30年の歩みを1冊に 先輩・佐藤健とのエピソードも

6月8日に30歳を迎えた俳優の小関裕太が、約10年間を記録したアーカイブブック『Y』(ワニブックス)を7月10日に発売した。同書の発売前にインタビューを敢行し、思い入れのある章や制作秘話、俳優としてのターニングポイント、30代の展望などについて話を聞いた。

同書は、2014年から2024年までの雑誌『プラスアクト』に掲載されたインタビューと写真を抜粋・再構成し、新たな撮り下ろしや最新インタビュー、座談会を加えたボリュームのある1冊となっている。
撮り下ろしは2つのテーマで構成。スタジオでのモノクロ撮影では、ただそこに存在する「個」としての姿を映し出し、伊豆大島ロケでは大自然と向き合う姿や、等身大の旅人としての表情を収めている。

――まず、アーカイブブックの制作が決まったときの心境から教えてください。

『プラスアクト』のインタビュー企画で追ってくださっていた方が「10年間に渡ってしてきたインタビューを、1つの本にしてみませんか?」と提案してくださったんです。30歳という節目でしたし、光栄なことだなって思ったので「ぜひお願いします」という気持ちでした。

――208ページとボリュームのある1冊になっていますが、アイデアを出した部分はあるのでしょうか。

座談会ですね。1st写真集のときにお世話になった方々と、当時のことを語り合いたかったんです。実は、1st写真集を撮ったときはまだ10代だったので、お酒が飲めなかったんですよ。大分に日本一の夕日を見に行くっていう企画をしていたので、夜は皆さん大分の焼酎にカボスを絞ったハイボールを飲まれていて、飲む度にグラスの中にカボスが増えていくのを見ていて「大人っていいな」と思っていました。僕は写真集に載せる予定の絵を描いていたりしたんですが「そろそろ眠いので……」と一足先に寝ましたね(笑)。その後も飲み続ける大人たちがすごく羨ましく見えたので「カボスの焼酎ハイボールを飲みながら座談会をしたいです」とお願いして、かなえていただきました。


――大人になったことを実感しますね。ちなみに、これまでのインタビューを読み返して、恥ずかしいなと感じたことはありましたか?

先輩の佐藤健さんから「現場でこういうことを言われた」っていうことを、結構そのまんま語っている部分があって。おそらくうれしかったので、話したい気持ちが強かったんだろうなって思うんですけど、かなり事細かに「こういうことがうれしかった」と書いてあったので、少し恥ずかしかったです(笑)

――アーカイブブックは「旅」がテーマになっていると聞きました。伊豆大島での撮影はいかがでしたか?

編集の方がすごくグルメなので、ご飯はどれもおいしかったです。旅のしおりも作ってくださっていて、その中にちゃんと食事の時間も組み込まれていました。海鮮はもちろんなんですけど、地元の人が行く定食屋さんもすごくおいしくて。30代後半から40代くらいの方が経営されているお店が多くて、そういう人たちと話す中で「この島を盛り上げたい」っていう気持ちを感じられて、すごくすてきだなって思いましたね。撮影では、裏砂漠という黒い砂漠地帯にも行ったんですけど、まるで地球じゃない別の星に来たような不思議な体験ができました。10年前と同じカメラマンさんが撮ってくれたのですが、当時は持っていなかったドローンの免許を取得されていたので、引きのカットが撮れたんです。そういった進化も含めて、すごく印象的な撮影になりました。

――今回は約10年間を記録したアーカイブブックとのことですが、芸歴は22年です。これまでの芸能活動を振り返って、ターニングポイントだったと感じる出来事はありますか?

やはり初主演舞台(『FROGS』)ですね。
ダンスも歌もある舞台で、僕にとっては挑戦の連続でした。うまくいかないことも多くて「俳優はやめたほうがいいのかも」と思ったくらいです。そんなとき、でも、様々なお仕事をしている中で「お芝居ができなかったことがこれだけ悔しいっていうことは、自分にとってお芝居は大切なもので、もう少し頑張りたい自分がいるのかもしれない、もっと深く集中してやってみよう」と思えたことがターニングポイントでした。それ以降、毎回意志を持って作品と対峙できているので、あのときの悔しさは結構ポイントだったなと思います。

――アーカイブ本に収録されているインタビューでは「ダメ出しが好き」と言われていました。

ダメ出しはうれしいですね。でも「こういう想いで演じてきました」ってちゃんと対抗します(笑)。最終的に目指しているゴールは一緒だと思うので、そこに辿り着くためのディスカッションは惜しみません。ぜひダメ出ししてほしいです。

――現場でダメ出しされること自体減ってきているのでは?

減っているかもしれないです。なので、自分自身でダメ出しすることが多いかも。最近放送されたドラマで、とある場面が演じたまんま使われていてすごく怖くなったので、見直したんです。
3回見て、やっと「大丈夫だな」って思えました。いずれにせよ、ダメ出しされにくくなっているので、こうやって自分自身に厳しくなるしかないです。

20代は「本当に怒涛の旅でした」 30代の抱負も語る

――俳優として大切にしている軸についても教えてください。

「ワクワクすること」ですかね。10代の頃から変わってないと思います。もちろん、20代と30代では選ぶものも変わってくるし、単純にイコールではないんですけど、今も昔も、自分がワクワクすることを誰かと共有したい、共感したいっていう気持ちが根っこにあります。この22年間は、本当に変化が目まぐるしかったので、考えを1つにまとめるのは難しいんですが、楽しいからこそ続けてこられたんだと思っています。

――そんな中で、さまざまな人と関わってきたと思います。

そうですね。現場で出会うすべて方々から影響を受けています。いい意味でも悪い意味でも「この人みたいになりたい」「この人みたいにはなりたくない」っていう両方があって、それによって自分の価値観の形成につながっているなって感じます。

――30歳になった今、20代を振り返ってどう思われますか?

撮影現場をはしごした20代だったと思います。
ある種、旅のような感じで、バラエティやドラマなどいろいろな現場を行き来して、それぞれ違うスタイルで臨まないと成り立たない。本当に怒涛の旅でした。

――最後に、30代に突入した今、描かれているビジョンを教えてください。

「余白のある、余裕のある男性になりたい」と思っています。そして、40歳になったときに「これを大切にしてきました」って胸を張って言えるような人になりたい。そのために、30代の10年間をどう生きるかを考えてるところです。まだアバウトですけど、そういった未来を描きながら、楽しく過ごしていけたらいいなと思っています。

■小関裕太
1995年6月8日生まれ、東京都出身。子役として芸能活動をスタート。その後、ミュージカルや舞台、様々なドラマや映画に出演。最近の出演作はドラマ『大奥』(フジテレビ/24年)、『不適切にもほどがある!』(TBS/24年)、『素晴らしき哉、先生!』(ABCテレビ/24年)、『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS/24年)、2025年も『御曹司に恋はムズすぎる』(カンテレ・フジテレビ)、『いつか、ヒーロー』(ABCテレビ)、『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ)、『ひとりでしにたい』(NHK)に出演。

ヘアメイク:堀川知佳 スタイリスト:吉本知嗣
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