日本製鉄は6月15日と16日の2日間、大阪・関西万博会場内「EXPOメッセ」および真言宗御室派総本山仁和寺(京都市、以下 仁和寺)で開催された国際交流イベント「おいしさでつながる世界」に協賛し、日本製鉄が推進する「海の森づくりプロジェクト」を紹介した。
国際交流イベント「おいしさでつながる世界」 

今回のイベントは、官民が連携し、食のサステナビリティも追求した新しいおいしさを発信することを目的にしたもので、日本製鉄以外にも、全日本・食学会、キッコーマン、農林水産省、京都府、日本貿易振興機構、日本食品海外プロモーションセンターが参画し、これらの企業や団体のメンバーで構成される「食のサステナビリティの追求と最高峰の食の提案」実行委員会が主催した。


「おいしさでつながる世界」では、2日間を通して、伝統的な調理技術と味の継承のほか、サステナブルな視点や被災地復興への貢献、GI制度(地理的表示保護制度)への取り組みなども含め、世界的な課題であり、万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を食の観点から考えた。

6月15日の大阪・関西万博会場では、世界のトップシェフが、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとしたトークセッションを行い、食のサステナビリティを実現する日本発の食材についての情報を発信。

6月16日には、世界文化遺産にも登録されている京都・仁和寺を会場として、「食文化の未来」をテーマに、海外の3名、京都料亭の8名、計11名のシェフが創作料理を披露した。

海外シェフは、日本のシェフとペアで創作料理に取り組み、米国のミシュラン3つ星店「Single Thread(シングルスレッド)」のオーナーシェフ カイル・コノートン氏は「菊乃井」4代目 村田知晴氏と、フランスのミシュラン3つ星店「Mirazur(ミラズール)」のオーナーシェフ マウロ・コラグレコ氏は「木乃婦」3代目 髙橋拓児氏と、タイのミシュラン2つ星店「Baan Tepa(バーン・テバ)」のオーナーシェフ チェダリー・デバカム=タム氏は「たん熊北店」4代目 栗栖熊一氏と共同で創作料理に取り組み、国際交流を図っている。

そのほか日本からは、「魚三楼」10代目 中村元紀氏、「萬亀楼」11代目 小西雄大氏、「京都吉兆」4代目 徳岡尚之氏、「瓢亭」15代目 髙橋義弘氏、「魚三楼」10代目 荒木裕一朗氏が創作料理作りに参加した。

なお、シェフ選定および料理総監督は、京都の料亭 菊乃井の三代目主人 村田吉弘氏が行っている。

6月16日のイベントでは、開会にあたり主催者を代表してキッコーマン 代表取締役社長 CEO 中野祥三郎氏が、「日本の特色のある食材を使い、世界でも最先端といえるシェフの豊かな創造力と伝統を継承しながら、新しいものを取り入れて進化する日本料理の技が織りなす新しい美味しさを味わっていただければ幸いです」と挨拶した。

また村田吉弘氏は、参加した日本のシェフを、「彼らが次の時代の日本料理を牽引していく」と紹介したあと、「厨房の中には40~50人の若い人がおり、こんな大掛かりのイベントはなかなかできません。日本中でこれができるのは、京都だけだと自負しています」と語った。

今回の創作料理の食材には、GI制度登録品、京都の旬の食材、被災地食材のほか、サステナビリティという視点も設けられ、環境や海洋保全の観点から、日本製鉄が取り組む「海の森づくりプロジェクト」の実施先の1つである、北海道鹿部町 浜口浜の真昆布が使用された。

「海の森づくりプロジェクト」とは

日本製鉄は、鉄の生産過程で生成される副産物「鉄鋼スラグ」を使って、磯焼けの原因の一つとされる海水中の鉄分不足の解消に有効な「ビバリーユニット」を開発し、それを海岸に設置することで、全国の藻場を再生・回復する「海の森づくりプロジェクト」に2004年から取り組んでいる。藻場とは、海草や海藻が群生している沿岸域を指す。


同社の調査では、「ビバリーユニット」を設置した北海道増毛町の海岸では、昆布をはじめとした海藻類が繁茂し、施肥した実験区海域の単位面積当たりの昆布生育量は、ビバリーユニットを埋設しなかった海域と比べて100倍以上に及んだという。かつて石灰藻に覆われ海底一面が真っ白な磯焼け状態であった増毛町の海は、現在もユニット設置部から沖合に向かってコンブなどの海藻類が豊かに生育し、その面積は拡大している。

同社では増毛町以外のも北海道の泊村、古平町、鹿部町、宮城県の女川町、三重県の志摩市など、20カ所以上で「海の森づくりプロジェクト」に取り組んでいる。

また海藻類は、炭素を吸収し貯えることが知られており、貯えられた炭素はブルーカーボンと呼ばれている。そのため藻場の再生・回復プロジェクトは、水産業の活性化だけでなく、日本が2050年までに実現することを目指すカーボンニュートラルにも貢献している

イベントに参加した日本製鉄 常務執行役員 グリーン・トランスフォーメーション推進本部長 折橋英治氏は、「もともと海の森づくりという取り組みは、海の環境改善につながるということで始めましたが、後からCO2を吸収する効果があることがわかり、2つ効果を同時に発揮するということで、弊社でも一生懸命取り組んでいます。われわれの取り組みは、地元の漁業組合さんの理解を得ながら実施していますが、口コミで海藻が再生していることが広がり、『うちにも導入してほしい』という話をいただいています。まだ道半ばですが、今回のようなイベントを通して、『海の森づくりプロジェクト』の認知が広がってほしいと思っています」と語った。
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