投資信託について調べている時、「ETF」「上場投資信託」という言葉を目にしたことがあるかもしれません。投資信託とETFの違いはわかりにくいですが、最も大きく異なるのは「上場しているか、していないか」という点です。
■投資信託、ETFとは? 共通点や異なる点
まずは、投資信託とETFについて、それぞれの特徴や共通点、違いを確認してみましょう。
<投資信託とは>
投資信託とは、たくさんの投資家から集めたお金をひとつにまとめ、運用の専門家(ファンドマネージャー)が代わりに株や債券などに分散投資してくれる金融商品です。プロが運用してくれるため、自分で銘柄を選んだり、頻繁に売買したりする必要がないのが大きな特徴です。
また、投資信託は「ファンド」とも呼ばれ、複数の投資家がお金を出し合って運用するため、少額でも投資できます。証券会社によっては月100円や1,000円から購入可能です。
<ETFとは>
ETFとは「Exchange Traded Funds」の略で、日本語では「上場投資信託」と言います。投資信託の一種ですが、証券取引所に上場しており、株式のように市場で売買できるのが特徴です。
日本のETFの多くは、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)、S&P500など、特定の指数に連動するよう運用されています。また、連動する指数は、国内株式や海外株式のみならず、債券やREIT(不動産投資信託)、コモディティ(商品)など幅広い資産が対象となっています。
ETFは信託報酬(運用・管理のためのコスト)が比較的低く、リアルタイムで価格が変動するため、タイミングを見て売買できるのも魅力です。投資信託よりも自由度が高く、コストを抑えたい人や中長期で資産形成を目指す人にも向いています。
<投資信託とETFの共通点、違い>
・共通点
ETFは投資信託の一種であるため、投資信託との共通点もあります。たとえば、投資信託もETFも、どちらも複数の企業や国、資産(株式や債券など)に分散投資しているという点です。そのため、一つの企業が大きな損害を受けたとしても、資産全体においては小さな影響に抑えられるのです。
また、運用を専門家に任せられるところも共通点です。特に、アクティブ運用の商品のように市場指数を上回ることを目標とする運用には、高い知識や分析能力が求められます。それらを、スキルを持つプロに任せられるのは大きなメリットでしょう。
さらに、どちらも少額から運用可能です。投資信託は100円から購入できる証券会社もあり、ETFは数千円~数万円程度から購入可能と、どちらも手の届きやすい金額から始められます。
・異なる点
投資信託とETFは、どちらも複数の株式や債券などに分散投資できる商品で、運用のプロが資産を管理している点では共通していますが、仕組みや特徴にはいくつか違いがあります。
1.運用方法
運用手法には大きく分けて「インデックス運用」と「アクティブ運用」の2種類があります。インデックス運用は、たとえばTOPIXなどの市場全体の動きを示す指数と同じような値動きを目指す運用方法です。これに対してアクティブ運用は、運用の専門家が市場や企業の分析を行い、厳選した銘柄に投資することで、市場平均を上回る成果を狙うスタイルです。
投資信託には、インデックス型とアクティブ型の両方のタイプが幅広く用意されており、目的に応じた選択が可能です。一方、ETFはインデックス運用が主流で、アクティブ型のETFは現在のところごく少数にとどまっています。
2.購入できる場所
投資信託は銀行や証券会社、郵便局などの「販売会社」を通じて購入します。一方、ETFは株式と同じように証券取引所に上場しており、証券会社の口座を使って市場で直接売買します。
3.商品数
商品数を見てみると、投資信託が約6,000本あるのに対し、ETFは約300本程度と数が限られています。その分、ETFはシンプルで指数連動型が中心です。
4.購入価格の決まり方
投資信託とETFは、購入価格の決まり方やその価格の決まるタイミングが異なります。投資信託は1日1回、取引の申込終了後に「基準価額」が計算され、その価格で購入や換金が行われます。そのため、投資家は当日の基準価額がわからない状況で取引を行うのです。
一方、ETFは株式と同様に取引時間内は市場価格が常に変動しており、注文を出した時点の価格で取引が成立します。
5.かかるコスト
投資信託は購入時手数料と保有中の信託報酬、信託財産留保額がかかります。ただし、近年では購入時手数料のかからない「ノーロード」の商品や信託財産留保額の差し引かれないものも増えています。
ETFは売買委託手数料と信託報酬がかかりますが、一般的に、信託報酬は投資信託より低く抑えられています。売買委託手数料とは、購入時と売却時に証券会社へ支払う手数料のことで、証券会社によってはかからない場合もあります。
6.分配金
分配金については、投資信託にはファンドごとに「受取型」と「再投資型」があります。受取型は、分配金として現金を口座で受け取り、再投資型は分配金として現金を受け取るのではなく同じ投資信託を追加購入します。
