2025年夏のボーナスの平均額は45万7,000円となり、前年より1万8,000円増えています。大手企業に絞ると99万円あまりとなり、過去最高額となっています。
ボーナスが増えたといっても、それ以上に物価が上がっている昨今、「ボーナスの手取りがあまりに少なくなっていて驚いた」という声も聞かれます。

そこで、ボーナスから引かれるものとその計算方法をわかりやすく解説し、ボーナス額面「100万円」の手取り額を計算してみます。

大手企業のボーナスの平均は約100万円

帝国データバンクの2025年夏季賞与の動向アンケートによると、正社員1人当たりのボーナスの平均支給額は45万7,000円で、前年に比べて 1万8,000円増加しています。

また、経団連が大手企業107社を対象に行った調査(1次集計)では、夏のボーナスの平均額は99万848円となりました。これは現在の方法で調査を始めた1981年以降、過去最高額です。

経団連は基本給の引き上げがボーナスにも波及したことや好調な企業収益が業績連動型のボーナスに反映されたことが高水準になった要因としています。

ボーナス100万円は、現在では大手企業の平均額になっており、企業規模によって支給額に差がある現状がうかがえます。
ボーナス100万円の手取りを計算

ここからは、ボーナスを額面100万円受け取った場合の手取り額を計算していきます。ボーナスから引かれるものは次の5つです。

<社会保険料>
・健康保険料
・介護保険料
・厚生年金保険料
・雇用保険料

<税金>
・所得税

住民税はボーナスからは引かれません。ただし、住民税はボーナスを含めた前年の所得をもとに計算するので、ここでのボーナスは翌年の住民税に反映されます。

それでは順に計算していきましょう。

計算にあたっては、次の条件を設定します。

<条件>
40歳会社員(一般企業)
扶養家族: なし
勤務地: 東京都
協会けんぽに加入
ボーナス(賞与)支給額: 100万円
社会保険料控除後の前月の給与: 40万円

※令和7年度の基準で計算
○*健康保険料

健康保険料は、標準賞与額に健康保険料率をかけて算出します。標準賞与額とは、税引き前の賞与の総額から1,000円未満を切り捨てた額です。ただし、標準賞与額には上限があります。健康保険は573万円(毎年4月1日から翌年3月31日までの賞与の累計額)が上限となり、厚生年金保険については1ヶ月あたり150万円が上限となります。

従業員負担は半分なので、2で割って保険料を求めます。

健康保険料=(標準賞与額×健康保険料率)÷2

100万円×9.91%÷2=4万9,550円

健康保険料: 4万9,550円
○*介護保険料

被保険者が40歳以上の場合は健康保険料に介護保険料が加わります。協会けんぽの場合は全国一律1.59%(2025年度)です。

介護保険料=(標準賞与額×介護保険料率)÷2

100万円×1.59%÷2=7,950円

介護保険料: 7,950円
○*厚生年金保険料

標準賞与額に厚生年金保険料率をかけて求めます。保険料率は住んでいる地域に関わらず18.3%で固定されています。従業員負担は半分になります。

厚生年金保険=(標準賞与額×厚生年金保険料率)÷2

100万円×18.3%÷2=9万1,500円

厚生年金保険料: 9万1,500円
○*雇用保険料

雇用保険料は賞与支給額に雇用保険料率をかけて求めます。
雇用保険料は従業員負担と事業主負担の割合が定められています。また、事業内容によって雇用保険料率が異なります。

2025年度の一般の事業の従業員負担の保険料率は0.55%です。

雇用保険料=賞与支給額×雇用保険料率(従業員負担)

100万円×0.55%=5,500円

雇用保険料: 5,500円
○*所得税

ボーナスから差し引かれる所得税の計算方法には次の3つがあります。

(1) 通常の場合
(2) 前月の給与(社会保険料を引いた金額)の10倍を超える賞与(社会保険料を引いた金額)を支払う場合
(3) 前月に給与の支払いがない場合

(2) (3)に当てはまらなければ、(1) 通常の計算方法になります。(2) (3)については、国税庁「No.2523 賞与に対する源泉徴収」を参照してください。

(1) 通常の場合
(賞与支給額-社会保険料)×所得税率

所得税は、1年間の所得を正確に把握したあとで決まるものなので、それまでは「源泉徴収税額表」を使って概算の所得税額を支払います。ボーナスに関しても同様に「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」にあてはめて所得税率を求め、それによって概算の所得税額を計算します。

参照: 国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和7年分)」

所得税率は、社会保険料を差し引いた前月の給与と扶養親族の数によって決まります。扶養親族の数が多くなると同じ給与でも税率が低くなる仕組みです。

社会保険料を差し引いた前月の給与が40万円で、扶養親族がいない場合の税率は14.294%となります。

前出の計算結果から社会保険料の合計額は15万4,500円となります。


(100万円-15万4,500円)×14.294%=12万855円(1円未満の端数切捨て)

所得税: 12万855円
○*手取り

100万円-15万4,500円(社会保険料)-12万855円(所得税)=72万4,645円

ボーナス額面100万円の手取りは72万4,645円となりました。

■40歳独身会社員の例(ボーナス支給額100万円)

額面に対する手取りの割合は約72%です。3割弱差し引かれていると考えると負担の大きさを感じます。
ボーナス支給額と手取り一覧表

最後に、ボーナス20万円から140万円までの手取り額を一覧表にしてご紹介します。

手取り額は、年齢や勤務地、扶養親族の数、勤務先の業種などによって異なります。手取りの目安として、ボーナス額面の70~80%程度と考えておくといいでしょう。

石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。ブログ「ファイナンシャルプランナーみかりこのお金の勉強をするブログ」も運営中! この著者の記事一覧はこちら
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