映画『ババンババンバンバンパイア』でバンパイアの兄弟

吉沢亮が主演を務める映画『ババンババンバンバンパイア』は、奥嶋ひろまさ氏による同名コミックを実写映画化。銭湯で住み込みのアルバイトとして働く450歳のバンパイア・森蘭丸(吉沢)が、至高の味わいである「18歳童貞の血」を求め、銭湯のひとり息子・李仁(板垣李光人)の成長と純血を見守る“童貞喪失阻止作戦”を描く。

今回は森蘭丸を演じた吉沢と、蘭丸の因縁の相手でもある兄・森長可を演じた眞栄田郷敦にインタビュー。
バンパイア役という非日常の設定ながら、素直になれない兄弟同士の関係性もあわせて注目の本作。映画『東京リベンジャーズ』(21・23)以来の再タッグの印象やコメディ作品への思い、演じる上でのこだわりについて語ってもらった。

○吉沢亮「髪の長さはミリ単位で調整」バンパイア役で細部へのこだわりも

――今回、お二人はバンパイアという珍しい役どころを演じています。最初に“バンパイア役”と聞いたとき、どんな印象を持ちましたか?

吉沢:これまでバンパイア作品にはあまり触れてこなかったので、正直、特別なイメージはなかったんです。漫画は好きでよく読むので、「銀が苦手」「日光に当たると危ない」みたいな、ごく一般的な知識があったくらいで。ただ、改めて考えると日本の作品でバンパイアを扱うものって意外と多くない印象なので、今回の作品は新鮮なものになるんじゃないかと思いました。

眞栄田:僕も、小さい頃に一度だけバンパイアの作品を観た記憶があるくらいでした。今回の役は、ただの“バンパイア設定”というより「信長様に仕えていた」「武将だった」といった背景の方を大切に演じました。バンパイアらしさについては、メイクさんたちがしっかり作り込んでくれたので、僕自身はそのベースに乗っていくような感覚でした。

――衣装やヘアメイクもかなりインパクトがありました。特にお気に入りのポイントや「これは大変だった!」という部分があれば教えてください。

眞栄田:耳は毎回つけていたんですが、造形のクオリティが本当に高くて驚きました。
あと、爪ですね。長い爪のままだと合間にスマホを持つのも一苦労で、撮影中は何をするにも大変だった記憶があります。

吉沢:ビジュアルで原作にどれだけ近づけるかは、かなり意識しました。ただ、原作に寄せれば良いものでもなくて、僕が蘭丸の姿をしたときにしっくり来ることが大事だと思っていたので、メイクさんと何度も相談して、衣装合わせも何回も行いました。ビジュアルには本当にこだわって臨みました。

――髪型にも強いこだわりがあったそうですね。

吉沢:特に髪の長さについては細かくオーダーさせてもらいました。前髪が重い分には良いけれども後ろはあまり長く見えない方がいいとか、ミリ単位の微調整も現場でお願いしていました。蘭丸の髪の長さが、ただの“ファッション的なロン毛”に見えるのは違うので、そこが難しい塩梅で。だからこそ細部まで丁寧に仕上げていきました。

○眞栄田郷敦「吉沢さんのコメディが好き」新たな挑戦と互いの芝居への信頼

――本作のオファーを受けたときの印象はいかがでしたか?

吉沢:監督の浜崎慎治さんとは、『一度死んでみた』(20)という作品でご一緒して以来、2度目になります。そのときから、監督が作り出す世界観がすごく愛おしくて本当に好きだと感じていて。
そんな浜崎監督の作品で主演としてお声がけいただいたので「ぜひやらせてください」とお受けしました。

眞栄田:僕はコメディ作品にあまり出演したことがなかったので、正直「大丈夫かな」と不安もありました。でも吉沢さんのコメディが本当に好きなので、ご一緒できるのがすごく楽しみでしたし、嬉しかったですね。

――コメディ経験も豊富な吉沢さんから見て、本作はどんな仕上がりになったと感じていますか?

吉沢:まずキャストの皆さんが本当に素晴らしい役者さんばかりで。コメディって、やるたびに「本当に難しいジャンルだな」と感じるんですけど、今作は安心して観られるコメディになっていると思います。この作品は面白さとカッコよさのバランスがすごく良くて、ただ笑えるだけじゃなく、いろいろな要素がうまく混ざり合っていて、僕はそこがこの作品の一番の魅力だと思いました。

――いま「コメディは難しい」という話にうなずいていらっしゃいましたが、眞栄田さんはどんなところに難しさを感じましたか?

