マーキュリーは6月30日、中古マンションの「方位と階数」が資産価値に与える影響について調査し、その結果を発表した。調査は、首都圏・関西・東海で2016年から2024年に流通した中古マンションを対象とし、Realnetマンションサマリの中古マンションデータを基に算出した。

○真南向きが最も低い結果に

全方位の中でも特に優位性が高いとされる南向き住戸だが、中古マンションとして市場に出た際の売却価格と新築分譲時の価格とを比較した際、どのような価格値上がり率の傾向が見られるのだろうか。今回、方位に加えて階数の要素も加味して詳しく調査した。

上の表は、19階建て以下の物件(タワーマンション以外)の所在階と方位別の値上がり率を示したものとなる。同一の階で最も高い値上がり率だった方位がオレンジ色の網掛け、逆に最も低かった値上がり率の方位に青色の網掛けをしている。これを見ると、各階で最も値上がり率が高い方位は北向き、北東向き、北西向きが大多数を占め、最も値上がり率が低い方位はほぼ真南向きという結果になった。
○タワーマンションの低層階も同様

上の表は、20階建て以上の物件(タワーマンション)に限定して19階以下の住戸の所在階と方位別の平均値上がり率を示したものとなる。一般物件(タワーマンション以外)と比べると全体的に値上がり率は高い(高騰している)ものの、各階ごとの値上がり率を方位別で比べると、南向きよりも北向きのほうが値上がり率は高い傾向にある。

タワーマンションでも北向き優位は変わらず


上記の表は、住戸の20階から39階までの所在階と方位別の値上がり率を示したものとなる。所在階が20階以上になるため、すべてがタワーマンションの住戸ということになる。1階から19階ほどではないものの、北、北西、北東向きの優位は変わらず、真南をメインに南西、南東向きの部屋で青の網掛け(各所在階で最も値上がり率が低い)が目立つ。
○上層階は向きとの相関は低い

上記の表は、住戸の40階以上の所在階と方位別の値上がり率を示したものとなる。所在階が40階以上になると、タワーマンションの上層階や最上階住戸が多く供給戸数自体も限られることから個別物件の影響をより多く受けるため、方位と値上がり率の関連性は薄まる傾向にあるようだ。

○北向きの部屋の値上がり率が高い理由

先の表を階数帯別にまとめると、まず一般物件とタワーマンション(19階以下)を比べると、どの方位でも30ポイント近く値上がり率の差があり、タワーマンションの値上がり率が総じて高いことがわかった。一方、一般物件とタワーマンション(19階以下)をそれぞれ単体で見てみると、南向きよりも北向きの方が15ポイント以上高くなっている。また、タワーマンションに限られる20~39階も、19階以下と同様、南向きよりも北向きの方が15ポイント近く高い値上がり率となっている。40~60階は南向きと北向きの差が約7ポイントと他の階数帯と比べて小さくなるが、値上がり率自体はほかの階数帯と比べて最も高くなっている。

このような結果を受け、調査では以下のように分析している。

「今回の調査で、一般物件よりタワーマンション、低層階より高層階、南向きより北向きの部屋の値上がり率が高い傾向にあることがわかった。北向きの部屋の値上がり率が高くなる理由としては、新築分譲時の価格が抑えられていることが大きいと考えられる。新築マンションのデベロッパーは新築分譲の際に条件が良く人気が高い南向きの部屋の価格を高く、人気が低くなる北向きの部屋を安く値付けする傾向にある。しかし、昨今のマンションは換気性や気密性が高く、実際に住んでみると北向きのネガが殆どないことなどもあって、中古流通すると新築時ほど方位による価格差が生じないため、結果として南向きよりも北向きの部屋の方が中古流通した際の値上がり率が高くなると考えられる。

また、新築で供給される分譲マンションは殆どの物件が基本的に南向きに建てようと計画されるため、物件の優劣という意味で南向きは玉石混交になるが、北向きを作る場合、ないし作らざるを得ない場合、この物件で北向きは売れるか、どうしたら売れるかという検討は南向きの住戸以上になされるため、北向きの住戸の方がある意味熟慮された厳選プランとも言える。加えてタワーマンション、特に都心部の物件の眺望が望める上層階では、良い眺望が必ずしも南向きに限らないことなどもあり、北向きの住戸が優位になる理由の1つと考えられる」。
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