●スカウトで芸能界デビューし“ヒーロー”に
2004年に放送した『仮面ライダー剣』(テレビ朝日系)の主人公・剣崎一真役で初主演を務めた椿隆之

現在は、ライブ配信アプリ「17LIVE(イチナナ)」でのライブ配信や、YouTubeチャンネル『椿正義チャンネル』などでの配信をしつつ、『仮面ライダー剣』が20周年を迎えたことを記念し行なわれているイベント『仮面ライダー剣 20th Anniversary STAGE&TALK』にも出演している。
本人いわく、楽しめることをして、毎日生きているという。そんな椿の人となりに迫った。

○「ヒーローになりたい」という夢を実現

――もともと俳優を目指したのは、なぜだったのでしょうか?

子どものころから、ドラマを見るのが好きでした。それで豊川悦司さんの『愛していると言ってくれ』(TBS系・95)を観た時に「こういう役をやってみたいな」って思って、そこからは自分もなりたいなって。それから、若いときは“自分がない”と思っていました、“自我”が。でも、俳優として、いろんな役をやることで、いろんな人の人生を歩めるじゃないですか。そこがすごく魅力的だなと思ったんです。

――幼少期からの夢だったんですね。そこから芸能界デビューすることになったのは?

原宿のラフォーレ前でスカウトされました。ちょうど、その直前に原宿・竹下通りでしつこいキャッチにあって、それを断ったら唾を吐かれて。「マジ最悪だわ」と思ったんです。その直後に話しかけられたので、ある意味感謝ですよね。
その時間軸がなかったら、スカウトの人はいなかったかもしれないですから。

それで、スカウトしてくれた人の名刺を見たら、大手の会社っていうのがすぐ分かったので、そのまま事務所についていきました。

――そこからオーディションで仮面ライダーに選ばれた際は、どのようなお気持ちでしたか?

幼稚園の頃、タイムカプセルに「ヒーローになりたい」って書いたんです。なので、運命を感じました。

――実際の撮影はどうでしたか?

定番の朝早いっていうのは大変でした。でも、僕的に苦手だったのは、それぐらいでしたかね。あとは、同年代の方が多かったのもあって、仕事だけど、専門学校みたいな感じ。同じところを目指している仲間と、一緒になって作品を作るというのが、クラスメイトみたいだなと思いました。

――印象に残っているシーンはありますか?

女の子の手を引っ張って、街中を駆け抜けていくみたいなシーンがあったんですけど、それはちょっと楽しかったですね。現実では、絶対にそんなことしないじゃないですか。そういうことをできるのって、ドラマとか映像の中ならではで、おもしろいなと思いました。

――撮影期間中の思い出を教えてください。


当時、家と撮影所が近かったので自転車で通っていたことと、撮影終わりにみんなでゲームセンターで遊んでたことですかね。でも、全然ばれませんでした。たまに、親御さんから「ほらっ」って唆された子どもが話しかけてくれる程度。やっぱり僕も子どもだったら変身後に会いたいので「そりゃあそうだよな」と思いましたね(笑)。
○『仮面ライダー剣』は「心のコア、魂、軸」

――20周年を記念した『仮面ライダー剣 20th Anniversary STAGE&TALK』の公演を通して、どのようなことを感じましたか?

やっぱり20年間も愛してくださる方がいるからこそ、今の公演ができていると思うので、すごいなと思いますし、特殊だなと思います。民放のドラマでも、20年経ってイベントが開かれたり、海外で認知されることってそんなにないのに対して、仮面ライダーとかウルトラマンとか戦隊って、もうそれだけで認知されているじゃないですか。そういうところがすごいなと思いますし、20年経った今でも、いろんなグッズが販売されて。やっぱり楽しいですね。

『仮面ライダー剣』出演で「やっと『椿』になれた」

――椿さんのライブ配信を観ている方の中には、「仮面ライダーのときから観てました」という方もいるのでしょうか?

「観てました」という人もいますし、新規で観てくださる方もいます。良くも悪くも、放送当時の2004年って、そんなにSNSが活用されていない時代だったのに対して、今ってもうスマホがあれば作品を観ることができますからね。いい時代だなと思います。

――ご自身的に20年前の作品を観られることに対しては、どういうお気持ちなのでしょう?

あくまでも僕ではなく、役なので恥ずかしいとかは全くないです。当時の自分は自我がなかったので。
やっぱり観てくださるのは嬉しいですけどね。

――『仮面ライダー剣』は、椿さんにとってどういう存在でしょうか?

そうですね。僕の心のコア、魂、軸になっているなと思います。仮面ライダーをやる前は本当に自我がそんなになかったのですが、仮面ライダーを演じたことによって僕は色付けされていって、やっと「椿」になれたんだと思っているので。

――そのように思えたのはなぜなのでしょう?

