旭酒造は1月23日の経営戦略発表会で、社名を6月1日より「株式会社 獺祭」に変更すると発表した。海外展開を加速して"世界のDASSAI"を目指していく方針だ。
○世界のDASSAIへ
発表会の冒頭、会長の桜井博志氏が旭酒造のこれまでの歩みを振り返った。同氏が父親から会社を引き継いで3代目蔵元に就任したとき、売上はわずか1億円に満たなかったという。しかし1990年に「獺祭」を発売して東京にも進出。その後、数々の失敗を繰り返しながらも会社を成長させてきた。「おかげさまで昨年(2024年)9月期の決算では、売上195億円を計上できました」と笑顔をつくる。
今後については「世界にDASSAIを打ち出していきたいと思っています。プレミアムブランドが世界に出ていくことは、日本経済のためにもなる」と桜井会長。相当な決意を持って社名を「株式会社 獺祭」に変更すると明かす。
同社がアメリカ・ニューヨークにて酒造りを始めてから1年が経過する。現在のところ、Dassai Blueの売上は年間で424万ドル(6.6億円)、販売容量は約11万リットル(720ml瓶換算で15.6万本)に過ぎない。これについて4代目蔵元の桜井一宏社長は「まだまだ、試行錯誤の連続です。
しかし、ゆくゆくは国内で300億円、海外で700億円という規模まで売上を伸ばしていきたい考え。「2028年春には新しい酒蔵も完成します。継続して酒蔵を増やして、酒造りに従事する蔵人も増やし、教育によって仕事の質も高めていきたい。原料となる米の収穫量を増やし、物流も効率化し、同時に海外市場もつくっていく。まずは、その第1歩として社名を変更します」と説明する。
海外では日本食がブームとなり、それに合わせて日本酒のニーズも高まりつつある。ただ、米国のアルコール消費の市場規模における日本酒が占める割合は、わずか0.2%に過ぎない。桜井社長は「まだ海外の人々に日本酒は認知されていない、というのが現状です。ヨーロッパでは、そのプレゼンスは0.1%以下だとも言われています。この状況を打破することが、これからの私たちのテーマです」と気を引き締める。
直近の取り組みとしては、モダンフレンチ料理の巨匠ヤニック・アレノ氏と共に、フランス・パリにてL’IZAKAYA DASSAI Yannick Allenoを出店する。
月面で「獺祭」を造る「月面醸造計画」も進行中。これは宇宙で日本酒を造る人類初のチャレンジで、国際宇宙ステーション「きぼう」の日本実験棟で醸造した「獺祭MOON-宇宙醸造」は、希望小売価格1億円での販売を予定している。
最後に質疑応答の時間がもうけられ、メディアの質問に対応した。
売上目標の1,000億円はどのように目指すか、と聞かれた桜井社長は「海外では、日本酒はまだニッチな存在。でも日本酒の良さをきちんと伝えていくことで、必ずマーケットは大きく成長します。そのトレンドを追いかけていきたい。そのためにも、まずはアメリカの市場をしっかり作っていきます。いろいろなことを試しつつ、成功するまでやり遂げることが大事になります」。
また桜井会長は「これまでも繰り返してきた、地道なトライ&エラーが欠かせないと思います。
近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。