●『沈黙の艦隊』は「すごくありがたい産後の第一歩に」
昨年第3子を出産し、子育てに奮闘しながら仕事も両立させている上戸彩。2月9日には報道ニュースキャスターを演じたAmazon Originalドラマ『沈黙の艦隊 シーズン1~東京湾大海戦~』が配信される。
上戸にインタビューし、「すごくありがたい産後の第一歩になった」という本作への思い、3児の母となった今の仕事への思いなど話を聞いた。

1988~96年に『モーニング』(講談社)で連載された大ヒットコミック『沈黙の艦隊』(作・かわぐちかいじ)を原作とし、大沢たかお主演で実写化され昨年9月に公開された映画『沈黙の艦隊』。Amazon Originalドラマでは、海江田四郎(大沢たかお)率いる独立戦闘国家「やまと」が独立を宣言する劇場版の物語に加え、東京湾で勃発する大海戦というクライマックスまでを描く。

上戸は、「作品自体は30年前のものですが、今の時代に問いただされているかのような内容で、すごく大事なものを伝えてくれている気がします」と本作の魅力を述べ、「世界の平和」について考えるきっかけになればと期待する。

「平和の形は人それぞれだと思いますが、この作品を見て、そういうニュースに耳を傾けたり、他人事とせず身近なものに感じたり、そういうきっかけになったらいいなと。立ち向かうということが皆さんにとってどういう選択になるかはわかりませんが、何か行動に移すことが広がっていったらいいなと思います」

○人に喜んでもらいたいという思いが原動力に

上戸が演じたのは、大沢演じる海江田を追う報道ニュースキャスター・市谷裕美という、映画・ドラマオリジナルのキャラクターで、この役にとてもやりがいを感じたという。


「市谷は視聴者の気持ちを代弁しているかのような、30年という時差を感じさせない重要な役だと思うので、そういう役を演じさせていただいてありがたいなと思います」

市谷を演じる際には、「訴えかける心の強さ」を意識したそうで、「市谷が原稿を無視して自分の考えを訴えるところは私もすごく好きですが、報道キャスターはああであってほしいなと思います」と語る。

上戸自身は、自分の意見をしっかりと主張する市谷とはタイプが違うようで、「私は自分がこうしたい、これを訴えたいというのはあまりないんです」と明かす。

「私は1人でも多く笑顔になって平和になるにはどう動いたらいいんだろうと考え、みんなが求めているものを察知しようとするタイプ。媚を売っているわけではなく、そこに自分の意思が全くないわけでもないですが、何が一番みんなが喜んでくれるかなというのを軸に仕事をしているので」

昔から、人に喜んでもらいたいという思いが原動力になっているそうで、「この仕事に就くことが夢ではなかったので、事務所の社長が喜んでくれることが目標でしたし、母親に家を買いたいという夢だけでやっていて、それは叶いました」とにっこり。

○育児中心の生活で「保守的になって等身大の役を選びがちだった」

女優業も、演じてほしいと思ってもらった役を演じたいという思いだが、『沈黙の艦隊』の市谷役は自身にとって挑戦的な役になったという。

「最近は育児が中心で、そんな中でもできるお仕事となると、どうしても保守的になって等身大の役を選びがちでしたが、市谷は久々に社会派な作品で真面目な役で、私にとってはすごくありがたい産後の第一歩になったなと思っています」

映画が公開された後に、完全版の連続ドラマを配信するという新しい試みについてはとても驚いたという。


「ドラマの撮影中に映画化が決まったので、『えー!?』ってびっくりしました。そんなビッグプロジェクトに参加させてもらい、ありがとうございますという感じでした」

「3人目にして育児にやっと慣れてきた」 心境の変化も

上戸は、1997年に母親が応募した「全日本国民的美少女コンテスト」で審査員特別賞を受賞したことをきっかけに芸能界に入り、2000年にドラマ『涙をふいて』で女優デビュー。その後、数々の作品に出演し、結婚・出産後も仕事と家庭を両立させ活躍しているが、今の仕事に対する思いを尋ねると「感謝でしかないです」と答える。

「若い時は、結婚して子供を産んだら仕事を辞めてお母さんになるんだと思っていましたが、今はお仕事がないと育児もこんなに楽しめてないだろうなと。仕事があるから育児も貴重なものであり、大切な時間に感じるし、育児でいっぱいいっぱいだから、あんなに家を出る時に自分ってうれしいんだなって思います(笑)」

