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1990年代はネイキッドの4気筒250ccが若者に大ヒットしました。当時を知る方なら、このモデルも見覚えがあるはずですが、何か違いますよね? 大ヒットしたカワサキのクオーターではありません!
見た目はカワサキ、タンクにはSUZUKI?
このモデル、どう見てもカワサキの「バリオス」ですが、タンクにはハッキリと「SUZUKI」のマークが!
――正解は次のページで!
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○問題をおさらい!
正解はこちら!
○【答え】スズキ「GSX250FX」
正解はスズキの「GSX250FX」でした!
「GSX250FX」は2002年にスズキが発売した250ccのネイキッドモデルです。
カワサキ「バリオス」はレーサーレプリカ「ZXR250」の4気筒エンジンを搭載したネイキッドで、1991年に登場すると若者を中心に大ヒットしました。1997年にはリアサスを別体タンク付の2本ショックに変更した「バリオスⅡ」にモデルチェンジしますが、そのOEMモデルがスズキ「GSX250FX」でした。
ちなみに、「バリオス」の名称はギリシア神話に登場する名馬に由来しています。スズキの「GSX」とカワサキの「FX」という伝統的な名称を用いた“混血馬”が誕生したわけですが、エンブレムやグラフィック以外は完全に「バリオス」なので、ZXR系の高回転まで軽やかに回るエンジンやストリートで扱いやすいハンドリングなど、長所はそのまま受け継いでいます。
それまではスズキも、4気筒レプリカ「GSX-R250R」のエンジンを持つ「バンディット250/V」というネイキッドを持っていましたが、1990年代末は中型レーサーレプリカブームも終息し、二輪の販売台数が減少していた時代です。ユーザーの好みもネイキッドや大型、アメリカン、トラッカー、ビッグスクーターと細分化が進み、各メーカーは次にヒットするモデルの開発や既存ラインアップの整理、そして、さらに厳しくなる排出ガス規制の対応に追われていました。
こういった厳しい時代を乗り切るため、スズキとカワサキは2001年、双方の経営資源を補完して二輪事業の収益性を上げることを目的とした業務提携に踏み切りました。相互OEM供給は翌2002年から始まり、スズキは「バンディット250/V」の代替えとなる「GSX250FX」のほかにも、カワサキのスーパーモタード「ディートラッカー」を「250SB」という名前で販売しています。
これに対し、スクーターを持たないカワサキは、スズキから人気のビッグスクーター「スカイウェイブ250タイプS」と「アヴェニス150」のOEM供給を受け、それぞれ「エプシロン250」「エプシロン150」という名前で販売しました。
ほかにも、海外向けのオフロードモデルでは、スズキの「DR-Z125」をカワサキが「KLX125」として、カワサキの「KX65」をスズキが「RM65」として販売したのですが、こういった相互OEMだけでなく、共同開発という形で競技専用モデル(スズキ「RM-Z250」とカワサキ「KX250F」)もリリースしています。
スズキとカワサキは2007年に業務提携を解消したため、これらのOEMモデルは一代限りで姿を消しました。
国内二輪メーカー間のOEM供給は珍しいケースでしたが、1990年代末は自動車業界でも世界規模の業務提携や合併が進んだ時代です。軽自動車でもスズキはマツダと日産自動車に、ダイハツ工業はスバルにOEM供給を始めましたが、四輪メーカーでもあるスズキだからこそ、二輪でも柔軟な経営戦略を採用することができたのかもしれませんね。
それでは、次回をお楽しみに!
津原リョウ 二輪・四輪、IT、家電などの商品企画や広告・デザイン全般に従事するクリエイター。エンジンOHからON/OFFサーキット走行、長距離キャンプツーリングまでバイク遊びは一通り経験し、1950年代のBMWから最新スポーツまで数多く試乗。印象的だったバイクは「MVアグスタ F4」と「Kawasaki KX500」。 この著者の記事一覧はこちら