第37期竜王戦(主催:読売新聞社)はランキング戦が進行中。5月1日(水)には1・5組の計2局が行われました。
このうち関西将棋会館で行われた1組の久保利明九段―山崎隆之八段戦は155手で山崎八段が勝利。意欲的な対振り飛車作戦で決勝に進出、決勝トーナメント出場も確定させています。
○山崎流ゾーンディフェンス

準決勝に当たる本局は勝った方が本戦出場権を得る大一番。先手番を得た山崎八段は序盤から独特の力戦策を繰り出します。久保九段の後手番石田流(4→3戦法)に対し右金を自陣三段目に上がったのがその始まり。中央に据えた自陣角との協力で押さえ込みを図ります。


山崎八段の陣形は金銀4枚が絶妙な距離感を保ちながら自陣全体を守る、いわばゾーンディフェンス。空いた空間は先述の角がにらみを利かせ突破を許しません。頃合い良しと見た山崎八段は右辺の端攻めで戦闘開始。この角を飛車との交換に持ち込みペースをつかみました。

「結合囲い」でつかんだ勝利


戦いのなかでじっと金を寄って自陣のスキを消したのが山崎八段の充実を示す好手でした。先手陣はいつのまにか金銀4枚がガッチリ手をつなぐ「結合囲い」が完成。
手を渡された久保九段は局後「指しているうちに自信がなくなってきた」と振り返るよりありませんでした。

自陣の憂いをなくした山崎八段は満を持して敵陣攻略に乗り出します。左端に跳ね出した桂がクサビに残り、美濃崩しの青写真が見えてきました。続いて放った歩頭への角捨ても派手な決め手。金を質駒に入れられている後手はこの角を歩で取ることができません。

終局時刻は20時9分、粘り続ける久保九段をなんとか振り切った山崎八段が快勝で1組2位以上を確定、決勝トーナメント入りを確定させました。
次戦では1組優勝を懸けて佐藤康光九段と対戦します。

水留啓(将棋情報局)