藤井聡太王位に永瀬拓矢九段が挑戦する伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦七番勝負は7月5日(土)・6日(日)に愛知県小牧市の「合掌レストラン大蔵」で開幕。対局の結果、角換わり腰掛け銀に進んだ千日手指し直し局を89手で制した藤井王位が6連覇に向け好スタートを切りました。
○夏の風物詩と千日手
7月上旬に始まる王位戦七番勝負は夏の風物詩。名古屋駅から車で30分ほどの郊外に位置する小牧市でも35度近い真夏日が待ち受けています。5月以来となった両者の対決は「千日手シリーズ」となった名人戦を受け継ぐかのような滑り出しとなりました。1日目、角換わり相早繰り銀に進んだ盤上は先手の永瀬九段が妥協する形で14時23分に千日手が成立。
首尾よく先手番を得た藤井王位は主流の角換わり腰掛け銀を採用。対して工夫を見せたのは後手の永瀬九段で、5二金型から早いタイミングで銀交換を挑んだのが前例のない研究手でした。再度の千日手が騒がれるなか、先手が打開する格好で局面が動き出します。永瀬九段が封じ手に記した端攻めの一手は中盤の勝負手。これが奏功して徐々に戦況は後手有利へと転じます。
○痛恨の読み抜けで攻守一転
永瀬九段に好調の攻めが続きます。角を切り飛ばして銀を入手、続いて歩を成り捨てたのがリズムよい手筋で、攻め合い一手勝ちが望める状況に。このシナリオを許さじと藤井王位が合わせの歩の勝負手で迫った局面が終盤のハイライトとなりました。
素直な受けで応じた永瀬九段ですが、この数手先に読み抜けがあったことを局後明らかにしました。
藤井王位の桂跳ねに対して、予定通り素直に銀を逃げると先手から歩頭に金を捨てるのが異筋の好手。永瀬九段としてはこの読みづらい手順まで網羅する必要があったことが災いしました。最終盤の予定変更とあっては速度が逆転、ここから先は藤井王位の手堅い収束を見るばかりとなりました。終局時刻は19時51分、最後は永瀬九段の投了で藤井王位の先勝が決まりました。
6連覇に向け好発進とした藤井王位は「形勢判断の難しい将棋だった」と一局を総括。藤井王位の先手番で行われる第2局は7月15日(火)・16日(水)に神戸市北区の「中の坊瑞苑」で行われます。
水留啓(将棋情報局)
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