Winキーは単独で押すとスタートメニューを表示するが、CtrlやAlt、Shiftキーと同じく「修飾キー」(Modifier Key)であり、非修飾キー(ファイナルキーと呼ばれる)と組み合わせることでさまざまな機能を実現できる。30年前にWinキーが導入されたことで、標準的なWindowsマシン用のキーボードは、多数のキー組み合わせを持てるようになり、多くの機能をキーボードから実行できるようになった。Windowsの多くのキーボードショートカットがWinキーに割り当てられ、ユーザーやアプリが使うCtrl、Altキーを使うキーボードショートカットをWindowsが使ってしまこともなくなった。30年前のWinキーの追加には大きな意味があったわけだ。
修飾キーは最低でもファイナルキーとの同時押しがあり、さらに修飾キーを同時に使うこともできる。
日本語対応のキーボードでは、スペースキーの回りは混み合っている。スペースキーの右側には「変換」、「カタカナ/ひらがな」キーが置かれる。
Winキーを修飾キーとするWindowsのキーボードショートカットは、Windows 8で多数定義されたが、Windows 10、Windows 11で割り当て直しが行われた。Windows 8.xから10はデスクトップ環境が大きく代わったために仕方がない部分があるが、Windows 10とWindows 11では、大半は同じものの、Win+Cのように「コルタナ音声入力」(Windows 10)、「Teamsチャット」(Windows 11 Ver.21H2)、「Copilot起動」(Windows 11 Ver.23H2)と割り当てが迷走するものもある。Win+CをCopilot起動に割り当てた上、さらにCopilot起動専用のキーが作られた。
そのCopilotキーだが、写真などを見るとキーボードの最下段右側に配置されている。どこに置かれるのかはメーカー次第だというが前述のように日本語キーボードでは最下段はすし詰め状態である。
スキャンコードなどの詳細は発表されていないが、少なくとも2024年1月に発行されたUSB-IF(USB Implementers Forum)の「HID Usage Table for Universal Serial Bus Ver.1.5」には、キー(Keyboard/Keypad PageのUsage ID)の追加はない。今後、追加される可能性もあるが、これから標準化では遅すぎるような気もする。
USBキーボードは、HIDのKeyboard Deviceだけでなく、Consumer Deviceとしても動作するものが多い。キーボードのメディア再生機能などは、論理的にはキーではなくConsumer Deviceのボタンである。
Consumer Deviceには「AC Search」というUsage IDを持つボタンがあり、キーボードから送出するとタスクバーの検索アイコンが開く。Copilotボタンの発表Blog記事には、「(Copilotが)有効になっていない場合に、Copilotキーを押すとWindows Searchが起動されます」とあり、もしかしたら、AC Searchボタンを使い、USB仕様の変更を行わずにWindows側だけで実装しているのかもしれない。
「キーボードにおよそ30年ぶりに大きな変更が加えられた」というのであれば、Winキーと同じくUSBの新しいキー(Usage ID)として定義してほしかったところ。もし、CopilotキーがAC Searchボタンなら、単にキートップのデザインを決めただけでしかない。
USBキーボードの修飾キーは仕様上、通常キーとは別扱いされていて、ユーザーレベルでの修飾キーの追加は困難である。CopilotキーをWinキーのように修飾キーとしても使える新規キーとして追加してくれたなら、衝突しがちなホットキーの割り当てがラクになり、Space Cadetキーボードに近づくこともできた。
今回のタイトルネタは、Space Cadetキーボードからロバート・A・ハイラインの「SPACE CADET」(邦題、栄光のスペースアカデミー。1987年)である。ちなみにSpace Cadetキーボードはこの小説とは直接の関係はない。タイトルが直訳でないのは、先に創元推理文庫で「宇宙士官候補生」(1984年。ゴードン・R・ディクスン。