●演じる役の変化に喜び「自分に合った役を演じられるように」
舞台、テレビ、映画、モデル、執筆業と幅広く活躍している長井短。12月6日に開幕する草なぎ剛主演の舞台『ヴェニスの商人』では、佐久間由衣演じるポーシャの侍女・ネリッサ役を務める。
『ヴェニスの商人』がウィリアム・シェイクスピア作品初挑戦となる長井は、「演劇を始めた時から1回はシェイクスピア作品をやりたいと、本当に待ち望んでいたので、念願が叶ってすごくうれしいです」と喜んでいる。
そして、「現代劇をやる機会の方が多いので、何百年も前に書かれたセリフをしゃべるとどんなことが起きるんだろうという興味もあって。美しいセリフが多いので、自分の持っている言葉の引き出しが増えるのではないかなと楽しみです」と期待。「この時代の物語は、本か演劇で、映画やアニメがなかったということは、それだけ研ぎ澄まされたものがあるのではないかなと思うので、改めて演劇が好きだなと思える公演にしたいです」と意気込んだ。
演じるネリッサと自身の共通点もあるようで、「自分も恋の相談をするよりも、恋の相談に乗る方が多かったので、そういうところが似ているのかなと。恋愛以外でも自分の中で完結する方が多いです。もちろん頼ることはあっても、結局自分で決めないといけないと思うので」と話した。
中学生の時に大人計画の舞台を見て「演劇をやりたい」と思い、高校在学中に演劇活動を開始した長井。芝居は「ずっと楽しい」とやりがいを述べ、演じる役が変化してきたことでさらに楽しさが増しているという。
「20代前半は、若い20代の女の子という社会的な属性が自分の性格とはあまりにも合わないなと感じていたんですけど、演じる役柄の年齢が上がってきて、それがだいぶ合ってきたなと。お姉さんポジションでいられて楽になってきて、演じることがどんどん楽しくなっている気がします」
20代前半は、一般的な若い女性のイメージと自分のギャップを感じたという。
「『夢に向かって元気に走らないといけないんですか?』という感じで、20代の若い女の子の役に共感できず、オファーも来ないし、オーディションを受けても受からないし、もらえる役の数も少なかったと思います。その頃は、汗かいている人だけが頑張っているわけじゃないのになと。必死に『やらせてください!』みたいにしてなくても、同じ熱量を持っている人間はいるはずで、そういう人もいるんだともう少しみんな想像してくれてもいいんじゃないかなという思いがありました」
そして、年齢が上がり、また、世の中において多様性が広がったことで、演じる役が広がってきたという。
「ここ数年で、一見やる気のないような役を任せてもらうことが増えて、自分に合った役を演じられるようになってきてありがたいなと。昔の作品にはそういう女の子が少なかったと思いますが、世の中の空気もいろんな人いるよねという方向に進んだことで、今の方が働きやすいですし、生きやすくなったなと思います」
「友達に恵まれていたので、学校では何の問題もなく『だよね』という感じでしたが、いろんな人とお仕事するようになってから、全然受け入れてもらえないこともあって、『もっとかわいげを持った方がいい』と言ってくる人もいて。『女優はこうあるべきだ』というのが納得いってなかったので、だからこそ演劇をやりたかったのだと思います。女優さんを育ててくれる歴史のある事務所さんではなく、自分で自分のやることを考えて歩いていける方法で俳優を目指そうとしました」
自分の気持ちに正直に、ありのままの自分で勝負してきた長井。「我が強いんです」と笑いつつ、自分の歩みに納得している。
「遠回りしましたが、そうしてきてよかったと思います。今の事務所とも、面倒くさいなと思わせてしまうような話し合いはさせてもらっていますが、そうやってきたからこそ今こうやって肩の力が抜けてきたと思うので、いい10年間だったと思います。自分で決めたんだから仕方ないよなと思える状態だったので精神的にもよかったです」
バラエティでも活躍し、“ネガティブキャラ”として注目を集めた時期もあった。
「バラエティは、人間のたくさんある面の中の一個がすべてだという風に見せるショーなので、そこが強調されていたのだと思います。
近年は映像作品にも多数出演しており、舞台も映像もどちらもやりがいを感じているという。
「映像作品にもいろいろ出させてもらうようになって、今はどちらも楽しいなと。もちろんどちらもずっとやっていきたいと思っていますが、全然違うことをやってみたいという思いもあります」
現在31歳。以前よりも肩の力を抜けるようになってきたという。
「20代は食っていけるようにというのもあって、とにかく必死で、そうやってきたからこその今ですが、その10年間を終えて、肩の力が抜けてきたなと最近感じています。芝居だけではなく、ほかにも面白いことがあればやっていきたいなと思うようになりました」
近年は執筆業にも前向きに取り組んでいるが、今後どんなことに挑戦していきたいか尋ねると「まだ具体的にはないですが、今思いついてないことをやっていてほしいですね」と答え、「やりたいと思うものが見つかった時に、今やっていることをいつでも辞められる人間でいたいなと。年を取ると環境を変えるのが怖いという思いが膨らんでいきますが、全部辞めてでも始めたいことが見つかったら、躊躇なくそっちに歩いていけるような人間でいたい」と語った。
