2024年は大河ドラマ『光る君へ』でも注目される平安時代だが、佐藤嗣麻子監督は「平安時代の建物はほぼ残っていないし、陰陽寮なんて誰も見たことないのに、一から作らなきゃいけない(笑)。『こういうイメージで』というアイディアをたくさん出さなければいけませんでした」と、その世界を表現する苦労を語る。
○『源氏物語絵巻』も「平安後期の姿を描いてしまったのではないか」
「平安中期についてはあまり絵が残ってなくて。平安後期の12世紀に描かれた『源氏物語絵巻』はあるんですが、実は『源氏物語』が書かれてから150年後に作られているんです。現代でも、例えば150年前の日本ってもう服装も全然違うじゃないですか。写真もない時代ですし、実際に『源氏物語』の時の姿ではなく、平安後期の姿を描いてしまったのではないかと思います」と分析し、とにかく資料がなかったという。
作中の美術は洋風にも見える雰囲気をまとっていたが「正倉院とかも、よく見ると意外と洋風なんですよ。いろいろ資料が残ってないので、どのくらい外国のものが入ってきてたのかもよくわからないですし、ラテン語の文書なども残っていたので、ペルシャとの交流などで外国のものも入っていたであろう、という世界観にしたんです」と説明した。
当時使われていた糸まで調べて反映したというが、そこまでした理由について「調べないと、資料がないということすらわからなかった」と苦笑する佐藤監督。「調べて資料があるならその通りにしようと思っていましたし、変更するならば自分なりに調べ尽くした上で『ここは映画として嘘をついてます』と明確にしておきたかった」と自分の中での線引きを求めていたそう。
「時代劇で見る衣装すら、近年のものだと思うんです。女性の着付け、いわゆる女性の“衣紋道”ができたのは明治時代くらいだそうで。
■佐藤嗣麻子監督
1964年生まれ。岩手県出身。ロンドン・インターナショナル・フィルム・スクールにて映画制作を学ぶ。
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