ナチュラルローソンで販売されているチルド弁当のごはんが、2025年3月から全品「もち麦入り」に変更された。従来は五穀米入りを使用していたが、なぜこのタイミングでもち麦に切り替えたのか。
変更の裏には、「消費者の“ウェルビーイング”をサポートしたい」という強い思いと、ニーズの変化に寄り添う戦略があったようだ。商品本部で働く山﨑敦史さんに詳しい話をうかがった。
○■ナチュラルローソン、コンセプトは「あなたらしい毎日のために」
――まず、山﨑さんのご所属や普段の業務について教えてください。
ナチュラルローソンの商品本部に所属しておりまして、「米飯(べいはん)」と呼ばれるカテゴリーを担当しています。
ーー「米飯」とは……?
お弁当・おにぎり・お寿司の3つを指す、いわゆる業界用語かもしれませんね(笑)。他に、調理パンやサンドイッチの実務も担当しています。
部内ではチーム制を採用していて、私のチームでは惣菜やデザート、店舗内で焼いているインストアベーカリー商品も見ています。商品とは少し離れますが、製造工場から店舗へ商品を届けるための配送業務にも一部関わっていますね。
――ナチュラルローソン全体としてのブランドコンセプトについて、改めて教えていただけますか?
以前は「美と健康」をテーマに、主に女性のお客様に向けた商品展開をしていましたが、近年はそのコンセプトを少し進化させて、より包括的な視点で「あなたらしい毎日のために」というテーマに再定義しています。
ナチュラルローソンにご来店いただくお客様は6割が女性ですが、我々は心身ともに健康な状態、いわゆる“ウェルビーイング”を実現したいと願うすべての人をサポートしたいと考えています。
○■食物繊維は白米の約25倍! もち麦の健康価値
――それでは今回、チルド弁当のごはんを「もち麦入り」に変更した背景についてうかがえますか?
単に原材料を入れ替えるという話ではなく、お客様の健康をより具体的にサポートしたいという思いからスタートしました。
これまでのチルド弁当では「白米+五穀米」を使用していましたが、今年の3月からは「白米+もち麦」に全品切り替えています。
五穀米ももちろん健康に良い要素があり、栄養バランスが取れた食材ですが、お客様にとっての“分かりやすさ”という観点で、より親しみやすく、明確な健康イメージのある「もち麦」に切り替えることで、訴求力がさらに高まると考えました。
――もち麦にしたことで、具体的にどのような健康効果やメリットがあるのでしょう?
最大の特徴は、食物繊維の含有量です。メーカーさんから出してもらったデータを見ると、もち麦に含まれる食物繊維は、白米の約25倍にもなるとのことでした。また、「もち麦」という名前にもあるように、もっちりとした食感があり、食べ応えや満足感もアップします。
五穀米のときも「五穀米入り」と表示してはいたのですが、栄養素の詳細が分かりづらく、訴求が難しい面もありました。でも、ナチュラルローソンのお客様は、「もち麦=健康によい」「食物繊維が豊富」という認識を持っておられる場合も多く、もち麦のほうが訴求のしやすさや需要促進につながると感じました。
――もち麦への変更は以前から検討されていたんですか?
そうですね。もともと「もち麦入りおにぎり」はナチュラルローソンの定番商品として展開していたんです。なので、チルド弁当に取り入れることにも開発チームの抵抗感はまったくありませんでした。
毎週の開発会議の中で、「お弁当にももち麦を使ってみよう」という声が自然と上がってきた感じです。おにぎりだけでなく、お弁当でももち麦を使うことで、よりもち麦のイメージアップもできるのかな、とも思いました。
○■高タンパク・低糖質、プラントベースへの注力も目指す
――ちなみに、もち麦と白米の配分は……?
そこは企業秘密になってしまうのですが……もち麦よりも白米のほうが高価なので、もち麦の比率を多くすればするほど安く済むんです。ですが、それだと食感的にも美味しさが損なわれてしまいます。
やっぱりお客様には、美味しいものを召し上がっていただきたいですし、美味しいからまた買おうと思っていただけるはずなので、何回も試食を重ねて、この比率が一番美味しいなと思えるところに落ち着きました。実際は、白米のほうが比率としては高くなっています。
――いくら健康的な食事でも、美味しくないと続かないですよね。
そうですね。自分たちが商品開発に携わったものは特に、ずっとお客様に支持いただきたい、愛されたいと思います。「安かろう、不味かろう」では満足いただけません。
「美味しくないけど、健康にはいい」といった開発はしたくないですし、「やっぱりナチュラルローソンって、美味しいものがたくさんあるよね」と思っていただきたいので、健康を訴求しつつ、美味しいお弁当を作っていきたいですね。
――それでは最後に、今後の目標や将来の展望などがあれば教えてください。
アンケートなどを見ると、食物繊維だけではなく、タンパク質や糖質制限に関する関心も高いことがわかっています。今回はもち麦で食物繊維にフォーカスしましたが、今後はさらにタンパク質や糖質制限に訴求した商品にチャレンジしていきたいな、と思っています。
我々は動物性の食材を使わず、植物性由来の食材だけで作る「プラントベースフード」にも取り組んでいるのですが、まだまだ日本は海外と比べ、需要が多くありません。ただし、海外のブームはいずれ日本にも自ずと上陸するとも考えています。
現在はまだ間口が狭くても、「ナチュラルローソンに行けばプラントベースの商品があるよね」というふうに認識していただくために、さらにリニューアルを続けて、より美味しいプラントベースブードを出していきたいと思っています。
猿川佑 さるかわゆう この著者の記事一覧はこちら