キリンビールは6月17日より、果実のフードロス削減・農家支援を実現するプロジェクトの第3弾として『キリン 氷結mottainai 尾花沢すいか』を期間限定で販売する。関係者は「商品の売上1本につき1円を山形県の果実農家の支援に活用します」とアピールする。


○■どんな氷結になった?

『キリン 氷結mottainai 尾花沢すいか』は、美味しいのに規格に合わなかったため捨てられる予定だった山形特産 尾花沢すいかを使用したもの。350ml缶と500ml缶で展開する。価格はオープンで、通常の「キリン 氷結」シリーズ(350mlの実勢価格は141円程度)より少しだけ高くなる見込み。

筆者も試飲の機会を得た。缶を開栓すると、尾花沢すいかの新鮮な香りが広がる。グラスに注ぐと、液色は透明。関係者によれば「果汁をストレートに使っており、色をつけることはしなかった」とのことだ。飲んでみると、なるほど尾花沢すいからしい上品な甘さ。当初の試作品はメロン、あるいは瓜のような味に寄ってしまったそうだが、完成品は、尾花沢すいかの瑞々しさが感じられた。

キリンビールでは2024年5月に「氷結mottainaiプロジェクト」を発足させると、色味やサイズなどの規格から外れた“モッタイナイ果実”をフレーバーに使用したチューハイ『キリン 氷結mottainai 浜なし』『キリン 氷結mottainai ぽんかん』の販売を通して果実農家を支援してきた。キリンビール マーケティング部の山岡加菜氏は「おかげさまで、浜なし、ぽんかん、合わせて55トンのフードロス削減を実現し、果実農家さんには1,170万円の寄付金を送ることができました」と誇る

尾花沢すいかは、シャリ感のあるジューシーな味わいとすっきりした甘さが特徴のブランドすいか。例年7月~8月に出荷の最盛期を迎える。
キリンビールでは6月に『キリン 氷結mottainai 尾花沢すいか』を販売することで、尾花沢すいかの味わいを消費者に広く知ってもらい、青果の購入にもつなげたいとしている。

数値目標について、山岡氏は「尾花沢すいかの約16トンのフードロス削減を目指します。販売数量は約21万ケース(350ml×24本換算)、尾花沢すいかの農家に寄付する金額の目標は約480万円です」と宣言する。

ちなみに今回の新商品は、全農山形・JAからの“逆提案”によって生まれたものだという。キリンビール マーケティング部の佐藤良子氏は「第3弾にして初めてのケースでした。全国には、まだまだ“モッタイナイ果実”がたくさんあるんだな、ということを実感し、プロジェクトを継続することの必要性を強く感じました」とする。

JAみちのく村山 営農販売部の志村秀弥氏は、その経緯について「コンビニで『キリン 氷結mottainai 浜なし』を見かけて、飲んでみたらとても美味しくて。でも何がmottainaiなのか分からず、調べたところ今回のプロジェクトの趣旨を知りました。尾花沢すいかも、毎年300~400トンが廃棄されています。そこでキリンビールさんに、尾花沢すいかを使った新商品を提案しました」と明かす。

JAみちのく村山 すいか生産部会の大山功氏も「コラボの話を聞いたとき、とても嬉しく思いました。有名な『キリン 氷結』ブランドを通して、尾花沢すいかの魅力を全国の皆さんに届けられるのがありがたい。
また捨てられる予定だった尾花沢すいかが美味しいチューハイに生まれ変わるということで、どこか救われる気持ちもありました」と話す。

完成した『キリン 氷結mottainai 尾花沢すいか』を試飲して、志村氏は「尾花沢すいからしい、キリッとした甘味がしっかり出ています。すいかの味を感じることができるチューハイになっており、とても美味しいです」、大山氏は「自分が育てたすいかが商品化されて、本当に感動的です」と笑顔で話す。また佐藤氏は「尾花沢すいかの甘さを実現した、シャリシャリ感がある氷結になったと思います」。山岡氏は「JAさん、農家さんと一緒に作った商品なので、ようやく乾杯できるタイミングとなり非常に嬉しく思います。山形でいただいた尾花沢すいかの美味しさが、氷結らしく再現できたのではないかと思います」と言葉に自信を込めた。

近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。
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