学生の頃、義務教育を受けていた頃は、自分のやりたいことをやっていたわけではなかったんです。それが、自分のやりたいことをやることによって、自尊心、自分の意志がどんどん加わって、どんどん自我に目覚めていく、花開いたんじゃないかなと思っています。

コロナ禍で「何のエンタメが安全なんだろう」


――ライブ配信を始めたのはなぜだったのでしょうか。

コロナ禍で何もできない状態が続いた中で、何のエンタメが安全なんだろうと考えた時にライブ配信というものを知って「あ、じゃあちょっとやってみようかな」って。

――難しさはありますか?

今までは、自分で何かをしゃべるということを全くしていなかったんですけど、ライブ配信ってしゃべっていないとだめだから、そういうところですかね。ただ、自分が何かをやりたいと思った時に、そういうのが何かの糧になるのではないのかなと思いました。

――ライブ配信をスタートしてから4年ほどたった今も続けられているのはなぜだと思いますか?

僕、人見知りで、人との接し方もわからないのですが、まだまだそういう面がありつつも、3~4年でちょっとは成長したと思います。個人でイベントとかをやるときに、ちょっとしゃべれるようになったなと感じているので。そういった成長できる部分がおもしろいのが1つ。


そして、もう1つは単純に、すぐに新鮮な声が聞けるところがおもしろいなと。今、どう思われているんだろう、とかを率直にコメントしてくださるから嬉しいですよね。そこから「こういう感じなんだ」「あ、じゃあこういうことをしてみたいな」っていう発見があったりもするので。自分がどういうふうに見えているのかがわかりました。

でも、なによりも観てくださってる方がいるからですよね。いなかったらたぶん続けていないと思います。

――リスナーさんから椿さんはどういうふうに見られているのでしょうか?

ホワホワしてるみたいですね。自分ではマイペースだなとは思っていたのですが。

現在はVTuberに歌手などジャンル問わずに活動

――そこで新たな出会いはありましたか?

17LIVEのアプリで「VS」という、知らないライバーの方とマッチングしてトークする機能があるのですが、いい勉強になるなと感じています。他のライバーさんはこういうふうにしゃべっているんだというのも分かりますし、ファンへのサービスの仕方とかも分かるので。

――椿さんの配信は、どんな空気感なのでしょうか?

僕の独り言ですね。リスナーの皆さん、僕がしゃべっているのを聴いているだけでいいらしいんですよ。
良くも悪くも。僕としては、いっぱい質問とかされたほうが、そのお話に沿って配信できるので、そっちのほうがいいんですけど。まあ、応援の仕方って人それぞれだと思うので、そこは自分ができることをやってって感じですかね。

――コメントがあまり来ないときは、どのようなことをお話しされているのでしょう?

本当に独り言ですね。一時期、ニュースをチェックして、今日の話題を考えていたこともあったんですけど、そういうことを考え始めちゃうと「なんか仕事になっちゃってるな」って思っちゃって。このままだと続かないし、楽しめないなと思ったんです。自分が楽しまないと観てくださっている方も楽しめないと思うので、やっぱりありのままでいいかと今は思っています。
○ケガがきっかけで始めたVTuber

――仕事をするんじゃなくて楽しむことを大事にされているんですね。

はい。楽しいことしかやりたくないです。ちゃんとやってはいるんですけどね。

――ライブ配信のどんな部分が楽しいのでしょうか。


知らない方としゃべるのは楽しいです。だって、何をやってるか分からない、いろんなジャンルの人がいるわけじゃないですか。まあ、僕もなんですけど。もし役者だけだと、携帯の連絡先は仕事相手や友だちしかいないなかで、ライブ配信をすると、おばあちゃんとかもいたりして、いろんな方としゃべれるんです。それは、自分にない交流なので、おもしろいですね。

――YouTubeとライブ配信では、どういうふうに区別していますか?

「椿正義」は僕のバーチャルYouTuberのチャンネルです。それは僕、前にケガをした事があって、そこから作りたい表情を作れないから、もう芝居はちょっと無理だなと思って。でも、VTuberなら表情とかあんまり気にしなくて大丈夫かと思って始めたんですよ。だから、1つのキャラとして作っているので、自分の中で完全にキャラ分けをしています。

――今後はどんなことがやりたいのでしょうか?

歌に取り組んでいます。6月29日に、楽曲「10秒間の扉」をリリースしました。2~3カ月前に、たまたま歌いたいな、歌で何かを表現したいなっていうふうに思って。自分へのエールと、人へのエールが混ざったような感じなのですが、それを聞いていただきたいですね。

■プロフィール
椿隆之
1982年6月28日生まれ。千葉県出身。2001年、映画『GO』で俳優デビュー。2004年、平成仮面ライダーシリーズ『仮面ライダー剣』(テレビ朝日系)の主人公・剣崎一真/仮面ライダーブレイド役で初主演を果たした。2024年8月12日、椿をはじめ、森本亮治(相川始/仮面ライダーカリス役)や、天野浩成(橘朔也/仮面ライダーギャレン役)らが出演する、メモリアルイベント『仮面ライダー剣 20th Anniversary STAGE&TALK』の愛知公演が開催される。
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