「この人と結婚するという1個大きな決断ができたことが自信になったし、誰を好きになるとか、恋愛に関することをもう考えないでいいんだというのは、めちゃくちゃ楽になりました」
結婚においても長井らしく自分の気持ちを大切にしている。
「結婚も辞めたいと思ったらいつ辞めてもいいと考えています。夫と別れたいわけではもちろんないですが、2人がご機嫌に生きていくために適切な形というか、もしこの契約が邪魔だと感じる時が来たら辞めればいいし、やっぱり必要だねってなったらもう1回契約すればいいし。
今後も変わらず、しっかり考え、自分の気持ちに正直に進んでいくつもりだ。
「そんなに考えすぎない方がいいと言われることもありますが、それができていたらやっているよと(笑)。でも、自分にはこの生き方が向いていると今の段階では思うので、これからもしつこくいろいろ考えながら生きていきたいと思います」
最後に、ファンに向けて「楽に生きていこうな!」とエールも送り、「コロナもあって劇場に足を運んでくれる人が減ってしまったと思うので、ぜひ来てもらって、演劇いいじゃんと思ってくれたらうれしいです。ながら見できないことが今の世の中はとても少ないと思うので、時々そういうことをやると面白いと思います」と呼びかけた。
■長井短
1993年9月27日生まれ、東京都出身。舞台、テレビ、映画、モデル、執筆業と幅広く活躍。近年の主な出演作は、舞台「月刊『根本宗子』第19号『共闘者』」、ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』、『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』、映画『若き見知らぬ者たち』『もしも徳川家康が総理大臣になったら』『PERFECT DAYS』など。また小説集『ほどける骨折り球子』他、自著や連載も多数執筆。舞台『ヴェニスの商人』は、東京・日本青年館ホールにて12月6日~22日、京都・京都劇場にて12月26日~29日に、愛知・御園座にて2025年1月6日~10日に上演。
ヘアメイク:小園ゆかり スタイリスト:Takashi
舞台、テレビ、映画、モデル、執筆業と幅広く活躍している長井短。12月6日に開幕する草なぎ剛主演の舞台『ヴェニスの商人』では、佐久間由衣演じるポーシャの侍女・ネリッサ役を務める。
長井にインタビューし、本作出演の喜びや女優業への思い、20代に抱いていた世間とのギャップ、今後の抱負など話を聞いた。
『ヴェニスの商人』がウィリアム・シェイクスピア作品初挑戦となる長井は、「演劇を始めた時から1回はシェイクスピア作品をやりたいと、本当に待ち望んでいたので、念願が叶ってすごくうれしいです」と喜んでいる。
そして、「現代劇をやる機会の方が多いので、何百年も前に書かれたセリフをしゃべるとどんなことが起きるんだろうという興味もあって。美しいセリフが多いので、自分の持っている言葉の引き出しが増えるのではないかなと楽しみです」と期待。「この時代の物語は、本か演劇で、映画やアニメがなかったということは、それだけ研ぎ澄まされたものがあるのではないかなと思うので、改めて演劇が好きだなと思える公演にしたいです」と意気込んだ。
演じるネリッサと自身の共通点もあるようで、「自分も恋の相談をするよりも、恋の相談に乗る方が多かったので、そういうところが似ているのかなと。恋愛以外でも自分の中で完結する方が多いです。もちろん頼ることはあっても、結局自分で決めないといけないと思うので」と話した。
中学生の時に大人計画の舞台を見て「演劇をやりたい」と思い、高校在学中に演劇活動を開始した長井。芝居は「ずっと楽しい」とやりがいを述べ、演じる役が変化してきたことでさらに楽しさが増しているという。
「20代前半は、若い20代の女の子という社会的な属性が自分の性格とはあまりにも合わないなと感じていたんですけど、演じる役柄の年齢が上がってきて、それがだいぶ合ってきたなと。お姉さんポジションでいられて楽になってきて、演じることがどんどん楽しくなっている気がします」
20代前半は、一般的な若い女性のイメージと自分のギャップを感じたという。
「『夢に向かって元気に走らないといけないんですか?』という感じで、20代の若い女の子の役に共感できず、オファーも来ないし、オーディションを受けても受からないし、もらえる役の数も少なかったと思います。その頃は、汗かいている人だけが頑張っているわけじゃないのになと。必死に『やらせてください!』みたいにしてなくても、同じ熱量を持っている人間はいるはずで、そういう人もいるんだともう少しみんな想像してくれてもいいんじゃないかなという思いがありました」
そして、年齢が上がり、また、世の中において多様性が広がったことで、演じる役が広がってきたという。
「ここ数年で、一見やる気のないような役を任せてもらうことが増えて、自分に合った役を演じられるようになってきてありがたいなと。昔の作品にはそういう女の子が少なかったと思いますが、世の中の空気もいろんな人いるよねという方向に進んだことで、今の方が働きやすいですし、生きやすくなったなと思います」
自分の気持ちに正直に歩んできた道「そうしてきてよかった」
