藤井聡太棋聖に杉本和陽六段が挑むヒューリック杯第96期棋聖戦五番勝負(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)は、第2局が6月18日(水)に兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」で行われました。対局の結果、四間飛車対居飛車の対抗形から抜け出した藤井棋聖が87手で勝利。
快勝で開幕2連勝とし、防衛に王手をかけました。
○居飛車穴熊をめぐる攻防

開幕戦では三間飛車+ミレニアム囲いの意欲的な作戦を用いていた杉本六段。後手番で迎えた本局では四間飛車+美濃囲いのオーソドックスな布陣を採用しました。藤井棋聖が急戦含みに突いた3筋の歩に反応した格好で、居飛車としては安全に穴熊に組めれば満足、振り飛車はうまく右辺を争点にして大駒のさばきを実現したいという構図に進みました。

杉本六段が角道を開けて中盤戦がスタート。対する藤井棋聖は右銀のうまい活用でペースをつかみます。角交換を防ぐように上がった銀はその後ぐるりと転回して8筋へと移動。軽快なリズムで玉側の端攻めに参加して、いつの間にか局面の主役の座を手にしていました。杉本六段としては用意していた異筋の歩打ち(38手目)が不発に終わった形です。

○描かれた藤井曲線

自然な指し回しで優位に立った藤井棋聖の指し手が冴えわたります。左辺で築いた9筋の拠点を活かそうと慌てるのでなく、じっと右桂の活用で振り飛車の動きを待ったのが勝ちを急がない王者の指し回しでした。角を押さえこまれそうな杉本六段が暴れるよりないのを見越しており、こうなると穴熊でこそないものの居飛車理想の押さえこみ策が成功しています。


終局時刻は18時10分、最後は形勢の開きを認めた杉本六段の投了により藤井棋聖の開幕2連勝が決定、6連覇に向け大きく前進しました。熱戦となった開幕局とは対照的に、本局はいわゆる「藤井曲線」が描かれる完勝譜に。敗れた杉本六段は「昼食休憩のところが分岐点だった。(以降は)チャンスらしいチャンスがなかった」と肩を落としました。杉本六段の先手で指される注目の第3局は6月30日(月)に千葉県木更津市の「龍宮城スパホテル三日月」で行われます。

水留啓(将棋情報局)
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