雫井脩介氏の小説『霧をはらう』を朗読

2歳で芸能界入りし、第一線で活躍し続けている女優・安達祐実(43)。2月27日よりAmazonオーディブルで配信開始された『霧をはらう』で朗読を担当した安達にインタビューし、本作の魅力や朗読において意識したことなど話を聞いた。

2021年に刊行された雫井脩介氏の小説『霧をはらう』は、小児病棟で起きた点滴殺傷事件で物証がないまま逮捕された母親が勝算のない裁判に挑む物語。
娘を懸命に支えていた母親は冷酷な殺人犯なのか、弁護士の信念を問う法廷サスペンスを、安達の迫真の朗読で届ける。

――本作のオファーを受けたときの心境をお聞かせください。

声だけで伝えるには、きちっと読んでいかないといけないので、難しそうだなと思いましたが、声のお仕事はもともと好きなのでうれしく思いました。

――声のお仕事のどんなところがお好きですか?

声だけで伝えるというのは、また独特の味わいがあるというか、自分の姿が映っていると目で見えることに頼る部分がありますが、完全に声だけとなると、研ぎ澄まされる感じがします。体を使って演じるときは、その場の感じのニュアンスでお芝居することもありますが、声だけだと最後まで気を付けないといけないので。

――安達さんの声って安達さんだなとすぐわかる声ですよね。

特徴的だってよく言われます(笑)。なので、私の声ですんなり皆さんは聴くことができるのだろうかという不安はありましたが、楽しかったです。

――魅力的な声という印象ですが、不安に思うこともあるんですね。

きっと好き嫌いも分かれるだろうなと。でも、俳優は声が大事とおっしゃる監督も多いので、俳優としては悪いことじゃないのかなとは思っています。

――作品の魅力はどのように感じましたか?

法廷の話でもあり、事件が起こったときの時系列を説明するような場面が多くありますが、ただ事実だけを並べ立てられているわけではなく、人の心が関わっていたり、人間臭さみたいなものがあってとても面白いなと思いました。


――Audibleの魅力はどのように感じていますか?

スムーズに物語を自分の中に入れることができるというのがすごくいいなと思いますし、本を読むとなると、「よし読むぞ!」ってちょっと気合いが必要ですが、声で聴かせてくれると、何かをしながらでも聴けるし、そういう良さがあるのかなと思います。

母親の視点で共感「わかるなと…」

――オファーを受けたときに難しさを感じたとおっしゃっていましたが、実際に朗読してみていかがでしたか?

登場人物が多くて、4~5人だったらなんとかなるんですけど、けっこうな数の人が出てくるので、人物ごとに声を使い分けることはなかなかできなくて、そこが難しかったです。目で読んでいると、セリフが続いていても誰のセリフかわかりますが、声だけだとわかりづらくなってしまうので、そこが難しいなと感じました。

――容疑者として逮捕されてしまう、入院患者・小南紗奈の母親・野々花をどう捉えて演じましたか?

野々花さんは、もしかしたらやっていない罪で犯罪者になってしまうかもしれないという瀬戸際なのに、どこかのほほんとしたような雰囲気がある人だったので、一見柔らかくてふんわりしているけど、それが強みになっているなと感じました。自分だったらあの状況でそんな風にはいられないので、すごいなと思いながら読んでいましたし、娘とのつながりや娘のことを信じている気持ちもそうですけど、娘側がお母さんを信じたいと思ったり、そのつながりの強さも感じました。

――2児のお母さんでもある安達さんですが、母親という視点で共感する部分はありましたか?

性格は全然違いますが、娘が高校生で思春期なので、娘の葛藤みたいなところは、こういう気持ちになるだろうなと共感できました。あと、野々花さんもちょっと過保護というか、世話を焼くというのがあって、その気持ちはわかるなと。私も子供の気持ちを慮るみたいなところは過剰だと人に言われることもあるので。

――これから視聴される方にメッセージをお願いします。

私がこの作品を読んで思ったのは、やはり真実は強いなということと、人を信じる気持ちや疑う気持ちなどいろんな感情が渦巻いて、登場人物それぞれの思惑や過去も絡んできますが、結局は人の心が物事を動かしていくんだなと、人間の力強さを感じたので、聴いていただく方にもそれを感じ取っていただけたらうれしいです。

■安達祐実
1981年9月14日生まれ。東京都出身。
2歳からキッズモデルとして活動を始め、94年の日本テレビ系ドラマ『家なき子』で本格的にブレイク。同作品の台詞は、新語・流行語大賞にも選ばれるなど社会現象となった。以降も幅広い役をこなす実力派俳優として数々のドラマ、映画に出演する他、ファッションブランドのプロデュース等、活動は多岐に渡る。
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