知られる魔夜峰央氏による漫画で、2019年に映画化されると、まさかの大ヒット。
埼玉県民が東京都民からひどい迫害を受けている世界で、東京都知事の息子・壇ノ浦百美(二階堂ふみ)と、アメリカ帰りの謎の転校生・麻実麗(GACKT)の活躍を描き、続編となる今作では、埼玉解放戦線のメンバーが関西へ進出する。

今回は、“滋賀のオスカル”と称される桔梗魁(杏)を演じることになった杏にインタビュー。作中では滋賀解放戦線を率いて、関西一帯を牛耳り日本全土を大阪化しようと企む大阪府知事・嘉祥寺晃(片岡愛之助)や、神戸市長(藤原紀香)、京都市長(川崎麻世 ※崎はたつさき)へ立ち向かっていく。まさかの『翔んで埼玉』参加、しかも男性役、さらにBL作品という点や、作品に対し心配しているところなど、話を聞いた。
○■映画『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』に、杏「大丈夫かな」

――まさか『翔んで埼玉』に杏さんが出られるとは思わず、驚きました。一方で杏さんはオファーに感動したということで、どのような気持ちで臨まれたんですか?

元々、武内(英樹)監督とは月9(『デート~恋とはどんなものかしら~』)でご一緒していて、また別の作品でご一緒できればと思ってはいたんですけど、まさか『翔んで埼玉』で、しかも滋賀担当というのは予想していなかったところで。私は滋賀出身ではないので、大丈夫かなと心配でしたし、公開されるまでドキドキしています。

――実際に参加されて、作品の感想についてはいかがでしたか?

「よくここまで描いた」と思いましたし、ギリギリを攻めているので「大丈夫かな」とは思いました。本当に「みなさん早めに観てください」と。何があるのかわからない、ということはすごく感じています(笑)

――どのシーンが一番心配でしょうか?

あの……工場の場面です(笑)。ハラハラしながら、でもあそこまでやりきるから面白いという部分があるでしょうし、この作品が末永く観られるといいなと思っています。

――あの工場は、舞台に映画にとちょうど盛り上がっていますし。


すごいタイミングですよね……。

――今回初の男性役とのことで、何か気をつけられたことはあったのでしょうか?

男性役ということで、少し立ち居振る舞いや姿勢、声も低くするように心掛けていました。だから桔梗魁を演じた後、本当に数カ月ぐらい声の低さが治らなくて。後遺症に悩まされました(笑)。キャラクターとしても、哀愁があるというか、悲しき運命を背負うところがありますし、コメディですけど、真剣に重く演じたいと思っていました。最後の方のシーンもみんな泣きながら演じていて、集団催眠のような効果があったのではないかというくらい、演技としても盛り上がりました。

――桔梗は「滋賀のオスカル」と言われていますが、杏さんは『ベルサイユのばら』もお好きだそうで、オスカルと言われるキャラクターを演じることについて思うところはありましたか?

男性役で「滋賀のオスカル」という表記に関しては、そもそも「オスカルは女性では?」と思いました(笑)。桔梗も自分で名乗っているし、色々ツッコミどころはなきにしもあらずで(笑)。「パリ帰り」という設定は、この作品の制作が1年延びた時に付け加えられたもので、もともとはなかったのですが、私がその間にパリに行ったことが反映されています。本人の要素が少しずつ入れ込まれていて、最たる2人は夫婦役を演じている(片岡)愛之助さんと(藤原)紀香さんかと思いますが、面白いところですよね。

――パリ要素でいうと、旗を振って革命に臨むなど『レ・ミゼラブル』要素もあるのか気になりました。

たしかにちょっと、アンジョルラスですね(笑)。
自分としてはそこまでの意識はなく、桔梗魁としての気持ちで演じていました。

――GACKTさんとは初共演とのことで、どのような印象でしたか?

現場では必ず最初と最後にみんなと握手をしてくださるんです。本当に人間離れしたような、美しい存在という印象だったんですけど、すごく熱い方だなと思っていました。でも一つ一つのシーンの分析は逆に冷静で、静と動のある方だなと感じました。

――GACKTさんは「前作の撮影の時に、ヒットするような手応えが全然なかった」と言っていたそうで。

私は1作目の成功を経てパート2に出る側でしたし、武内監督の世界に行けば間違いないという信頼があったので、大船に乗った気持ちでした。むしろ不安になったのは出来上がった後で、「ここまでやっていいのかな?」と思いました(笑)

武内監督とも「笑わせようというのではなく、真剣にやっていれば作品の彩になっていく」と話していて、たまに調子に乗ってやりすぎちゃう時は「もうちょっと抑えて」と言われたり、逆に「もっとやってくれちゃっていい」と言われたり、いろんなバランスを見ながら、監督に指揮をしていただき、桔梗を演じていた感覚があります。最後の方は、エキストラの方たちもみんな本当に泣いていて……。集団催眠みたいな感じだったのかな? というくらい盛り上がりましたね。

――ちなみに今回、BLに挑むということになったと思いますが、その点についてはいかがでしたか?

お芝居をする中での面白さって、自分とはかけ離れたものになれる楽しさだと思うんです。今回はすごく自分から離れた存在になれて、楽しかったです。だから、もし次があるとしたら、ぜひ百美ちゃんと、側から見たら男同士なのか女同士なのかわからない絡みをしたいなあと思いました(笑)

■杏
1986年4月14日生まれ、東京都出身。
2001年にモデルとしてデビューし、05年からはニューヨークやパリ、東京などの主要ファッション・コレクションを中心に活躍。07年に女優デビューし、近年では劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』『キングダム 運命の炎』『私たちの声』(23年)などの映画作品や『日本沈没-希望のひと-』(21年)、『競争の番人』(22年)などのテレビドラマ作品に多数出演。他にもドキュメンタリー番組『世界遺産』でナレーターを務め、2022年には国連WFP親善大使に就任するなど、多彩に活躍。
ヘアメイク:笹本恭平(ilumini)、スタイリスト:中井綾子(crepe)
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