NTTドコモは5月9日、2024年度の決算について説明会を開いた。営業収益は対前年731億円(1.2%)増の6兆2131億円、営業利益は顧客基盤の獲得と通信品質の向上に向けた投資の影響を受け同1239億円(10.8%)減の1兆205億円と、2024年度通期は増収減益となった。


スマートライフ事業と法人事業が増収をけん引

セグメント別に見ると、金融・決済を含むスマートライフ事業や法人ソリューション事業といった成長分野のオーガニック成長が増収をけん引した。コンシューマ通信はモバイル通信サービス収入や固定通信の収入が減少。

代表取締役社長の前田義晃氏は「成長分野ではスマートライフ事業を中心に増益を果たしたが、コンシューマ通信事業の減益や他社対抗コストの戦略的強化、PSTN(Public Switched Telephone Networks:公衆交換電話網)マイグレーションなど2024年固有要因の影響を受け全体として減益となった」と振り返った。

前田社長「2025年度を底として増益に転じる」

2025年度の業績予想は、スマートライフ事業や法人事業など成長分野の引き続きの拡大により対前年1229億円(2.0%)増の6兆3360億円と増収の見通し。営業利益は将来成長のための先行投資の継続と後年度負担軽減策により同545億円(5.3%)減の9660億円を見込んでおり、増収減益の予想。法人事業においては営業収益2兆円を計画している。

前田氏は「成長分野がコンシューマ通信事業の減益をカバーできる成長戦略が整いつつある。2025年度は成長に向けた変革の年と位置付け、マーケティング戦略とネットワークの抜本的な構造改革を実施する。2025年度を底とし、26年度には大幅な増益に転じ、27年度には23年度の水準以上の成長に軌道を乗せる」と展望を語った。

同日発表があったように、ドコモグループのNTTコミュニケーションズとNTTコムウェアはそれぞれNTTドコモビジネスおよびNTTドコモソリューションズへと社名を変更する。ドコモらしい赤色を基調とした新たなブランドロゴには、NTTのダイナミックループが追加された。

「今後もドコモグループの力を結集することで新しい価値を創造し、豊かな社会の実現に貢献していきたい」(前田氏)

2025年度の重点施策:コンシューマ事業

コンシューマ事業ではさらなる成長に向け、多様なビジネスパートナーのバリューとドコモグループならではのバリューを組み合わせて提供する。
その具体的施策の一つが、4月に発表した新料金プラン「ドコモMAX」「ドコモポイ活MAX」だ。

さらにはリアルとデジタルを融合したスポーツやライブ体験、dカードおよびd払いを中心とした金融サービス、マーケティングソリューションの拡大を通じて、顧客基盤の拡大とスマートライフ収益の拡大を目指す。

新料金プランのドコモMAXは、これまでの価格と通信量によるプランの価値提供から、付加価値を乗せたプランへとシフトしている。長期利用による割引や国際ローミングに加え、DAZNやAmazonとのコラボレーションによりスポーツ視聴者、EC利用者、動画配信サービス利用者からの支持拡大を狙う。今後は映画・ドラマやアイドル、アニメなど多様なバリューを拡大する方針だという。

コンシューマ向けのスマートライフ事業の成長をけん引するのが、dカードなどの金融事業だ。特に2024年11月に提供を開始したdカードPLATINUMは会員数が60万人を超え、収益拡大に貢献している。

2025年度の重点施策:法人事業

2024年度の法人事業は、DX(デジタルトランスフォーメーション)需要の取り込みにより特に大企業向けのソリューションが2桁成長を果たした。しかし中堅・中小企業向けサービスはモバイル通信の競争激化により想定を下回った。

2025年度はNTTグループの通信インフラやIOWNを活用したICTプラットフォームを活用し、競争力のある新サービスの投入を目指す。今後も市場の成長が見込まれるIoT、AI、デジタルBPO、地域や中小企業のDXを中心に、パートナーとの体制強化により2兆円の収益達成を計画している。

IoTとデジタルBPOは、主に大企業向けに統合的なサービス提供を強化。
3月に提供開始した「ローカル5Gサービス TypeD」は、ドコモのネットワークを強要することで冗長性と高い保守性を低コストで提供する。また、デジタルBPOはトランスコスモスとの戦略的事業提携に基づき、社会課題である労働人口の減少に対応する「Digital BPOソリューション」を提供開始している。

地域と中小企業のDXでは、モバイルとソリューションの組み合わせを深化させることで、顧客基盤を強化するという。業界特化のソリューションの一例である病院DXでは、モバイルデバイスや音声サービスにAIなどをパッケージ化して提供し、院内の業務効率化と患者体験の向上を支援する。

中堅・中小企業向けに展開する統合型ネットワークサービス「docomo business RINK」は9月に、ネットワーク上の脅威検知・遮断などキャリアならではのセキュリティガバナンス機能を追加してアップデートを図る予定とのことだ。

2025年度の重点施策:ネットワーク事業

「2024年度は通信サービス品質の向上を最重要課題として取り組んだ」(前田氏)そうで、全国の主要都市や主要な鉄道導線を中心に5G基地局数を20%拡大した。その結果、主要都市中心部において平均スループットが約20%向上。主要鉄道導線の平均スループットは約30%向上している。SNS上での不満の声は40%減少したとのことだ。

前田氏は「私自身も定期的に山手線に乗車し品質測定を行ったが、各駅を中心に以前よりも高いスループットの通信を確認している。お客様の体感品質は着実に向上している」と説明した。

2025年度もさらなる体感品質向上に向け、引き続きSub6と4G周波数帯による5G展開を加速する。
具体的な施策として、MMU導入拡大による体感品質の向上や、最新型基地局装置への置き換えと新規拡大、HPUE(NSA / SA)のスマートフォン対応を強化する。

同社はネットワーク構築の組織体制、業務プロセス、調達プロセスをそれぞれ見直すことで、2026年度までに5G基地局1局当たりの投資金額を2023年度比で20%削減する計画だ。こうした取り組みにより、2027年度にはネットワーク関連投資を2025年度比で約300億円削減する構え。
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