また「高校生の頃からかわいげとか女性らしさみたいなものが合わんなと感じていました」と打ち明け、そんな自分をなかなか受け入れてもらえない時期もあったという。「友達に恵まれていたので、学校では何の問題もなく『だよね』という感じでしたが、いろんな人とお仕事するようになってから、全然受け入れてもらえないこともあって、『もっとかわいげを持った方がいい』と言ってくる人もいて。『女優はこうあるべきだ』というのが納得いってなかったので、だからこそ演劇をやりたかったのだと思います。女優さんを育ててくれる歴史のある事務所さんではなく、自分で自分のやることを考えて歩いていける方法で俳優を目指そうとしました」
自分の気持ちに正直に、ありのままの自分で勝負してきた長井。「我が強いんです」と笑いつつ、自分の歩みに納得している。
「遠回りしましたが、そうしてきてよかったと思います。今の事務所とも、面倒くさいなと思わせてしまうような話し合いはさせてもらっていますが、そうやってきたからこそ今こうやって肩の力が抜けてきたと思うので、いい10年間だったと思います。自分で決めたんだから仕方ないよなと思える状態だったので精神的にもよかったです」
バラエティでも活躍し、“ネガティブキャラ”として注目を集めた時期もあった。
「バラエティは、人間のたくさんある面の中の一個がすべてだという風に見せるショーなので、そこが強調されていたのだと思います。
確かに暗い面は私の中にあって、それも自分の一面ですが、いろいろな面があって、いっぱいしゃべる面もあります」と述べ、「バラエティでたくさんの人に知ってもらえたのはよかったです」と振り返った。
近年は映像作品にも多数出演しており、舞台も映像もどちらもやりがいを感じているという。
「映像作品にもいろいろ出させてもらうようになって、今はどちらも楽しいなと。もちろんどちらもずっとやっていきたいと思っていますが、全然違うことをやってみたいという思いもあります」
現在31歳。以前よりも肩の力を抜けるようになってきたという。
「20代は食っていけるようにというのもあって、とにかく必死で、そうやってきたからこその今ですが、その10年間を終えて、肩の力が抜けてきたなと最近感じています。芝居だけではなく、ほかにも面白いことがあればやっていきたいなと思うようになりました」
近年は執筆業にも前向きに取り組んでいるが、今後どんなことに挑戦していきたいか尋ねると「まだ具体的にはないですが、今思いついてないことをやっていてほしいですね」と答え、「やりたいと思うものが見つかった時に、今やっていることをいつでも辞められる人間でいたいなと。年を取ると環境を変えるのが怖いという思いが膨らんでいきますが、全部辞めてでも始めたいことが見つかったら、躊躇なくそっちに歩いていけるような人間でいたい」と語った。
「しつこく考えながら生きていきたい」 結婚後の変化も語る
プライベートでは2019年に俳優の亀島一徳と結婚したが、結婚して「気持ちが楽になった」と変化を語る。「この人と結婚するという1個大きな決断ができたことが自信になったし、誰を好きになるとか、恋愛に関することをもう考えないでいいんだというのは、めちゃくちゃ楽になりました」
結婚においても長井らしく自分の気持ちを大切にしている。
「結婚も辞めたいと思ったらいつ辞めてもいいと考えています。夫と別れたいわけではもちろんないですが、2人がご機嫌に生きていくために適切な形というか、もしこの契約が邪魔だと感じる時が来たら辞めればいいし、やっぱり必要だねってなったらもう1回契約すればいいし。
あまり重たいこととして捉えないという認識が一致していたので、気楽にやれているのだと思います」
今後も変わらず、しっかり考え、自分の気持ちに正直に進んでいくつもりだ。
「そんなに考えすぎない方がいいと言われることもありますが、それができていたらやっているよと(笑)。でも、自分にはこの生き方が向いていると今の段階では思うので、これからもしつこくいろいろ考えながら生きていきたいと思います」
最後に、ファンに向けて「楽に生きていこうな!」とエールも送り、「コロナもあって劇場に足を運んでくれる人が減ってしまったと思うので、ぜひ来てもらって、演劇いいじゃんと思ってくれたらうれしいです。ながら見できないことが今の世の中はとても少ないと思うので、時々そういうことをやると面白いと思います」と呼びかけた。
■長井短
1993年9月27日生まれ、東京都出身。舞台、テレビ、映画、モデル、執筆業と幅広く活躍。近年の主な出演作は、舞台「月刊『根本宗子』第19号『共闘者』」、ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』、『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』、映画『若き見知らぬ者たち』『もしも徳川家康が総理大臣になったら』『PERFECT DAYS』など。また小説集『ほどける骨折り球子』他、自著や連載も多数執筆。舞台『ヴェニスの商人』は、東京・日本青年館ホールにて12月6日~22日、京都・京都劇場にて12月26日~29日に、愛知・御園座にて2025年1月6日~10日に上演。
ヘアメイク:小園ゆかり スタイリスト:Takashi
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