眞栄田:まず、正解がわからないですよね。自分一人で面白くできるものでもなくて、相手とのテンポや間の取り方が本当に大切だと感じましたし、そういう意味では周りの方にすごく助けてもらったなと思っています。吉沢さんも仰っていましたが、人と人との関係性で感動できる部分もあって。ストーリー全体としてもすごく魅力的な作品になっていると思いました。

――演じる際、「どこまでふざけて、どこまで真面目にやるか」といったバランスは意識しましたか?

吉沢:実際に現場でテストをやってみて、自分から仕掛けることもあれば、共演者の方が動くことでシーンが生まれることもあって。監督のテイストを含め、みんなで少しずつ作っていった感覚です。


――振り切った芝居の中には、吉沢さんオリジナルの要素もあるんでしょうか?

吉沢:そういう部分もあるかもしれません。現場で実際に演じてみて、「ちょっとやりすぎかな」と感じたら、監督とも相談しながら調整していました。感覚的に試しながら作り込んでいったシーンが多かったです。

もし吉沢亮と眞栄田郷敦が兄弟だったら…

○『東リベ』シリーズでも共演 吉沢亮「どんどん役者としてステップアップしている」

――映画『東京リベンジャーズ』シリーズで共演経験のあるお二人ですが、今回は兄弟役だと聞いて、どう感じましたか?

吉沢:「出てくれるんだ!」というのが一番最初の率直な感想でした。『東リベ』の、特に1作目は彼自身まだ映画の経験が少なくて、そこからいろんな作品に出ているのを見て、どんどん役者としてステップアップしている印象がありましたから。「僕の兄貴役として出てくれるんだ」と嬉しい驚きでした。

実際に久しぶりに現場で会ってみると、監督との芝居の進め方だったり、現場での立ち振る舞いだったり、役者として、すごくいろんなものを経験してきたんだなと感じました。もちろん『東リベ』の頃も素晴らしかったですが、さらに素晴らしい役者になっていて頼もしかったです。

眞栄田:本当にありがたいです。でも、正直最初は「吉沢さんの兄貴!? マジか……大丈夫かな」という気持ちでした。同時に、間近で吉沢さんのお芝居を見られるというワクワク感もすごく大きかったです。

――兄弟という関係性を演じるうえで、意識されたことや、お二人で話し合われたことはありますか?

吉沢: 特別話し合ったことっていうのはないかもしれないです。
そもそも、そういう話って現場であまりしないよね、役者同士で。

眞栄田:そうですね。話し合いというより、実際にやりながら決めていくような。

吉沢:実際に演じてみて、「あ、そう来るんだ」っていうのに対して「じゃあこうしようか」と対応していく感じでした。

眞栄田: 一緒のシーンは多くないのですが、個人的には、蘭丸と長可が450年の付き合いという説得力が少しでも伝わればいいなと思って意識していた部分はありました。

○眞栄田郷敦「誘いはいつも兄から」兄弟とのエピソードも明かす

――蘭丸と長可は、お互い素直になれない関係性のように感じました。お二人はご自身のご兄弟とは、素直にコミュニケーションが取れるタイプですか?

吉沢:うちは普通ですね。男4人兄弟なんですけど、今でも普通に連絡を取っていますし。学生時代は多少ギスギスした時期もあったかもしれないですけど、20代を過ぎてからは仲もいいです。

眞栄田:兄(新田真剣佑)とはわざわざ会ったりはしないんですけど、何かあれば連絡取り合ったりはしますね。たまに「サウナ行こう」とか、「ジム行こう」「ご飯行こう」とか、向こうから来ます。

吉沢:彼、最近めちゃくちゃサウナ好きじゃない?

眞栄田:最近ハマってません?

吉沢:だよね。
俺にもめっちゃ連絡来るんだけど(笑)。

眞栄田:ですよね、ちなみに僕は行ったことないです(笑)。

――お誘いはお兄さんの方から来ることが多いんですか?

眞栄田:そうですね。僕の方から誘うことはあまりないかも。連絡の頻度は多くなくても、言いたいことは何でも言い合える関係性です。

――お二人がもし現実で兄弟だったら、どんな関係性の兄弟になりそうですか?

眞栄田:吉沢さんが兄貴で、もういろんなもの買ってもらって、おいしいご飯もたくさん食べさせてもらって……って感じです(笑)。

吉沢:こんな風に言っていますけど、彼は結構寡黙なタイプで。僕も割とそうなので、たぶん家の中では静かだと思います。二人で黙々としているような感じじゃないかな。

――吉沢さんは、実際にご兄弟を甘やかすようなタイプでしたか?

