製品評価技術基盤機構(NITE)は6月26日、「リチウムイオン電池搭載製品」の火災事故を防ぐ3つのポイントを公開した。

○年別・製品別の事故発生件数

近年の「リチウムイオン電池搭載製品」の需要増加や多様化の影響を受けて、事故も年々増加傾向にある。
製品別では「モバイルバッテリー」の事故が最も多く、2024年は2022年比で2倍以上に増加している。これは、2023年5月に新型コロナウィルス感染症が5類感染症になったことで行動範囲が広がったことや、防災用品としての需要が高まっていること等が要因にあると考えられる。

○月別の事故発生件数

「月別の事故発生件数」と過去5年の「東京都の平均気温」の推移を比較したグラフをみると、気温の上昇とともに事故発生件数は増加し、8月に気温と事故発生件数がともにピークを迎えている。これは、リチウムイオン電池が高温環境にさらされることで電池内部の温度が上昇し、異常発熱や発火などのリスクが高まるためと考えられる。

以下、NITEが公開した、リチウムイオン電池搭載製品の火災事故を防ぐ3つのポイントを紹介する。
○連絡先が確かなメーカーや販売店から購入する

不具合や事故発生後に事業者の補償を受けられない、事業者と連絡が取れないなどの事態が発生している。販売元の情報を確認し、サポートが日本語に対応しているかどうか、連絡先(電話番号や住所)が実在するかを確認することが推奨されている。
○リコール情報の確認を

リコール対象のリチウムイオン電池搭載製品による事故は2020年から2024年までの5年間で363件発生している。リコール対象製品かどうかは、事業者、消費者庁、経済産業省のホームページ等で確認することができる。製品の製造・輸入事業者のホームページなどをこまめにチェックし、リコール情報を確認したい。万が一、所有している製品がリコール対象であった場合には、不具合が生じていなくても直ちに使用を中止し、購入先や製造・輸入事業者へ確認・相談を、とのこと。

安価な「非純正バッテリー」のリスクを理解する


安価で入手しやすい「非純正バッテリー」で火災を伴う事故が多く発生している。
これらの製品には、設計に問題があり異常発生時に安全保護装置が作動しない場合があるほか、品質管理が不十分なため、通常の使用であっても事故に至る場合があるという。また、事故が発生した際に、事業者の対応や保証が受けられない場合がある。非純正バッテリーには"高リスク"のものが潜んでいることを理解する必要がある。
○高温下に放置するなどして熱を与えない

リチウムイオン電池は、高温環境下では熱の影響で異常な反応が起きて発熱・破裂・発火するおそれがある。そのため、直射日光の当たる場所や暑い日の車内など、高温下に放置しないことが重要とされている。

○強い衝撃を与えない

リチウムイオン電池は外部からの衝撃が加わると内部ショートが生じ、発煙や発火につながる。また、膨張を元に戻そうとして強い力が加わったことで異常発熱して出火した事故も発生している。地面に落としたり無理な力を加えたりしないよう、注意する必要がある。

○異常を感じたらすぐに充電・使用を中止する

充電・使用時は時々様子を見て、異常を発見した場合は、充電および使用を中止し、購入先や製造・輸入事業者に相談することが求められる。異常の例としては、充電ができない、充電中に以前よりも熱くなる、落とす、ぶつけるなどで強い衝撃を与え、一部が変形している、不意に電源が切れるといった症状が挙げられる。

また、2025年3月にNITEが行った「モバイルバッテリー」でのヒヤリハット・事故の経験についてのアンケート調査では、「膨らんだ(変形した)」が最多だった。膨らんだリチウムイオン電池の内部には可燃性ガスがたまっている。
このような状態の電池に、強い衝撃や外力が加わって内部部品が破損した場合や、充電しすぎた場合に、電池に負荷がかかると、熱が発生するなどして内部にたまっていた可燃性ガスが発火するおそれがあり、特に注意が必要となる。

○発火した場合の対処方法

万が一発火した場合、煙や炎が噴き出している時は絶対に近寄らないことが大切。モバイルバッテリーのようにポケットに入る小型サイズのものであれば、火花が収まったら、大量の水を掛けることで消火することができる。消火後は、可能な限り水没させた状態で、消防機関へ通報を。リチウムイオン電池は消火後も熱をもっているため、火が消えた後に冷却しないまま可燃物に接触させると新たな火災につながるおそれがある。上記のような対処が困難であると判断される場合は、身の安全の確保を第一とし、119番通報を行う必要がある。
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