「50歳は役が変わるタイミングなのかなと」「役の幅を広げられたら」

DMM TVオリジナルドラマ『ドンケツ』で主人公のロケマサこと沢田政寿を演じた伊藤英明にインタビュー。本作での挑戦を振り返るとともに、今の仕事に対する思いや、これまでの転機、そして50代を迎える心境を聞いた。

たーし氏による同名の極道漫画を原作とするこのドラマは、敵対組織の事務所にロケットランチャーをぶちこんで以来、「ロケマサ(ロケットランチャーのマサ)」の異名で恐れられているヤクザ・沢田政寿の物語。
自分勝手でワガママな超クズ男だが、なぜか男たちが惚れてしまう不思議な魅力を持つロケマサが、仲間と敵を同時に引き寄せ、修羅の国・北九州を舞台に日本全国を巻き込む一大抗争が勃発する。

――ロケマサ役において特に苦労したことを教えてください。

いつも自分のリアルな気持ちで演技していて、キャラを演じるのがあまり得意ではないので、「この声で合っているのか」「この歩き方で合っているのか」「この方言で合っているのか」などとすごく悩み、原作があるからこその難しさがありました。

――これまでも『海猿』シリーズや『KAPPEI カッペイ』など人気漫画原作の作品を経験されていますが、それらとは違う難しさがあったのでしょうか。

『海猿』も『KAPPEI カッペイ』も原作とは違うオリジナルの部分がありましたが、今回はキャラをそのまましっかり守って演じることが求められ、それは初めての経験でした。

――キャラになりきって演じていかがでしたか?

「このしゃべり方で合っているのか」などずっと不安でしたが、監督やプロデューサーと「こういう作品にしよう」と目指していたものがちゃんと出ていて、少し自信が持てましたし、お気に入りの作品になりました。

――30年以上芸能界で活動されていますが、今の仕事に対する思いをお聞かせください。

自分の苦手な分野や、やってこなかったことにも挑戦していきたいなと、今はそういう思いがあります。

――ロケマサ役も新しい挑戦に?

そうですね。今年50歳になるのですが、演じる役が変わってくるタイミングなのかなと思っていて、今まではリアルを大切に演じていましたが、違うアプローチで演じることによって役の幅を広げられたらいいなと。キャラになりきるというのは難しさを感じましたが、どこか心地よさもありました。

――ロケマサの筋肉隆々とした肉体を再現するために15キロ増の肉体改造をされるなど、役作りへの情熱をものすごく感じますが、その原動力を教えてください。


制作陣や共演者の皆さんの思いがようやくわかってきたというか、責任感が出てきたのだと思います。

――責任感が芽生えた転機などがあったのでしょうか。

結婚や子供ができたことが大きいと思います。そこで人としての責任感が芽生え、仕事にもつながったのかなと。結婚生活においても子育てにおいても、自分勝手はよくないじゃないですか。目的をしっかり持って、みんなでそこに向かっていくことが大事だと思うようになりました。

――家庭においても仕事においても、責任感や協調性が高まったのですね。

そうですね。例えば、セリフをうまく言うことも大事ですけど、このシーンでみんなが何を大切にしているのか、視聴者は何を期待しているのか、そういうことを想像して演じる大切さを『ドンケツ』でも学び、それが俳優としての深みにもつながっていくのではないかなと。深みのある俳優になりたいです。

恐怖感を抱いていた“老い”が楽しみだと思えるようになったワケ

――より深みのある俳優になるために、今後どうしていこうと考えていますか?

日本の作品も大事にしながら、海外のクリエイターたちとも仕事をしていきたいと考えています。20年以上お世話になったA-teamの社長を務めていた小笠原明男さんが僕のキャリアを作ってくれたのですが、小笠原さんが亡くなって、そのときに自分でキャリアを作っていきたいと思ったので、しっかり自分で考えながら進んでいけたら。
それが小笠原さんへの恩返しだなと思っています。

――自分でキャリアを作っていきたいという思いから個人事務所を立ち上げたのでしょうか。

立ち上げるというか、A-team時代から持っていた個人事務所ですが、自分自身で責任を持って仕事に向き合っている姿を見てもらいたいなと思っています。

――独立によってさらに責任感を持つように?

そうですね。責任感もそうですし、周りの皆さんのおかげで活動できているという、感謝の気持ちも増しています。

――8月3日に50歳を迎えられますが、どんな50代を思い描いていますか?

50代以降が楽しみですね。年老いていくことに恐怖感がありましたが、これからどういう人たちに出会って、どういう年の取り方をしていくのか、すごく楽しみになりました。

――なぜ恐怖感が取り払われて楽しみだと思えるようになったのでしょうか。

誰でも衰えていくことは怖いと思いますが、老化に抗うのではなく、それがあるから深みが出たり、役の幅が広がっていくんだと、そういう風に捉えられるようになりました。

――最後にファンの方たちにメッセージをお願いします。

これからもいろいろな役に挑戦していくので、引き続き応援お願いします。そして、『ドンケツ』は、笑いあり感動ありの新しい極道エンターテインメントで、原作を読んでいない方でも楽しめる作品になっているので、ぜひたくさんの方に見ていただきたいです。


■伊藤英明
1975年8月3日生まれ、岐阜県出身。1993年に「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」で準グランプリを受賞し、翌年にCMでデビュー。1997年にドラマ『デッサン』で俳優として始動。2004年に主演映画『海猿 ウミザル』が大ヒットし、翌年に『海猿 EVOLUTION』として連続ドラマになり、映画もシリーズ化された。2015年、映画『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』で第38回日本アカデミー賞優秀助演男優賞、第69回毎日映画コンクール男優助演賞を受賞。『ドアマン』(2020)や『TOKYO VICE』(2022)など海外作品にも出演している。

■DMM TVオリジナルドラマ「ドンケツ」
出演:伊藤英明/安田顕 金子ノブアキ 今井翼 青柳翔 久保田悠来 葉山奨之 早乙女太一 浅香航大/高橋克典 三宅健/眞島秀和 永島敏行 柳葉敏郎(特別出演) 寺島進
DMM TV独占配信中(YouTubeにて1話無料公開中/全6話/毎週金曜最新話配信)

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