昨年第3子を出産してから、父親、さらに兄の妻にも協力してもらいながら子育てしているそうで、「両立というか、手を借りないと無理です」と助っ人たちに感謝する。

「手が足りなくなって、3人目にして私の父親・じいじと一番上のお兄ちゃんのお嫁さんにも手伝ってもらっているんですけど、3人目が生まれなかったらこんなにみんなが集まることもなかっただろうなと。家族が集まる時間が増えたので家が賑やかです。
みんな明るく助けてくれて、私も家族に会えてうれしいです」
○忙しい10代、20代があったからこそ「母親業が一番と言い切れる」

年齢を重ねてきて仕事への思いなど変わってきたことはあるか尋ねると、『沈黙の艦隊』のように等身大ではない役を演じてみたいという思いが芽生えてきたと明かした。

「スムーズにできるお仕事を選んできましたが、重い作品や、自分に課題を与えられるような難しいものにそろそろ挑戦していきたいなと。家庭と仕事のメリハリをつけたくなってきたかもしれません」

そう思うようになったのは第3子が誕生してからだという。

「3人目にして育児にやっと慣れてきたのかなと。いっぱいいっぱいですけど、人に甘えて任せられるところは任せられるようになって、切り替えができるようになった気がします」

信念を持って行動する市谷のようにブレずに貫いているものを尋ねると、「育児が一番と言い切れるところ」ときっぱり。

「1人目の時からずっと同じ思いです。
忙しい10代、20代があったからこそ、家族が一番、母親業が一番と言い切れますし、育児に集中させてもらえていると思います」

そして、育児を第一にしながらも仕事が続けられている状況に改めて感謝。「仕事を与えてくださる環境があったり、自分の居場所を与えてくださるスタッフの方がいると、『ありがとうございます!』と思いますし、幸せだなと感謝しています」と述べ、「仕事をしている時は仕事に集中し仕事が一番ですが、スケジュールの中での優先順位は今は母業が一番。仕事が一番になるのはまだまだ先ですね。子供たちがみんな小学校に上がったぐらいでやっと少し変わっていくのかなと思います」と語った。

「まずはかっこつけないこと」 人に頼る大切さ語る

今後の活動をどのように思い描いているのか尋ねると、「いい監督さんや、お仕事してみたいと思うスタッフさんに囲まれて、いい刺激を与えてくださる役者さんと共演させてもらって、という夢のような時間があったらいいなと思っています」と回答。

M-1グランプリ』で今田耕司とタッグを組みMCを務めている印象も強いが、「MCは『M-1』オンリーです。
今田さんは13歳の時からお仕事させてもらっていて、今田さんがうまく導いてくださるから成立しているんです」と謙虚に話し、これからも女優として活躍していきたいと考えている。

上戸のように子育てや仕事などに一生懸命頑張っている人たちへの応援メッセージをお願いすると、「私もキャパオーバーの中、必死に頑張っているので、『人はいっぱいいっぱいでも頑張れるぞ! 私いっぱいいっぱいでも頑張っています』という感じです」とほほ笑み、「かっこつけずに頼ることも大事」だとアドバイスを送る。

「1人だとアップアップになって倒れてしまうと思いますが、自分の環境を丸ごと知ってくれている人たちにそばにいてもらって、家では仕事を把握した家族に支えてもらい、仕事場では家族を知っている人にサポートしてもらっているから、無理せず過ごせています。まずはかっこつけないことですね」

最後にファンに向けて「映画館で見るぐらいのクオリティのものを、好きな時に家で楽しむことができるという貴重さと贅沢さを楽しんでほしいですし、何も考えないで見ても何かしら余韻が残る作品だと思うので、見終わった後に皆さんがどう感じたのか、私にお便りください!」とメッセージを送った。

■上戸彩
1985年9月14日生まれ、東京都出身。1997年に「第7回全日本国民的美少女コンテスト」で審査員特別賞を受賞し芸能活動を始め、2000年にテレビドラマ『涙をふいて』で女優デビュー。
2003年には主演映画『あずみ』で第13回日本映画批評家大賞 新人賞、第27回日本アカデミー賞 優秀主演女優賞を受賞。以来さまざまな作品に出演し、近年の主な出演作にドラマ『半沢直樹』シリーズ(13、20)、ドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(14)、『アイムホーム』(15)、『となりのチカラ』(22)、映画『昼顔』(17)、『シャイロックの子供たち』(23)、『沈黙の艦隊』(23)などがある。

スタイリスト:宮澤敬子(WHITNEY) ヘアメイク:猪股真衣子(TRON) 衣装:ジャケット(SUGARHILL/林デザイン事務所) ワンピース (テラ/ティースクエア プレスルーム) ピアス 、ブレスレット 、リング 、ネックレス (4点、ソワリー)