○■コーヒー2050年問題に対応
冒頭、タリーズコーヒージャパンの内山修二氏が登壇し、コーヒーの現状とショップの戦略について説明した。直近2023年度のブランド売上は、ショップで404億円+RTD製品で426億円で、合わせて830億円となった。内山氏は「ショップブランドの規模で申し上げると、スタバさん、コメダさんに続いており、ほぼドトールさんと同程度、との認識です」と胸を張る。
店舗数に関しては2024年7月末現在で796店舗を展開。コロナ禍を受けて一時期、店舗数も伸び悩んだが、人流の回復とともに店舗数・売上高が伸長した。特に2023年度は、過去最高の店舗数・売上高となった。内山氏は「この2024年度の第1四半期も、売上高は前年比で110%と大変好調です」と説明する。なお今後の店舗展開については、むやみに数を追わず、タリーズのクオリティ(商品、サービス、空間)を維持できる範囲で拡大していくとした。
ここで内山氏は、いわゆる"コーヒー2050年問題"にも言及。世界規模の気候変動によって、美味しいコーヒーには欠かせないアラビカ種のコーヒー豆の収穫量が2050年までに半減してしまうことが危惧されているが、タリーズコーヒージャパンではどのような対策を講じているのだろうか――。ここから先は、タリーズコーヒーマスターの南川剛士氏がプレゼンを引き継いだ。
南川氏は「コーヒー原料の取り組み」について解説。それによれば、同社では長期プロジェクトとしてブラジル・バウ農園にて2007年より、希少品種「レッドブルボン」を苗から栽培する産地開発に取り組んでいる。またペルー・センフロカフェ農協では2019年より、ティピカ種+ロブスタ種で接ぎ木するプロジェクトを開始した。
ティピカ種は、いまグローバルで商業生産されているコーヒー品種のうち、最も原種に近いとされている希少品種。味わいが素晴らしい一方で、病虫害に弱い、育て方が難しい、生産性が低い、といった理由から農園では生産されなくなってしまったそうだ。「ほぼ全滅状態にあるティピカ種の樹を、病虫害に強いロブスタ種の根に接ぎ木しています。テストでも良い結果が出ましたので、2024年10月から2025年2月にかけて、農地を拡大して展開する予定です」と南川氏。こうした地道な活動を通じて、コーヒー事業を持続可能なものにしていきたい、と力を込める。
○■カフェラテの美味しさの秘訣は?
舞台上では、タリーズバリスタコンテスト16年および17年のチャンピオンである、チーフバリスタの石川千晴さんによるデモンストレーションも行われた。石川さんによれば、カフェラテの味を決めるものはエスプレッソ、牛乳、そしてバリスタの腕だという。
「カフェラテはシンプルな作りなので、素材のこだわりが非常に重要になります。タリーズでは、エスプレッソクラシコという豆を使用しています。
○■2024年秋冬のタリーズ新商品
伊藤園の相澤治氏は、2024年秋冬のタリーズ新商品について紹介した。相澤氏によれば、コロナ禍によりコーヒー飲料の市場規模は2020年~2023年と縮小傾向にあった。しかしタリーズでは、ショップにおいて販売好調を維持できた。その理由については「ご自宅でこだわりのレギュラーコーヒーを淹れて楽しむお客様が非常に増えたことが予想されます」と分析する。
これを受けて「お客様がコーヒーの味わいに求める水準も上がったのではないか」と相澤氏。そこで今秋は、タリーズのバリスタが豆の選定、焙煎を監修した『BARISTA'S BLACK』および『BARISTA'S BLACKキリマンジャロ』の販売を強化する。
このほか「コーヒーの苦みが苦手」という消費者に向けた新商品も展開する。
○■接ぎ木にチャレンジ
説明会の最後には、ブランドアンバサダーの新木優子さんが登壇。タリーズコーヒーマスターの南川氏にレクチャーを受けながら、ティピカ種+ロブスタ種による接ぎ木を体験した。教えられた通り、手際よくロブスタ種の根にティピカ種の樹を接ぎ木していく新木さん。南川氏に「素晴らしいです。現地で即戦力として活躍できます」と褒められると、満面の笑顔を見せていた。
近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。