「FIRE」と「セミFIRE」「ゆるFIRE」どう違う?
FIREとは、「Financial Independence, Retire Early (経済的な自立と早期退職)」の頭文字をとった言葉で、定年を待たずにリタイアして、それまでに築いた資産を運用しながら生活することです。一般的に言う「早期退職(アーリーリタイア)」は、定年前に退職して、その後は貯金や退職金の取り崩しと年金によって暮らしていくスタイルですが、FIREは、投資元本を用意して、その運用益で生活していくスタイルになります。そのため完全なFIREであれば、元本を減らすことなく生涯を終えることができます。
FIREには「4%ルール」というものがあります。投資資金を年利4%で運用し、その運用益の範囲に年間の生活費が収まれば資産が減らないという考え方です。これをもとにすると、年間の生活費の25倍の資産があれば、FIREが達成できることになります。仮に年間の生活費が400万円であれば、1億円の投資元本が必要となります。
このように、完全なFIREをするためには、非常に多くの投資元本が必要となるので、実現できる人は限られてきます。しかし、リタイア後も、アルバイトや副業などで収入を得られれば、その分、必要となる投資元本は減らすことができます。完全に働くことをやめるのではなく、ゆるく働き続けることで、FIREに必要となる資産を半分にすることができれば、実現できる人は多くなるでしょう。このような、運用益とアルバイトなどの労働収入の2つで生活するスタイルを「セミFIRE」、「ゆるFIRE」、「サイドFIRE」などと呼びます。
「セミFIRE」「ゆるFIRE」はいくらあればできる?
それでは、実際にいくらあれば「セミFIRE」ができるのか、試算してみたいと思います。試算するにあたって、いくつか条件を設定する必要があります。先述したように、FIREするには年間の生活費の25倍の資産が必要です。これに対して、「セミFIRE」は労働収入で半分を補うとしましょう。生活費は、独身の場合と家族がいる場合では大きく異なります。そこで、総務省「家計調査」の単身世帯の生活費と二人以上世帯の生活費を参考にして、2通りの試算を行いたいと思います。
*独身の場合
総務省「家計調査」の直近データを参考にすると、単身者の生活費の平均は16万7,620円です。ここには、税金や社会保険料などの非消費支出は含まれていないので、それを含めて20万円としましょう。
以上のことから、独身者がセミFIREをする場合、3,000万円~4,000万円の資産が必要となるでしょう。
*家族がいる場合
総務省「家計調査」から、二人以上の世帯の生活費を見てみると、29万3,997円となっています。ここには、税金や社会保険料などの非消費支出は含まれていないので、それを含めて38万円としましょう。年間では約460万円です。
以上のことから、家族がいる場合にセミFIREをするには、6,000万円~7,000万円の資産が必要になるでしょう。
*条件を変えてシミュレーション
ここでは、総務省の家計調査の平均値を参考にして、年間の生活費を求めましたが、個々の状況によって生活費は異なってきます。また、リタイア後にいくらに収入を得られるのかも状況によりけりです。そこで、生活費、労働収入ごとに、数パターンを作ってシミュレーションをしてみました。なお、運用利回りは4%で税金を考慮しています。
<セミFIREに必要な資産>
新NISAを活用すれば運用益が非課税
ここまでのシミュレーションでは、配当金や売却益に課税される約20%の税金を引いたあとの金額で必要な資産額を求めていますが、新NISAを活用すれば、生涯を通じた投資枠である1,800万円以内で生じた運用益には税金がかかりません。そのため、必要な資産がその分少なくて済みます。
石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。ブログ「ファイナンシャルプランナーみかりこのお金の勉強をするブログ」も運営中! この著者の記事一覧はこちら