バイクの車名が「〇〇400」であれば中型(普通自動二輪車)免許で乗れるはずですが、中には大型免許が必要なモデルがあったのをご存じでしょうか? 例えば写真のバイクには、そういうモデルがありました。さて、このバイクの正体は?

ヒント:名車「CBX400F」のご先祖様です

絶大な人気を誇るホンダの名車「CBX400F」の先祖にあたるモデルです。


――正解は次のページで!


○問題をおさらい!

正解はこちら!

○【答え】ホンダ「ドリームCB400FOUR」

正解はホンダの「ドリームCB400FOUR」(以下、CB400FOUR)でした!

「CB400FOUR」は1974年にホンダが発売した空冷4気筒のロードスポーツで、名車「CBX400F」の先祖にあたるモデルです。現在に至るまで「ヨンフォア」の愛称で親しまれ、数々のバイクマンガにも“伝説的なマシン”をイメージさせるモデルとして登場しました。

さて、この「CB400FOUR」ですが、車名に“400”が付いているのに、普通自動二輪車免許、いわゆる中免(旧・中型限定自動二輪免許)で乗れないモデルがあるのをご存じでしょうか。中免で乗れる二輪車の排気量は400cc以下ですが、「CB400FOUR」にはそれを超えてしまう408cc版が存在します。

こんなややこしいことになった理由は、「CB400FOUR」がデビューした直後の1975年に免許制度が改正され、教習所で取得可能な二輪免許が中型までに限定されてしまったためです。これは「カミナリ族」と言われた暴走族が社会問題になっていたことに対する施策でしたが、ホンダとしては、中免で乗れない408ccの「CB400FOUR」をそのまま売るわけにもいかず、国内専用に398ccまで排気量をダウンした「CB400FOUR-I」と、さらにアップハンドル化した「CB400FOUR-II」を追加しました。

実はこの「CB400FOUR」は、もともと350ccのモデルから発展しています。当時のホンダは4ストローク多気筒エンジンで世界中のロードレースを席巻し、市販車は“ナナハン”の由来となった「CB750FOUR」を筆頭に、レース・レギュレーションに由来する排気量の「CB500FOUR」と「CB350FOUR」で4気筒ラインアップを展開しました。しかし、当時の技術では350ccの4気筒だとパフォーマンスが不足したため、排気量を408ccまで拡大した「CB400FOUR」にモデルチェンジしたというわけです。

「CB400FOUR」は排気量アップだけではなく、従来のCBシリーズとは一線を画すシャープなデサインに変更し、有機的な曲線を持つ集合マフラーや低いコンチネンタル・ハンドル、リベット打ちのシートなど、当時としては過激なカフェレーサー風スタイルが話題となりました。しかし、こういったデザインやコンセプトも若者の暴走を根絶したい警察庁からすれば気に食わなかったのか、カタログのキャッチコピーにも注文がつけられたそうです。

どうにか排気量を下げて中免問題をクリアした「CB400FOUR」ですが、それでも、走りを優先するライダーからは『2ストより重くてパンチが足りない』、スタイリングやメカニズムに惹かれた人からは『高価で手が出ない』という不満が出てしまい、大ヒットには至りませんでした。
ホンダも製造コストがかさんで採算が取れないと判断し、3年後の1977年には2気筒の「CB400T HAWK(ホーク)-Ⅱ」にバトンを渡して「CB400FOUR」の生産を終了します。

ところが、「CB400FOUR」は生産終了直後に“中免で乗れる4気筒”として注目され、現在まで中古車がプレミア価格で取引されるようになりました。

「CB400FOUR」生産終了後のホンダは2気筒のホークシリーズを発展させますが、1979年にカワサキから「Z400FX」が登場して4気筒車の人気が高まり、さすがにホークでは苦しくなります。これにこたえる形で再び4気筒の「CBX400F」が誕生したわけですが、独特のラインを描くエキゾーストパイプはかつての「CB400FOUR」を彷彿させるものでした。

また、1997年には水冷エンジンを搭載した「CB400SF」をベースとし、クラシカルなバリエーションモデルとしてヨンフォアと同名の「CB400FOUR」を発売していますが、こちらのデザインはカフェレーサーではなく、元祖“ナナハン”の金字塔「CB750FOUR」に近いテイストに仕上げました。

元祖“ヨンフォア”の「CB400FOUR」はプレミアがついていたため、比較的コンディションのよい中古車が流通しています。しかし、長い月日の間に複数のオーナーによって手が加えられ、中には398ccモデルに408ccエンジンが換装されたり、さらにひどいものはシリンダーの鋳出し(凸モールドの数字)を加工して398ccに偽装された個体もあるそうです。中型免許(普通自動二輪車免許)しか持っていない方が運転した場合、昔なら「条件違反」でしたが、現在は「無免許運転」になってしまいますのでご注意を!

それでは、次回をお楽しみに!

津原リョウ 二輪・四輪、IT、家電などの商品企画や広告・デザイン全般に従事するクリエイター。エンジンOHからON/OFFサーキット走行、長距離キャンプツーリングまでバイク遊びは一通り経験し、1950年代のBMWから最新スポーツまで数多く試乗。印象的だったバイクは「MVアグスタ F4」と「Kawasaki KX500」。 この著者の記事一覧はこちら
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