吉沢:甘やかすってほどではないですけど、服をあげたりはします。まあ彼(眞栄田)は、良い服をたくさん持ってるので。

眞栄田:いやいや、僕、意外と服買わないんですよ?(笑)。


○関口メンディーからのアドバイス “裸の付き合い”で感じた距離の縮まり

――吉沢さんは、実際の銭湯でロケを行ったと伺いました。現場の雰囲気はいかがでしたか?

吉沢:何人も集まって一緒にお風呂に入る、いわゆる“裸の付き合い”みたいなことが、現場の人たちとできたのは、純粋に楽しかったです。ただ、原作の蘭丸が結構体バキバキなので、お風呂のシーンでも魅せていかないとと思ってパンプアップしたりしていたんですけど。

眞栄田:そうだったんですね。

吉沢:この作品って、 彼(眞栄田)も大きいし、何より現場に脳筋番長(関口メンディー)もいたので、どうしてもそっちが目立ってしまって。僕なんかひょろひょろに見えちゃって、ちょっと悲しくなりました(笑)。

――メンディーさんから筋トレについて指南されたことも?

吉沢:結構いろいろ聞いていました。「今、ベンチ何キロ上げているんですか?」とか。現場でトレーニングの話はよくしていました。

――にぎやかな撮影現場ということで、笑いが絶えなかったのではと思いますが、ご自身や周囲のお芝居で、思わず笑ってしまったシーンやハプニングがあれば教えてください。

吉沢:バンパイアの役なので、撮影中は牙を装着していたんですけど、叫ぶとそれが結構取れちゃうんです。いわゆる“入れ歯の取れたおじいちゃん”状態になることがあって。それがコメディタッチのシーンだったりすると、後を引きずるレベルで笑っちゃって。

眞栄田:蘭丸は大体叫んでません?

吉沢:そう。だから結構な頻度で取れていたし、葵ちゃん(原菜乃華)とのシーンは、特に取れがちでした(笑)。

眞栄田:僕はあまりコメディシーンがなかった方なんですけど……最後の満島(真之介)さんとのシーンは、シリアスな場面なのに笑っちゃいました。あそこはスタッフもみんな笑いをこらえていました。

――今回はコメディの中に歌の要素もありましたね。

吉沢:事前に「歌がある」という話は聞いていたんですけど、もっと“おもしろ寄り”の曲になるのかなと思ってたんです。で、音源が来たら、普通にかっこいい曲だったので、「これ、歌えるかな」とちょっと不安になるくらいでした。

眞栄田:楽曲めっちゃおしゃれでしたよね。

――他に大変だったシーンなどはありましたか?

吉沢:ラストのバトルシーンは、爪で戦うからこその難しさはありました。剣だったらもう少しイメージしやすいんですけど、爪が伸びるっていうのが、どう動かせばいいのかイメージをつかむのが難しかったです。あと、二人でワイヤーアクションで飛んで刺し合う場面。あそこ、めちゃくちゃ怖かったです。

眞栄田:体勢がかなり難しかったですよね。体育館で3~4メートルくらい、一気にふわーっと飛ぶし、勢いがすごいからぶつかりそうになるし。

吉沢:そうそう。それでケガをしないように気をつけるのと、僕は高いところ苦手なので、それを顔に出さないようにするのとで、そこがかなり大変でした(笑)。

■吉沢亮
1994年2月1日生まれ、東京都出身。2009年にデビュー。『キングダム』シリーズ(19~)、『東京リベンジャーズ』シリーズ(21・23)などの人気作に出演。2021年には大河ドラマ『青天を衝け』(21)で主演・渋沢栄一役を務めた。2025年には主演映画『国宝』(25)が公開され話題に。日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、ブルーリボン賞助演男優賞など受賞歴多数。NHK 2025年度後期連続テレビ小説『ばけばけ』への出演も控える。ヘアメイク:小林正憲(SHIMA) スタイリスト:荒木大輔

■眞栄田郷敦
2000年1月9日生まれ、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス出身。2019年公開の映画『小さな恋のうた』(19)で俳優デビューし、以降『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』(21)、『東京リベンジャーズ』シリーズ(21・23)、『ゴールデンカムイ』(24)など話題作に次々と出演。2021年には石原裕次郎新人賞、2024年にはエランドール賞 新人賞を受賞。近年は大河ドラマ『どうする家康』(23)、映画『ブルーピリオド』(24)などにも出演し、幅広いジャンルで活躍中。ヘアメイク:MISU(SANJU) スタイリスト:stylist MASAYA(PLY)
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