日本製鉄は6月18日、米United States Steel(USスチール)との戦略的パートナーシップが正式に成立したと発表した。これにより、米鉄鋼業において10万人超の雇用が維持される見通しだ。
○提携の概要
今回の提携により、ペンシルバニア州やインディアナ州、アーカンソー州、ミネソタ州、アラバマ州を含むUSスチールの全製造拠点で、過去に例のない規模の設備投資が計画されており、10万人を超える雇用の維持・創出が見込まれている。
USスチールは、今後も社名および本社所在地であるペンシルバニア州ピッツバーグを維持し、米国内における一貫した鉄鋼生産体制を継続する方針だ。
○各社コメント
日本製鉄の会長兼CEOである橋本英二氏は、トランプ大統領の決断によってパートナーシップが実現したことに喜びを示すとともに、米日両国の関係者やステークホルダーの支援に感謝を述べた。その上で、USスチールの経営開始を機に、大規模な投資や先端技術の導入を通じて、両社の総力で世界トップの鉄鋼メーカーを目指すと強調した。
また、日本製鉄の副会長でありUSスチールの取締役会長も務める森高弘氏は、1年半にわたりUSスチールの関係者や地域コミュニティとの対話を重ねてきたことを振り返り、協力と支援への謝意を表明。今回の提携が、米国の鉄鋼業や労働者、国家安全保障の未来を守るというトランプ大統領の方針とも合致しているとし、USスチールのさらなる成長に期待を寄せた。
USスチールのデイビッド・ブリットCEOは、今回の提携を「米国、地域社会、鉄鋼業にとって歴史的な日」と位置づけ、トランプ大統領のリーダーシップにより、労働者にとって理想的な環境が実現したと述べた。今後もピッツバーグに本拠を置きながら、日本製鉄との連携によって変革的な投資や先端技術の導入を推進し、雇用創出とともにさらなる企業成長を図るとしていている。
○具体的な内容
両社は今回、合併契約に基づく取引を完了し、あわせて米国政府との間で国家安全保障協定(NSA)を締結した。これに伴い、USスチールは米国政府に対して黄金株1株を発行している。
NSAでは、米国政府と両社が国家安全保障を確保するための重要な措置に合意している。主な内容として、日本製鉄は2028年までにUSスチールへ約110億ドルを投資し、この中には2028年以降に完了予定のグリーンフィールド・プロジェクトへの初期投資も含まれる。
また、USスチールは米国法人として存続し、本社をピッツバーグに維持する。さらに、取締役の過半数および経営陣の主要メンバー(CEO含む)は米国籍とし、米国内での鉄鋼生産・供給能力の維持も義務付けられる。加えて、日本製鉄はUSスチールが米国法に基づいて実施する通商措置に干渉しないことにも合意した。
また、NSAおよび黄金株により、米国政府にはUSスチールに対する一定の権限が付与されている。
たとえば、独立取締役1名の選任権を有するほか、設備投資の削減、社名や本店所在地の変更、法人登記の海外移転、生産・雇用の国外移転、競合企業の買収、既存製造拠点の閉鎖・休止などの重要事項については、大統領またはその指名する者の同意が必要となる。これにより、米国の国家安全保障を守りながら、日本製鉄のUS スチールにおける経営の自由度および採算性を確保することが可能だとしている。
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