10年の区切りの年を大切に 30歳も「進化できる年になったら」

今年デビュー15周年、そして、2月12日に30歳の誕生日を迎えた女優の川栄李奈が、8月22日に『川栄李奈1st写真集 youphoria』(主婦と生活社刊)を発売する。2015年8月にAKB48を卒業してから10年、朝ドラヒロインを務めるなど女優として大きく飛躍し、プライベートでは2児の母親に。川栄にインタビューし、写真集への思いを聞くとともに、芸能生活15周年を振り返ってもらった。


――1st写真集発売が決まった経緯を教えてください。

もともと30歳、デビュー15周年という節目で何かしたいと思っていて、記念に残るように写真集を出したいと思い、皆さんに協力してもらって実現することができました。

――オーストラリアで撮影されたそうですが、いつ頃撮影されたのでしょうか。

スケジュール的に2月に撮影できるということになり、せっかく行くなら誕生日をオーストラリアで過ごそうということになり、29歳最後の日と30歳最初の日が全部詰まっている一冊になっています。

――29歳最後の日はどんなことを考えていましたか?

あまり実感はなかったですが、30歳というのが自分の中ですごく大きいので、楽しく過ごそうと思いました。20歳の時もそうでしたが、10年の区切りになる年をすごく大切にしていて、自分の中で進化できる年になったらいいなと思っています。

――20歳の時はAKB48卒業という転機の年に。

20歳だから卒業しようと思ったわけではなく、ちょうど20歳だっただけですが、20歳で自分の人生が大きく変わったので、30歳も大きく変わったらいいなと思っています。

――どう変わったらいいなと考えていますか?

今までは自分の意見を言うのが苦手で、現場で言われた通りにやっていましたが、自分の意思も出てきて、やりたいことも定まってきたので、それをちゃんと自分の口から言えるようになったらいいなと思っています。

――定まってきた“やりたいこと”とは?

例えば、今まではいただいたお仕事を無理してでも全部やろうと思って、2つ3つ縫いながら作品を撮っていましたが、1つを選ぼうと思うようになりました。忙しすぎて、この忙しさをずっと続けるのは心と体の健康的にも良くないなと20代後半で思ったので、30歳は自分で責任を持って選び、それを全力で全うして楽しみたいなと。

――20代をがむしゃらに頑張ったおかげで、朝ドラのヒロインをはじめ、連ドラの主演も任されるようになり、30代で次のステージに進まれるのですね。


そうですね。20代はがむしゃらに頑張ってきて本当によかったなと思っています。

――改めてデビューから15年の道のりを振り返ってどのように感じますか?

本当にいろいろあって、いい経験も悪い経験も経験し、人生として全部学びになる経験だったのでありがたいなと思いつつ、楽しく生きるというのをモットーにしているので、これからさらに楽しく生きられたらいいなと思っています。

――楽しく生きるというのをモットーに掲げたのはいつ頃からですか?

AKB48の時にしんどいことが多すぎて楽しめなくて、楽しもうと思って卒業したので、そこからです。この10年間はずっと楽しむことを心がけています。

AKB48時代の経験が自分の土台に「全部が今に生きている」

――芸能界入りのきっかけとなったAKB48のオーディションは友達に誘われて受けたそうですね。

受からないと思っていたので、ノリで受けたら受かって。自分でやりたいと思ったわけでもなく、何も知らない状態でやらなきゃいけない環境に置かれたので、しんどかったのだと思います。役者は自分がやりたいと言って始めたものなので、夢を叶えるまではやめられないなと思っています。

――AKB48時代はしんどかったとのことですが、楽しさを感じる瞬間もありましたか?

