●お互いの感覚を共有して作り上げた『さよならのつづき』
2014年に俳優デビューしてから今年で10年の節目を迎えた坂口健太郎。最新作となるNetflixシリーズ『さよならのつづき』(11月14日より世界配信)では有村架純とW主演を務め、美しくも切ないラブストーリーを作り上げた。
坂口と有村は、ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』、映画『ナラタージュ』、WOWOW『そして、生きる』に続き4度目の共演となる。坂口にインタビューし、有村との共演や自身の役作りなどについて話を聞いた。

本作は、プロポーズされたその日に恋人の雄介を事故で亡くしたさえ子と、その雄介の心臓を提供され命を救われた成瀬の、“さよなら”から始まる愛の物語。さえ子を有村架純、成瀬を坂口健太郎が演じ、太陽のように周囲を照らす雄介を生田斗真、前向きな性格で病弱な成瀬を支える妻・ミキを中村ゆりが演じた。脚本は、映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』『余命10年』などの岡田惠和氏が手がけた。

――有村さんと4度目の共演となりますが、芝居をする時に、初共演の方と感覚の違いはありますか?

違うかもしれないですね。最初はCM共演から始まって、『いつ恋』や『ナラタージュ』の時はまだ「2回目だね」ぐらいな感じでしたが、『そして、生きる』から何度もご一緒しているという感じになって、「また今回もよろしくね」と。たぶん僕と架純ちゃんが自分たちで考えるよりも、周りの人の感覚でこの2人の相性がいいというか、2人で並んだ時の見た目かもしれないし、声のトーンかもしれないし、それが合うと思ってくれるんだろうなと思います。

――ご自身としてはここが合うなとか、有村さんとの相性をどのように感じていますか?

架純ちゃんがよく言ってくれるのは、「健ちゃんはいろんな人たちを巻き込む」と。「部署やポジションなど関係なくみんなと話してくれるから、現場がすごく良くなる」と言ってくれますが、僕からすると、そもそもバラバラな人たちをまとめているという感じでもないんです。架純ちゃんが旗を振ってくれて、そこにいてくれるから、みんなが彼女のために動こうと、目線が彼女に向く。僕は、みんなが向いたところをガサッと持っていく感覚で、それはきっと彼女がいろんな作品を経て、そういう座長のやり方になったのだろうし、僕は架純ちゃんと一緒にやるときはそういうスタンスでできているということだと思います。


――撮影の前に有村さんとは打ち合わせをされたのでしょうか。

今回、架純ちゃんといろんな話をする時間が持てて、台本を読んでどう感じたかという、お互いの感覚を共有しました。

――2人で話したことで膨らんだことなどはありましたか?

最初の段階では台本がまだ完成しておらず、あらすじに近いもので、プロデューサーさんと岡田さんが、何パターンもいろんな物語の進め方を作られていたんです。設定もいろんなタイプがあって、例えば、成瀬がミキさんと結婚をしてない世界線もあったし、成瀬とミキさんの間に子供がいるという案も。僕のチョイスとしては、この作品はすごく難易度が高いと思っていたので、子供がいるといろんなことが難しくなるんじゃないかなと。でも、結婚してないまで軽くしてしまうと、悲しさというか、好きになってはいけない人に心臓が動いてしまうという枷みたいなものが必要だし、そこで架純ちゃんと肉体的接触はどこまで持つんだとか、そういう細かいところはいろいろ意見を出させてもらいました。

――設定を決める段階からお二人も参加されたんですね。

Netflixさんで世界配信となった時に、日本人の感覚だけではよくないと思ったんです。愛情表現の仕方も世界でいろいろ違うだろうし、そう言った意味でも、架純ちゃんと本当にいろんな話をして、恋愛の話もしました。僕と架純ちゃんは愛していた人を亡くしてしまった経験はないけど、そうなったらどう思うか。架純ちゃんと僕が今まで生きてきた歴史に照らし合わせて、どう感じたか話をしました。

――坂口さんがこの作品に出演しようと思ったのは、企画や座組の部分が大きかったのでしょうか。


僕が聞いた段階では共演者は架純ちゃんだけでしたが、またご一緒できるというのはありましたし、プロデューサーの岡野(真紀子)さんのエネルギー感というか、この作品への熱量を感じ、僕はけっこうそこでほだされることが多いかもしれないです。作品に対するエネルギーを聞いて、頑張ってみようというのは、普段から多い気がします。

「果たしてできるだろうか」と感じた難役への挑戦

――有村さんの演技に関して本作で改めて魅力を感じた部分はありましたか?

彼女は今回、お芝居的には新しい、今まであまりやってこなかった挑戦をされたと思います。この作品は、ドロッとさせることもできたと思うんです。もうちょっと湿度を感じるお芝居をして、好きになってはいけない人を好きになってしまった、心臓が動いてしまったという表現を粘着質にやろうと思ったら簡単にできる話でしたが、そこがメインではなく、愛情がどうしても行ってしまうという……僕だったら、雄介の心臓としてさえ子に行ってしまう、でももしかしたら成瀬は、自分も心が動く瞬間が絶対あったと思うし、さえ子も雄介の心臓が入っているから雄介をと思っているけど、どこかで成瀬という存在に気持ちが動いてしまうことがあったと思うんですね。それを軽やかに表現してくれたなと思います。駅でさえ子とミキが話しているシーンを見た時に、素晴らしいなと思いました。

――坂口さんも、成瀬の中に雄介というもう一つの心があるという、すごく難しい役だったと思いますが、演じる上でどんなことを意識されたのでしょうか。

最初にストーリーを読んだときに、難しいなと思いました。これを果たしてできるだろうかと。お芝居していても、雄介の心臓が入って、ちょっとずつ雄介のパーセンテージが大きくなってくるけど、時々成瀬に戻ったりもするし、「今、僕の中には何%雄介があったほうがいいですか?」と監督や架純ちゃんに聞いたり。でも、成瀬の中の雄介が何%なのかというのは感覚でしかなく、説明しようがないから、僕も果たして何が正解だったのか、正直まだわかってないところもあります。
でも、めちゃくちゃ悩んで、いろんな人に聞きながら、いろんなパターンを撮って、あとは監督に一番いいものを使ってくださいという感じだったので、きっとそれが正解だったと思いたいです。

――考えられるパターンをすべて試したからこそ、自分の中で納得できたと?

自分から「違うパターンも撮っていいですか?」と提案することはあまりないのですが、今回はいろいろ正解があって、その正解の質が変わってくる気がして、いい部分を使ってもらおうという感覚でやっていました。演じているときは、「今どれくらいなんだろう」とわけがわからなくなる時がありましたが、僕は絶対ミキのことは忘れてはいけないと思っていました。雄介の心臓が動いてしまっているけど、そこに成瀬がいなくなってしまうとよくないと思っていたので、雄介100%になっても、どこか自分の中の成瀬は残して演じました。

■坂口健太郎
1991年7月11日生まれ、東京都出身。2014年に映画『シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸』で俳優デビュー。映画『64-ロクヨン』(16)で第40回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。『シグナル長期未解決事件捜査班」(18)で連ドラ初主演を果たす。近年の主な出演作は、ドラマ『鎌倉殿の13人』『競争の番人』(22)、『Dr.チョコレート』『CODE-願いの代償-』(23)、映画『余命10年』『ヘルドッグス』(22)、『サイド バイ サイド 隣にいる人』(23)、Netflix『パレード』(24)、Coupang Play『愛のあとにくるもの』(24)など。

スタイリスト:壽村 太一(COZEN inc) ヘアメイク:廣瀬瑠美
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