第84期順位戦B級2組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は、2回戦計12局の一斉対局が各地の対局場で行われました。このうち、東京・将棋会館で行われた羽生善治九段―三浦弘行九段の一戦は110手で羽生九段が勝利。
開幕2連勝で昇級に向け好スタートを切りました。
○新旧入り混じるクラスで

今期のB級2組は3つの昇級枠を26名で争うもの。羽生九段や谷川浩司十七世名人らレジェンドの動向に注目が集まりつつ、藤本渚六段や斎藤明日斗六段といった若手の星取りも見逃せません。さて本局、先手となった三浦九段の横歩取りの出だしに後手の羽生九段は堂々と応戦。相手の注文を拒まないスタイルは長いキャリアを通じて一貫しています。

速攻をチラつかせる先手に対し羽生九段が披露したのは、6筋に玉を上がってから左金を一段目に引く独特の受け。部分的には今年3月に服部慎一郎七段との間で指された棋聖戦で快勝を収めている形で、先手の速攻を封じながら横歩取り特有のねじり合いに持ち込みたい狙いが見て取れます。形勢が動いたのは中盤戦でのことでした。

○作戦勝ちから快勝!

ともに決定打が無いままジリジリとした間合いの計り合いが続くなか、羽生九段が52手目に見せた歩突きが落ち着いた一手。先手に有効手がないのを見越しており、三浦九段としては自然な指し手を続けていたらいつの間にか苦しくなっていた格好です。金無双で堅く囲われている羽生玉に対し、三浦玉は不安定な中住まいを強いられています。

万全の態勢を得た羽生九段は満を持して攻めを開始。
3筋に飛車角銀桂がなだれこむ集中砲火の構図が出来上がっては、流石の三浦九段をもってしても粘るのは困難でした。終局時刻は21時46分、最後は自玉の詰みを認めた三浦九段が投了。勝った羽生九段は、郷田真隆九段や久保利明九段といったベテラン勢とならんで開幕2連勝を飾っています。

水留啓(将棋情報局)
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