ヤマハを代表するロードスポーツモデル「MT-09」が、発売から10周年となる2024年に大幅改良を実施する。「第51回 東京モーターサイクルショー」の会場には、ダークな雰囲気をまとった「The Dark Side Of Japan MT-09」が登場。
そのキャッチコピーと独特のボディカラーにはどんな意味が込められているのか、担当者に話を聞いた。

「MT-09」はどう変わる?

MT-09の初代モデルは2014年に登場。ヤマハの「ハイパーネイキッド」として人気を集め、その後は「MT-10」や「MT-07」などのモデルへと広がっていった。MT-09は、いわばMTファミリーの元祖といえる存在だ。

MT-09の改良モデルはエンジンと車体フレームを従来モデルから継承しているため、フルモデルチェンジではなく、ビッグマイナーチェンジという扱いだそう。しかし、細部をよく見る、変わっているところやブラッシュアップされている部分が多い。


新型MT-09はボディの各パーツがより鋭い造形に変化している。走行中に前からの風を取り入れて、効率よく空気を流せるように工夫したという燃料タンクは、特に鋭くなった印象だ。

燃料タンクはバイクの中で最も大きなパーツであり、目立つ部分でもある。ここの印象が変わると、バイク全体の印象も大きく変わる。バイク全体が角張っていても燃料タンクだけが真ん丸でアンバランスなバイクは多いが、新型MT-09はとてもバランスがとれている。

担当者が「鋭い目つき」と形容するヘッドライトは、その言葉通り、バイファンクショナルLEDとポジションライトの配置によりシャープで切れ長な印象に。
速さだけでなく、時代の先頭を行くかのような精悍さが伝わってくる。

カラーはネオン街を疾走するイメージ?

MT-09のボディカラーは「ミッドナイトシアン」「アイコンブルー」「テックブラック」の3色。展示車両のミッドナイトシアンは新型MT-09のメインカラーだ。

この色にはどんなメッセージを込めたのか。担当者の説明は次の通りだ。

「暗闇の中から走り出し、ネオン街を疾走する様をカラーとして落とし込みました。
特に、ブルーやパープルに近いネオン街の人工光が車体に反射したときの、グリーンともブルーともいえないシアンをボディカラーに取り入れています。真っ暗なトンネルの中で、ときおり対向車のヘッドライトに反射するときの青白い色味も参考にしています」

MT-09はホイールと燃料タンクの一部に前述のシアン、ボディ全体にダークグレーを使っている。そもそも、こうした色使いのバイク自体をあまり見かけないが、ネオン街などで人工光に照らされるとバイク全体が独特な輝きを放ち、周囲に溶け込みつつも強烈な存在感を放つそうだ。

先代モデルのMT-09(2021年モデル)でも似たようなカラーリングを採用していたが、それと比べても、よりシンプルかつ落ち着きのあるカラーに変わったように思える。この点について担当者は「日本の暗黒に感じられる面、いわゆるダークサイドをカラーリングで再現しています。以前のモデルで使用していたシアンよりも落ち着きのある印象になっていると思います」と話す。


新型MT-09のプロモーションも、深夜のネオン街や薄暗いトンネルの中をバイクで疾走するダークな雰囲気を表現している。これまでと違った角度でMT-09を見てもらい、先代モデルを知っている人にもMT-09の新たな魅力を再発見してほしいと考えているそうだ。そのことが「Dark Side Of Japan MT-09」というキャッチコピーにつながっていったという。

○「人機官能」を体現したモデル

ヤマハには「人」と「機械」を高い次元で一体化させる「人機官能」という開発思想がある。「Dark Side Of Japan MT-09」はエッジを際立たせた鋭いボディデザイン、独特かつ絶妙なカラーリング、ライダーがまたがったときの一体感などを含め、その思想を最も体現したモデルに仕上がっている。

なお、東京モーターサイクルショーの会場には、MTシリーズの発売10周年を記念した「MTシリーズ10周年記念BOX」も合わせて展示されていた。
専用の化粧箱にはTシャツ、キャップ、キーホルダーを封入。色はもちろんブラックシアンだ。「このBOXには、発売以来10年にわたってMTシリーズを愛用してくれているライダーに対する感謝の意味が込められています」(担当者)とのことだった。

新型MT-09は2024年4月17日、MTシリーズ10周年記念BOXは同4月下旬に発売の予定。

室井大和 むろいやまと 1982年栃木県生まれ。陸上自衛隊退官後に出版社の記者、編集者を務める。
クルマ好きが高じて指定自動車教習所指導員として約10年間、クルマとバイクの実技指導を経験。その後、ライターとして独立。自動車メーカーのテキスト監修、バイクメーカーのSNS運用などを手掛ける。 この著者の記事一覧はこちら