5人の子供を育てる父親でイクメンとして知られるタレント・つるの剛士が、子育てメソッドをまとめた著書『つるのの恩返し』(講談社)を上梓した。つるのにインタビューし、子育てで大切にしていることや育休取得後の自身の変化などを聞いた。
○育休を取得したことで「奥さんの気持ちがわかるように」
――『つるのの恩返し』の出版を決めた思いをお聞かせください。
最初お話をいただいた時は、嫌ですと言っていたんです(笑)。恥ずかしいし、自分の家庭のことを本にしたって誰も興味ないですよって。SNSでも家庭のことを普通に出していますし、改めて書籍にするなんてと思いましたが、家族と子供のおかげで今の僕があるので、50歳になるのを機に、1回家庭を振り返ってみるのもいいかなと思って、出させていただくことにしました。
――実際、家庭を振り返ってみて、いかがでしたか?
改めて、家族と子供たちのおかげ、そして、仕事の皆さんのおかげで、今の自分はここにいるんだなと、襟を正す思いでした。
――子育てにおいて大切にしていることを教えてください。
心配するより信頼することが一番だなと思っています。
――いつ頃から信頼が大事だと思うように?
僕も両親から「勉強しろ」とか言われず、のびのび育ててもらって、すごくありがたかったなと思っているので、両親の影響が大きい気がします。もちろん心配じゃないかというと嘘になりますし、特に長男の時は初めてのことばかりで心配になりましたが、僕も自分のことは自分で決めてきたので、子供を信じて見守ることが大事だと思っています。
――つるのさんは2度の育休を取得されましたが、育休を取ったことでご自身はどう変わったのでしょうか。
それまで家事に関して何もできてなかったので、家事をする立場になった時に、こういうことで怒るんだとか、いろいろ気づきがあったので、視点を変えるというのは大切だなと思いました。奥さんに対して「皿洗いやってあげるよ」とドヤ顔で言っていた自分に腹が立つというか、家事はそんなものじゃないんだよと思いました。
――家事の大変さを知ったことで家での振る舞いに変化が?
それまでも奥さんに対して「ありがとう」「お疲れさん」と言っていましたが、全部心から出てくるようになりました。自分も経験したことで奥さんの気持ちがわかるようになったというか、理解者が1人増えたというのは大きいのかなと思います。
○「育休率が何パーセントとか企業が言い出していて、まずいなと」
――近年は男性の育休取得が世の中的にも増えていますよね。
それが逆にまずいなと思っています。本質がなくなって名前だけの育休になっているなと。育休率を上げればいいというものではないので。家事ができないお父さんが家の中に入ってきたら長男が1人増えただけで、ママは大変じゃないですか。そういう家庭ばかりだと思います。
――本当の意味での育休を取らないと意味がないと。
そうです。育休の意味がなくなってしまい、むしろマイナスな感じに。イクメンと同じで、言葉だけが一人歩きしたらまずいですよと警鐘を鳴らしていましたが、危惧していた通りになっているなと感じます。
――ほかの家庭の話を聞いて、言葉だけの育休になっていると知ったのでしょうか。
世の中の流れです。育休率が何パーセントとか企業が言い出していて、まずいなと。
――どうしたら“とるだけ育休”が減ると思いますか?
育休を本当に経験した人が啓蒙していくしかないですね。取るだけじゃないよと。僕も引き続き、そういう風に発信していくつもりです。
■つるの剛士
1975年5月26日生まれ、福岡県出身。神奈川県藤沢市在住。1997年『ウルトラマンダイナ』のアスカ隊員役を好演。2008年にはバラエティ番組『クイズ! ヘキサゴンII』でユニット“羞恥心”を結成しブレイク。私生活では2男3女の父親で、芸能界初の男性育休を取得し、ベストファーザー賞を受賞。2022年には短期大学を卒業し、幼稚園教諭二種免許、保育士資格を取得。
2025年に大学のこども心理学部を卒業し、認定心理士資格のための単位をすべて取得。非常勤の幼稚園教諭としても働いている。
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