一方、ETFには受取型や再投資型の選択肢はなく、保有資産から得た配当などを元に年1~4回程度分配金が支払われる設計が一般的です。
■投資信託とETFのメリット、デメリット
次に、投資信託とETFのメリットとデメリットを見てみましょう。
<投資信託のメリット>
・身近な金融機関で購入できる
投資信託は、銀行・証券会社・郵便局・保険会社など、多くの金融機関で取り扱われています。普段使っている銀行やネットバンキングからも手軽に購入できるため、「投資は初めて」という人でも安心して始めやすいのがメリットです。
・積立投資できる金融機関が多い
多くの金融機関では、毎月決まった金額を自動で投資する「積立投資」に対応しています。100円や1,000円など少額でスタートできるところも多く、家計に負担をかけずに長期的な資産形成が可能です。
・種類が豊富にそろっている
国内外の株式、債券、不動産、バランス型など、投資信託には非常に多くの種類があります。リスクを抑えたい人向けのファンドや、成長性を重視した株式中心のファンドなど、自分の目的や投資スタイルに合わせて選べるのが魅力です。
・分配金を再投資しやすい
投資信託には、ETFとは違って分配金を自動で再投資する仕組みがあるため、わざわざ自分で再投資をする手間がかかりません。
<投資信託のデメリット>
・信託報酬がETFと比べて高め
投資信託はETFより信託報酬が高くなる傾向にあります。通常の投資信託は、運用会社と販売会社、信託銀行に信託報酬を支払います。これに対し、ETFは取引所で直接売買されるため販売会社に信託報酬を支払う必要がなく、その分コストが抑えられるのです。
・リアルタイムの取引ができない
投資信託は、注文を出した時点では「いくらで買えるか」「いくらで売れるか」がわかりません。基準価額は1日1回、取引の申込終了後に算出されるため、注文時にはその価格が未確定です。この仕組みは「ブラインド方式」と呼ばれ、価格が事前にわからないことに不安を感じる人もいます。
<ETFのメリット>
・信託報酬が投資信託と比べて低い
ETFは販売会社を介さずに取引するため、投資信託よりも信託報酬を抑えられる傾向にあります。信託報酬は投資信託の保有中、ずっとかかり続けるものですので、運用期間が長くなるほど投資収益に大きな影響を与えます。
・リアルタイムで取引できる
ETFはリアルタイムで値動きを確認しながら取引できます。そのため、投資信託のように「想定外の価格で売買してしまった」というリスクを避けられます。
<ETFのデメリット>
・積立投資できる金融機関が少ない
ETFは基本的に、株式と同じように市場で売買される商品です。
・銀行では取引できず証券口座の開設が必要
ETFは証券取引所に上場しているため、株式と同じく「証券口座」がないと取引できません。つまり、銀行の窓口やネットバンキングでは購入できず、証券会社で口座を開設し、マイナンバー提出や本人確認などの手続きを行う必要があります。投資初心者にとっては、これが最初のハードルとなることもあります。
・分配金の再投資に手間がかかる
ETFには、投資信託のように、分配金を自動的に同じファンドに再投資する仕組み(再投資型)はありません。そのため、受け取った分配金を使って自分で買い足す必要があり、手間がかかります。
■自分に向いているのはどっち?
投資信託とETFにはそれぞれメリットがあり、どちらを選べばいいか迷う人もいるかもしれません。最後に、投資信託とETFはどのような人に向いているのかご紹介します。
<投資信託に向いている人>
投資信託は、初心者に適した金融商品です。積立投資を利用すれば、売買タイミングに悩むこともありませんし、銀行など身近な金融機関で購入できるため気軽にスタートできます。
また、投資信託は種類が豊富なため、多くの中から自分に合う商品を見つけたい人にもおすすめです。
<ETFに向いている人>
一方、市場の値動きを見ながらリアルタイムで取引したい人には、ETFが向いています。投資信託は、注文を出しても、実際の取引価格は翌営業日までわかりません。そのため、自分で売買のタイミングを決めたい人にはETFがおすすめです。
また、コストを抑えて運用したい人にもETFが向いています。短期的には小さく見える信託報酬の差が、長期的には運用成果に大きな影響を及ぼすこともあるからです。同じような投資対象・投資方針の商品であれば、投資信託よりETFを選ぶと効率的な資産形成が期待できます。
■初心者には投資信託がおすすめ
ETFは証券取引所に上場しているため、株式と同じように売買できます。投資信託との違いをよく理解し、ご自身の投資スタイルに合うようであれば購入を検討してみましょう。ただし、投資初心者がどちらか迷った場合には、少額で購入でき、積立もしやすい投資信託がおすすめです。まずは負担のない小さな額で投資を始め、慣れてきたら少しずつ金額を増やしてみましょう。
武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら