大学進学にかかる費用は家計への負担が大きく、奨学金の利用を検討しているご家庭は多いと思います。中でも返済の必要がない「給付型奨学金」は、経済的に厳しい家庭にとって心強い制度です。
しかし、年収要件や資産要件などがあり、利用できる対象者は限られています。

本記事では、給付型奨学金の対象となる世帯年収の目安を家族構成ごとにわかりやすい表にしていますのでご確認ください。さらに、2025年度から拡充される多子世帯への大学授業料無償化についても紹介します。

給付型奨学金が受けられる要件

国は高等教育の就学支援新制度として、「給付型奨学金」と「入学金・授業料の減額・免除」の二つのサポートを行っています。「給付型奨学金」の支給は日本学生支援機構が行い、「入学金・授業料の減額・免除」は国または自治体の確認を受けた大学等が行います。

ここでは、「給付型奨学金」が受給できる世帯の収入要件やその他の要件を解説します。

<世帯収入要件>
・住民税非課税世帯
・住民税非課税世帯に準ずる世帯
・多子世帯は年収約600万円まで

具体的な世帯年収を以下の表に表しました。
給付型奨学金の対象世帯の年収上限額の目安

年収の目安は家族構成や所得の種類、各種保険料の支払い状況などによっても変わります。個別に確認したい場合は、JASSOの「進学資金シミュレーター」をご利用ください。

給付型奨学金には、収入以外にも要件があるので、ここで確認しておきましょう。

<資産要件>
申込日時点の学生本人と生計維持者の資産額の合計が5,000万円未満であること
●資産の対象となるもの
現金、預貯金、有価証券、投資信託、投資用資産として保有する金・銀など
●資産の対象とならないもの
土地・建物等の不動産、満期・解約前の保険の掛け金、貯蓄型生命保険、学資保険など
<学業要件>
下記のいずれかを満たすこと(高校3年生の場合)
・高校1年から申込時までの評定平均値が3.5以上(5段階評価)
・学修意欲を有することが、文書、面談等により確認できること
※大学生の場合は条件が異なります。

学業要件については、奨学金の支給が決定した後も学修意欲と成果を毎年確認し、基準を満たさないと支援廃止となります。
2025年度から基準が厳しくなっているので注意しましょう。
給付型奨学金の支給額

給付型奨学金はいくら支給されるのか、国公立・私立、自宅通学・自宅外通学別に表にしました。金額は月額の支給額です。

大学・短期大学・専修学校(専門課程)

給付奨学金の支給が決定すると、正規の卒業時期まで、所得に基づく区分に応じた金額が毎月振り込まれます。
2025年度から多子世帯への大学授業料無償化が拡充

2025年度から、子どもが3人以上いる世帯(多子世帯)への「高等教育の就学支援新制度」が拡充されました。多子世帯は所得制限なしで、授業料・入学金が一定額まで無償となります。給付型奨学金は現行制度のまま、年収約600万円以下の世帯に対しての支援となります。

<支援対象>
扶養する子どもが3人以上の世帯

3人以上を同時に扶養している間は、第1子から支援対象となります。第1子が就職するなどして扶養から外れ、扶養する子どもの数が2人になった場合は、多子世帯に該当しなくなり、支援は終了します。毎年12月31日時点の扶養する子どもの数が基準となります。

<所得に関する要件>
2025年度から「授業料等減免」は所得制限なし
「給付型奨学金」は年収約600万円以下の世帯が対象
<支援金額>
【国公立大学】
入学金: 約28万円
授業料: 約54万円
【私立大学】
入学金: 約26万円
授業料: 約70万円
※給付型奨学金は所得の区分に応じた支給額となります。
<対象となる大学等>
一定の要件を満たすことが確認された大学、短期大学、高等専門学校(4・5年生)、専門学校
文部科学省ホームページの「高等教育の修学支援新制度の対象機関」リストで確認できます。


2025年度からの支援拡充イメージ

※給付型奨学金の1/4支援は、多子世帯のみ対象となり、授業料等減免の1/4支援は私立学校理工農系学部等の学生が対象となります。

多子世帯に該当すれば、「授業料等減免」は所得に関係なく満額支援となり、「給付型奨学金」はこれまでと変わらず、世帯収入による区分に応じた支援となります。

例えば、年収380万円以上600万円以下の多子世帯であれば、授業料・入学金は満額支援、給付型奨学金は支援上限額の1/4の支援が受けられます。
まとめ

今年度から多子世帯への大学等の就学支援が拡充しました。授業料等減免の所得制限がなくなり、支援額も住民税非課税世帯と同じ満額が支援されます。一方、給付型奨学金は、低所得世帯の学生の生活面での支援を目的としているため、収入要件は残り、多子世帯の場合は年収約600万円以下の世帯に限られます。

給付型奨学金の対象とならない世帯は、貸与型の奨学金を検討してみましょう。貸与型には無利子のものと有利子のものがあり、こちらも所得による制限があります。日本学生支援機構のホームページにある「進学資金シミュレーター」で活用できる奨学金制度を確認できます。

また、奨学金は日本学生支援機構の奨学金以外にも多様な選択肢があります。地方自治体や民間の企業、大学が独自に設けている奨学金もあります。早めに情報収集をして、活用できそうな制度を見つけておくと安心ですね。


石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。ブログ「ファイナンシャルプランナーみかりこのお金の勉強をするブログ」も運営中! この著者の記事一覧はこちら
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