俳優のオダギリジョーが主演・共同プロデューサーを務める映画『夏の砂の上』のクライマックスとなる雨中の場面写真が公開となった。

『夏の砂の上』は、読売文学賞の戯曲・シナリオ賞を受賞した松田正隆氏の戯曲を、玉田真也監督が映画化した作品。
物語は、息子を亡くした喪失感をきっかけに人生が止まってしまった主人公と、妹が置いていった17歳の姪との突然の共同生活からはじまる。愛を失った男、愛を見限った女、愛を知らない少女……それぞれの痛みと向き合いながら、彼らが夏の砂のように乾き切った心に、小さな希望の芽を見つけていく姿を描き、第27回上海国際映画祭の「メインコンペティション部門」では、審査員特別賞を受賞した。

本作の舞台は、雨が降らない渇水状態の夏の長崎。蝉の声が鳴り響き、うだるような暑さがスクリーンを通して伝わってくる。主人公の治(オダギリ)は、 幼い息子を亡くした喪失感から、働きもせず街をふらふらとしている。妻・恵子(松たか子)も彼から離れつつあり、大切なものを失い続ける日々の中、治の妹・阿佐子(満島ひかり)が、娘の優子(髙石あかり)をしばらく預かって欲しいと突然訪ねてくる。優子もまた父親の愛を知らず、乾いた心を抱えていた。こうして、どこか似たもの同士の2人の共同生活が始まるという物語だ。

この度、映画公開前には封印されていた本作の重要シーンを捉えた場面写真が公開となった。渇水状態の長崎の街に雨が降り、心の乾きを潤すかのような待望の雨に治と優子が歓喜するシーンである。

優子を演じた髙石は、このシーンに特別な思い入れがあり、「治と優子が雨を喜ぶシーンは、とても印象的です。のちにオダギリさんが『あのシーンの芝居は本当に映画的だった』と言ってくださって、鳥肌が立つほど嬉しかったです」と述懐。
主演だけでなく、共同プロデューサーとして本作に携わったオダギリは、本作に込めた思いについて「監督作ではないけれど、とても深い関わり方をさせていただいたので、すべてのシーンに思い入れがあります。優子と治のシーン次第で見え方の変わってくる映画だと思いますが、その瞬間が幸せに見えるといいなと。ただ僕は、映画をつくる側として、観客に答えを渡す作業ではダメなのではないかと感じていて。人によって受け取り方が違ったりするものこそが、映画であってほしいと思っています。水を飲むシーンだって、僕はハッピーであってほしいと思いましたが、悲しいシーンだと受け取る人もいるはずで、それこそが映画としての成功であり、正解だなと。観終わった後に余韻を感じたり、深く考えることのできる作品がないと寂しいものですよね。やはり僕は手軽に観られる作品にはあまり興味が持てないので、今後もこういった映画に関わっていきたいなと思っています」とコメントしている。

(C)2025 映画『夏の砂の上』製作委員会
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