KDDIは5月14日、2025年3月期(2024年4月~2025年3月)の決算を発表し記者説明会を開いた。売上高は対前年1640億円(2.8%)増の5兆9180億円、営業利益は同1571億円(16.3%)増の1兆1187億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は478億円(7.5%)増の6857億円と、増収増益となった。
中期経営戦略の最終年度に向けて順調な進捗を示した。

代表取締役社長 CEOの松田浩路氏は「お客様からの期待や信頼は、本業である通信にかかっていると思っている。ここにしっかりこだわって、サービスの土台としてブレずに磨き上げていくことを誓う」と話していた。

高品質な通信基盤に加えて、auショップやローソンなどの顧客接点から集まるデータを活用することで、同社が「ハイパーパーソナライゼーション」と呼ぶ価値提供につなげる。これにより、コンシューマーには個人個人に最適なライフサポートを提案し、企業には各社のビジネスのオペレーティングモデル変革を支援するサービスを提供するとのことだ。

25年度3月期は通信ARPU収入と注力領域が成長

事業セグメント別に営業利益を見ると、グループMVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)収入と楽天ローミング収入は対前年132億円減。マルチブランドの通信ARPU(Average Revenue Per User:ユーザー当たりの平均売上高)収入は同60億円増、金融・エネルギーは同177億円増、ローソンの持分法利益は同194億円増、ビジネスセグメントは同154億円の増益となった。

2024年3月期はミャンマー通信事業のリース債権引当があり、総合して1571億円の増益であるが、その一時的な影響を除いても381億円の増益だ。

5Gを軸に通信ARPU収入が増益基調を継続。金融・エネルギー事業が対前年比2桁の増益を達成し、ローソンにおけるPontaパスのシナジーが顕在化するなど、注力領域が順調に成長した。ビジネスセグメントは対前年比7.4%の増益。特に通信に付加価値を乗せて提供するグロース領域が成長をけん引した。

26年3月期はさらなる増収増益を目指す

同社は2026年度3月期(2025年4月~2026年3月)について、サテライトグロース戦略を推進し増収増益を目指す。売上高は対前年7.0%増の6兆3300億円、営業利益は同5.3%増の1兆1780億円、当期利益は同9.1%増の7480億円を計画している。

パーソナルセグメントでは高品質な通信を軸に、スマートフォンと衛星の直接通信サービス「au Starlink Direct」や、混雑時に優先的に多くの無線リソースを割り当てる「au 5G Fast lane」、海外で利用可能な「au 海外放題」など、付加価値提供によるLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)向上で事業成長を図る。

Pontaパスはローソンとの連携を強化したことで順調に会員数が増加。2024年10月の提供開始以降で21万会員が純増している。今後はauバリューリンクプランなど通信とのセットプランや、特典などローソンとのさらなる連携により、2026年3月期に100万会員の純増を目指す。

金融事業は対前年20.7%増となる406億円の営業利益を記録した。さらなる成長に向けて、auマネ活プラン+など通信とのセットプランにより顧客基盤を拡大させるという。

ビジネスセグメントは収益性の高い通信を基盤とし、付加価値を提供するグロース領域へリソースをシフトし成長につなげる。デジタル基盤の市場成長率が8%であるのに対し、同社は対前年17%の事業成長を遂げた。

2026年3月期はグロース領域の提供価値拡大により、20%超の成長となる1兆5900億円の売上高を目指す。具体的には、IoTとデータセンターで計500億円の増収に加え、セキュリティやStarlink、ドローンといった新たな収益基盤で900億円の増収を見込んでいる。


IoT関連サービスでは、製品やサービスと通信を一体で提供する「ConnectIN(コネクティン)」の展開に加え、建機などのモビリティ、ガス・水道などインフラまで対象領域を拡大する。データセンター事業においては2031年3月期に2000億円の売上を目標とし基盤構築をグローバルで進める。

4000億円を上限とする自己株式取得を発表

松田氏はDPS(Dividend Per Share:1株当たり配当金)が7.5円増となる80円を目指すことを発表した。また、発行済株式総数の5%を超える自己株式の消却を決議したという。加えて、総額4000億円を上限とした自己株式の取得と、うち3500億円を上限とする自己株式公開買付けについても決議したとのことだ。

「中期経営戦略の最終年度となる2026年度3月期は、EPS(Earnings Per Share:1株当たり純利益)が2019年3月期対比で1.5倍を実現する。これは新しい経営体制でも継承する揺るぎない意思。事業成長と株主還元の両立によりEPS1.5倍を実現したい」(松田氏)
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