日本製鉄は5月30日、「高炉プロセスから電炉プロセスへの転換」投資について、GX(グリーントランスフォーメーション)推進法に基づく政府支援事業に採択されたことを受け、実行を決定したと発表した。

総投資額は8687億円、政府による支援上限額は2514億円にのぼる。
2028年度から2029年度にかけて、九州・瀬戸内・山口の3製鉄所において、電炉の新設・増設・改造を進める計画だ。

○取り組みの概要

九州製鉄所(八幡地区)で電炉1基を新設、瀬戸内製鉄所(広畑地区)で1基を増設、山口製鉄所(周南地区)では既存の電炉を改造・再稼働する。3拠点合計で年間約290万トンの生産能力を見込んでおり、高級鋼製造への対応に加え、エネルギーや物流関連を含む広範なインフラ整備も実施される。

高炉から電炉への転換は、CO2排出量の削減効果が期待される一方、多額の初期投資や原材料・電力コストの増加といった課題も伴う。日本製鉄は、民間企業がGX投資を行うには、投資回収の予見性が不可欠だとしており、GXスチールの価値に対して正当な評価と対価が与えられる市場の整備が必要だと強調している。

同社は、経済産業省主催の「GX推進のためのグリーン鉄研究会」において、GXスチールの市場形成・拡大に向けた官民一体の施策を提案してきた。また、今年2月に閣議決定された「GX2040ビジョン」においても、こうした方針が盛り込まれており、同社は早期の具体化を強く要望している。

○今後の展望

さらに日本製鉄は、日本鉄鋼連盟が策定した「グリーンスチールに関するガイドライン」に基づき、worldsteel(世界鉄鋼協会)のガイドライン第1版の発行やISOなどの国際機構に対するGXスチールの理解活動に積極的に参画。GXスチールの信頼性と国際的な競争力を高めるための環境整備にも力を入れている。

同社は今後も、「大型電炉による高級鋼製造」「水素還元鉄の製造」「高炉水素還元」という3つの革新技術の開発と実装を進め、2050年カーボンニュートラルの実現を目指すとしている。
編集部おすすめ