デルが6月下旬に販売を開始したゲーミングモニター「Alienware AW2725D」。27型のちょうどいいサイズでWQHD(2,560×1,440ドット)のちょうどいい解像度で、最大280Hzというちょうどいいリフレッシュレートで動作できます。
今回、Fast IPSパネルのゲーミングモニターを私用で愛用してきた筆者がサンプルをしばらく試すことができました。忙しい方向けにまとめておくと、やはり液晶とは格段に違う残像感が競技タイトルをプレイするうえで本当に強力。手に取りやすい価格帯で技術革新の恩恵が受けられるようになっていることが体感できました。
○ついに量子ドット有機ELに手が届く時代に
製品の外観を眺める前に、仕様についておさらいしておきましょう。今回見ていく「Alienware AW2725D」は、パネルに液晶ではなく有機ELを採用するゲーミングモニター。バックライトを搭載しないために発光を画素ごとに細かく制御できる点が特徴で、暗いシーンと明るいシーンを描き分ける力に優れます。構造上画面表示の応答を高速にできるため、動きの多い画面でも残像感を大幅に低減することが可能です。
この有機ELパネルに組み合わされているのが量子ドット技術。最大のメリットは色調の改善で、従来のフィルターを用いた製品よりも、赤や緑の領域で鮮やかな画面表示に対応しています。ちなみに量子ドット技術自体は有機EL専用というわけではなく、液晶パネルにも量子ドットを組み合わせた製品が多数展開されています。
もちろん有機ELには短所も存在しており、最も知られているのが画面表示の焼き付き。
圧倒的な性能で価格面のハードルをクリアできたとしても、消費者として気になるのはやはり焼き付きによる耐久力の低さ。各メーカーもこの課題を認識しており、昨今では強力なパネルリフレッシュ機能などによって焼き付きを全力で低減しようとしています。AW2725Dには制限付きの3年保証と、パネルの不輝点保障も含むプレミアムパネル交換が付帯します。
○宇宙船というか、宇宙そのものなカラーリングに
仕様についてみたところで、さっそくパッケージの様子から見ていきましょう。デルが展開するAlienwareブランドといえば「レジェンドデザイン」なる独自のデザイン哲学を製品シリーズに適用している点が特徴で、宇宙船をフィーチャーした近未来的な外観を採用しています。今回見ていくAW2725Dも同様……かと思いきや、珍しい青っぽいダークなカラーリングになっていました。製品ページによると「インターステラー インディゴ仕上げ」という名称になっているとか。
Alienwareブランドのゲーミングモニターといえば白いパッケージが採用されがちですが、濃紺に青いグラデーションをあしらった高級感のある新デザインが採用されていました。付属品には電源ケーブルに加えて映像入力用ケーブルが2種類同梱され、さらに本体に豊富に備えるUSB端子を活用できるようUSB Type-Bケーブルまで付属。
パネルは壊しやすいので手で取り出さず、組み立てたスタンドを差し込んでパッケージから引き上げるのがベター。本体重量は約4kgと27型モニターとしては一般的なので、筆者は適当なモニターアームに懸架して試用しました。
○有機ELのコントラストは衝撃的。応答速度由来のブラーはほぼ視認できない
設置もできたところで、動きの激しさで高速なリフレッシュレートや応答速度が役に立ちそうな『Apex Legends』や『VALORANT』をプレイしてみました。普段使っているFast IPSパネルのモニターも240Hz/1ms GTGでの動作に対応しているので、そこまでもたついているようには感じていませんでしたが、やはり有機ELの高速性能は別格。
0.03ms GTGという応答速度の数値は文字通り桁が違っており、残像感の少なさが明らかに違います。曲がり角から体を出してくる敵プレイヤーのシルエットをくっきり視認でき、液晶ユーザーとの対戦では不公平に思えるほど。Apex Legendsではスライディング中に画面全体を流れる景色があまりになめらかに見え、ちょっと笑ってしまうレベル。
応答速度の桁違いな高速さに加えて、画面の表示品質が暴力的に高い点も見た瞬間わかります。暗い部分では消灯して黒を表現できるために白浮きのない黒を表現可能で、液晶パネルとは構造上比較にならない高さのコントラスト比を実現。DCI-P3を99.3%カバーする色再現性を備え、量子ドットによる赤や緑の鮮やかさが圧倒的でした。
ところで、ゲームプレイ中には全く気づきませんでしたが、ゲーム以外の使用時にはパネルの保護機能が動作し、急にかくっと画面がほんの少し動いている様子も見られました。パネルにはベゼルの内側に広めの非表示部が存在しており、さらにその内側にかなり大きめの余白が存在。この範囲内で表示部を少しずつずらすことで同じ画素に同じ表示が続くことを防ぎ、焼き付きを抑止しようとしているようです。
この余白の中で微妙に表示をずらす挙動、ゲーム中はほとんど気になりませんが、ブラウザ等を注視してテキストを読んでいると目につくこともありました。加えて、よぉーく目を凝らして画面を見てみると、RGBの配置が液晶とは異なることによる紫にじみも目視できます。有機ELとはいえ27型WQHD解像度(2,560×1,440ドット)なので、スマートフォンやタブレットのように画素密度(DPI)が超高い製品の精細感をイメージしていると、そこまではDPIが高いわけではないように見えます。
○“ゲーミングモニター”としてある選択肢
ここまで「Alienware AW2725D」についてみてきた本記事。“ゲーミングモニター”なる称号に偽りなく、ゲームプレイにおける表示性能は極限まで高いことがわかりました。高速動作を重視して見えにくい色のTNパネル、優れた視野角と高いコントラスト比で画質にも優れたVAパネル、表示性能と高速さを両立しつつあったFast IPSパネルに続き、有機ELパネルでは表示性能におけるトレードオフがありません(HDRにおける大輝度シーンは多少問題になるかも)。焼き付き含む耐久性については今のところ不明ですが、保護機能の活躍に期待したいところ。
なんといってもこの量子ドット有機ELパネルを採用するゲーミングモニターを79,800円で買えてしまうというのが衝撃的。この価格帯での製品展開が進めば、高速性能や表示品質を重視するユーザーへの浸透が進んでいくのではと思います。