●
「ディオ」や「ジョグ」など、スクーターに付けられる名前はカタカナがほとんどですが、“和名”で市販されたスクーターもありました。写真のスクーターをご存じですか?
ヒント:『〇〇、咲きました』
このスクーターは1983年に発売されたモデルで、テレビCMには元キャンディーズの伊藤蘭さんが起用されました。
――正解は次のページで!
●
○問題をおさらい!
正解はこちら!
○【答え】スズキ「蘭」
正解はスズキの「蘭(らん)」でした。
「蘭」は1983年にスズキが発売した原付スクーターです。
女性が乗れるソフトバイクとして、ホンダの「ロードパル」はソフィア・ローレンさん、ヤマハ発動機の「パッソル」は八千草薫さんをCMに起用しましたが、蘭のCMには“蘭つながり”で、和服姿も美しい元キャンディーズの伊藤蘭さんが出演しました。中高年の方なら、テレビCMで流れた『蘭、咲きました』のキャッチフレーズや、西口久美子さんが歌う同名の曲を覚えているのではないでしょうか。
1980年代はホンダとヤマハの小型スクーターによるシェア争いが始まり、これに巻き込まれる形でスズキも参戦します。「和製ベスパ」と呼ばれた鉄スクーター「ジェンマ」を皮切りに、エントリーモデルとして「ラブ」をリリースしたのですが、さらに女性向けに振ったモデルが「蘭」でした。「ラブ」よりも価格を下げ、車体は約10kgも軽量化し、デザインは丸みをもたせ、サイドカバーはスカートのようにタイヤを隠す形状になっています。
「蘭」は「ロードパル」や「パッソル」と同じく、女性でも扱いやすい小型・軽量のボディを持ち、シートも低くてゆったりしたものが採用されました。そのほか、飛び出し防止のためにブレーキレバーを握らないと始動できない「あんしんスタート機能」も備えています。グレードは「DX」(6万9,000円)、「スーパーDX」(7万9,000円)、「カスタム」(8万9,000円)の3つをそろえていましたが、昭和のクルマ的なグレード名は自動車メーカーでもあるスズキらしいところです。
春に発売した「蘭」に続き、スズキは同年秋に和名スクーター第2弾として「薔薇」(ばら)を追加します。こちらはさらに女性向けに特化し、「蘭」よりも小型・軽量化して、価格も6万9,800円に抑えていました。
このモデルが登場したためか、「蘭」はデザインもエンジンも刷新し、ロゴやカタログも洋風の「RAN」にした新型にモデルチェンジしたのですが、知っている人は相当なマニアです。
余談ですが、「蘭」や「薔薇」はヤマハの「パッソル」のように、女性や主婦をターゲットとした“ママチャリ”ならぬ“ママ原チャリ”でしたので、当時の男子高校生たちの間では超不人気なモデルでした。サイドカバーのロゴも“漢字で花の名前”ですから、まず指名買いはしません。クラスメートが乗っていたら『お母さんか姉ちゃんのを借りているのだろう』とバカにされていたものです。
ところが、筆者の知人は軽量な「パッソル」の車体に「ジョグ」エンジンを載せる「パッジョグ」と同じ手法で、庭で朽ちていた母親の「蘭」と、解体屋からタダ同然で買ってきた「薔薇」のニコイチ車両に、当時最強だった「ハイ」のエンジンを移植した激速の魔改造マシン「ハイバラン」を作ったそうです。
彼は90ccのエンジンを積んだ「ジョグ」も持っていたのですが、誰もがバカにする“ママ原チャリ”で最新スクーターをブッチギる方が楽しかったのだとか。もしかしたら、今も日本のどこかで同様の怪しい「薔薇」や「蘭」が咲いているかもしれませんね?
それでは、次回もお楽しみに!
編集部おすすめ