地下アイドルを題材にしたショートドラマをプロデュース

音楽プロデューサーとして数々のヒット曲を生み出してきた小室哲哉が、新たな挑戦としてDMM TVオリジナルショートドラマのプロデュースを手掛けることになった。小室へのインタビューを通して、地下アイドルを題材にした作品に込めた思いや、今の音楽活動への思いを聞いた。

小室プロデュースのショートドラマ(タイトル未定)は、地下アイドル業界を舞台に、音楽の力で再生を図る人々を描くサクセスストーリー。
小室は総合プロデューサーとして、ストーリー構成から楽曲制作まで、音楽を中心に据えた作品づくりを手がける。約30話(1話約3分)で、2025年秋配信予定。

小室はショートドラマのオファーを受け、とても興味を抱いたという。特に魅力的だったのは、企画の初期段階から参加できることだったと語る。

「ショートドラマは、短くてどれだけインパクトがあるかという、今の時代の楽曲の感覚に近いところもあり、挑戦してみたいと思いました。そして、物語がすでにあって主題歌を担当するのではなく、話の内容から全部関わらせてもらえるというのが一番面白いと感じました。ずっとやりたいと思っていたことだったので」

1話約3分というのはミュージックビデオ(MV)と重なると感じたものの、ドラマということで今までにない挑戦に。「全部で90分くらいになり、どこから見ても頭からもう一度見たくなるような感じになるといいなと思っています」と述べ、「ノンフィクションとフィクションの間くらいと思ってもらえたら。自分の経験もすごく入っています」と明かす。

地下アイドルを題材にしたのは、小室が地下アイドル・Aicong(アイコン)のサウンドプロデューサーを務めていることがきっかけになったという。

「地下アイドルは、移動や宿泊、衣装やメイクなど、レコード会社が準備してくれるということはなく、トイレで準備しないといけないとか、すごく大変なんです。そのうえで、アイドルとしてプライドを持って頑張っていて、そこにすごく興味を持ちました。
ドラマを通して、純粋に夢を追いかけている彼女たちの姿が伝わればと思っています」

また、「ファンとの距離感が近すぎると危険なこともあり、近すぎてもダメだという、そこへの注意喚起や警鐘も込めています。そして、エンタメはやはり実力勝負であり、エンタメとして惹きつけるものがないとダメだということもわかるといいなと思っています」とも話した。

○いろんな人たちから聞く自身の楽曲にまつわる思い出が原動力に

現在66歳の小室。「日本のエンタメ業界の高齢化が進む中で、僕のような年齢の人たちがどうやっていったらいいかというところもドラマを通じて見せられたら。『自分はもう古いのかな、でももうちょっとやれるかな』という気持ちを反映していて、僕みたいな人もドラマに出てくるので、その生き様から何かを感じ取ってもらいたい」との思いも明かした。

そして、これまでに何度も「自分はもう古いのか……」と感じることがあったと打ち明ける。

「最初に感じたのは1998年頃、自分のブームの終わりを感じている時で、その後、いろんなことがあって、紆余曲折、波乱万丈でしたが、今も続けさせてもらっていて。僕より10歳近く年上の矢沢永吉さんが今度東京ドームでライブをされますが、僕もまだまだ頑張らなきゃなと思います」

潮時を感じた小室を再び突き動かしたものは何だったのか。毎日いろんな人から自身の楽曲にまつわる思い出を聞くそうで、「それが大きな原動力になっている」とうれしそうに話す。

「『CAN YOU CELEBRATE?』で結婚式を挙げ、家族ができましたとか、この曲を聴いて試験に受かりましたとか、皆さん僕の曲とともにいろんな思い出を持ってくれていて、それが僕の糧になっています。自分で作った曲が1600曲くらいあって、『え、そんな曲で?』と思うような曲も皆さんの思い出になっていて、とてもやりがいを感じます」

ますます高まる音楽への情熱「今、エンジン全開です」

現在の音楽業界については、「単純に羨ましいなと思います」と率直な思いを語る。

「今は音楽がどんどん世界に飛んでいける。
80~90年代は、海外に行ってもなかなか受け入れてもらえるところまでいかなかったので。今はSNSの発展もあり、一瞬で音楽が全世界に届きますから」

昨年、フランス・パリで開催された「JAPAN EXPO Paris」に出演した際には、現地ファンが「Get Wild」などを大合唱。小室は「自分の曲をヨーロッパの人たちが日本語で歌ってくれている姿を見て、世界がとても近い、良い時代になったなと感じました」と振り返る。

時代は変わっても変えずに貫いていることを尋ねると、「曲を聴いた瞬間に『これ小室哲哉の曲じゃない?』とわかるってよく言われるんです。それが嫌だなと思う時期もありましたが、最近はわかってくれた方がいいなと思うようになり、これからもそのままでいこうと思います」と笑い、その自分らしさについて「自分ではよくわかりませんが、グルーヴなのか、ノリなのか、中毒性みたいなものがあるのかなと思います」と分析した。

小室が生み出すTKサウンドを愛する人たちの声を糧に、音楽への情熱はますます高まっているようで、「もう1回バズりたい」と願望を口に。

「年齢を重ねると多くの人がもう潮時かなと考えがちですが、いろんなツールや機会が増えている中で、僕がショートドラマなど新しい挑戦をして成功できたら、音楽業界で高齢になってきた人たちに向けて、一つのモデルケースとして示せるのかなと。こういうパターンもありますよと伝えられたらと思っています」

地下アイドルと関わる中でも「年齢は気にしなくていいんだ」と思うようになったという。

「自分の実年齢的には定年退職をとっくに迎えているので、リタイアしないといけないという感じですが、アイドルの子たちは先生みたいな感じで見てくれていて、自分の年齢を感じることなく頑張れています」

そして、「今、エンジン全開です」と笑顔を見せる小室。「やはり音楽は気持ちをハッピーにしたり、背中を押したり、良い方向に進められる文化だと思うので、そのお手伝いをしていきたいなと。少しでも皆さんを音楽で幸せにできたらと思っています」と熱い思いを語ってくれた。

■小室哲哉
1958年11月27日生まれ、東京都出身。
音楽家。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家、キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、ミキシングエンジニア。1983年、宇都宮隆、木根尚登とTM NETWORKを結成し、1984年に「金曜日のライオン」でデビュー。同ユニットのリーダーとして、早くからその音楽的才能を開花。以後、プロデューサーとしても幅広いアーティストを手がけ、これまで世に生み出した楽曲総数は1600曲を超える。日本歴代シングル総売上が作詞・作曲・編曲の全ての分野でTOP5に入り、20曲以上がミリオンセラーを獲得している。
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