もちろんファンの方が応援してくださったり、ドームツアーができたり、そういうのもすごく楽しかったですし、メンバーに出会えたことが一番の宝物で、今でも仲いい友達は元メンバーばかりなので、家族のような友達に出会えて本当によかったです。

――アイドル時代に培われたもので、今も生きているなと感じていることを教えてください。

全部が今に生きています。AKB48時代のスケジュールの大変さ……お休みがないとか、ポジションを30分で覚えてくださいとか、嘘みたいな出来事がたくさんあって、今、2つ3つ作品を縫っていても大丈夫なぐらいAKB48の時の方が忙しかったので、鍛えられたなと感じています。
集団生活で人に気を配ったり、人の変化を見抜く力なども学んだので、AKB48時代は一番大変でしたが、それが自分の土台になったので、本当にありがたかったなと思います。

――AKB48卒業時に、「朝ドラのヒロイン」「大河ドラマ出演」「日本アカデミー賞受賞」の3つを目標に掲げられていましたが、女優として活動していきたいと気持ちが固まったのはいつ頃ですか?

18歳の時にドラマに出させてもらう機会が増えて、心の底から楽しいなと思ったので、楽しいことやろうと。AKB48でも選抜に入りたいという夢があったのですが、それが叶ったらその先の夢がなかったので、お芝居1本でやろうと思って卒業しました。

――すでに「朝ドラのヒロイン」と「大河ドラマ出演」を叶えられ、今年4月期の日本テレビ系ドラマ『ダメマネ! ーダメなタレント、マネジメントしますー』で主演を務められるなど女優として大活躍ですが、この展開は想像されていましたか?

全く想像してなかったです。そもそも朝ドラヒロインは絶対なれないと思っていたので、それが叶ったことが自分の中では大きく、すごくうれしかったです。目標に掲げていたものの無理だろうなと。

――演技力を磨くために努力されたことがあったのでしょうか。

私はお芝居は後からついてくるものだと思っていて、人間力を磨くことを意識していました。「この子頑張るよね」「いい子だよね」と思ってもらえたら使ってもらえるんじゃないかなと思ったので、基本的なことですが、挨拶をしたり、場の空気を読んだり、そういうことをちゃんとするようにしました。

――女優業に専念してからの10年で、一番の転機はヒロインを演じた朝ドラ『カムカムエヴリバディ』になりますか?

そうだと思います。AKB48の時からずっと朝ドラのオーディションを受けていて6回目だったのですが、諦めないで続けていた自分頑張ったなと思いますし、いろいろな朝ドラがある中で『カムカムエヴリバディ』に出られたというのもタイミングがすごく良かったなと思います。

――朝ドラヒロインはご自身にとってどんな経験になりましたか?

当時、主演の経験も全然なかったので、意見を言うことができなかったんです。
監督に言われたことは全部飲み込むものだとも思っていて。でも、オダギリジョーさんや深津絵里さんが作品をより良くするために監督やプロデューサーと話されている姿を目の当たりにし、お2人が背中で見せてくれたので、朝ドラ後から、より良いものを作るために意見したり、わからないことがあったら聞いたりできるようになりました。

タフすぎて共演者も驚き「『バグっている』とよく言われる(笑)」

――プライベートでは、2019年に第1子、2023年に第2子を出産されましたが、母親になってからの変化をお聞かせください。

もともとけっこうタフですが、よりタフになりました。あと、私は超人見知りなんですけど、子供がコミュニケーション能力が高くて、2人とも全く人見知りをしないので、子供から学んで、いろんな人に話しかけられるようになりましたし、仲良くなれるようになりました。

――なぜお子さんはコミュニケーション能力が高くなったのでしょう?

仕事が忙しくて、おばあちゃんに見てもらったり、マネージャーさんに見てもらったり、いろんな人と触れ合う機会が多いというのもあるのかなと思いますが、誰にでも抱きつくし、誰にでもついていってしまうし、すごいんです(笑)

――よりタフになったとのことですが、具体的にどう変わったのか教えてください。

体力的にも精神的にもタフになりました。産後は寝られなくてしんどかったので、それに比べたら今は全然平気ですし、落ち込んでいる暇はないので落ち込まないですし。中学の時とか体育会系だったので、昔からタフでしたが、AKB48に入ってよりパワーアップし、さらにお母さんになってよりパワーアップし、今、無敵な状態です(笑)

――無敵のタフさは確実に女優業にもプラスに?

そうですね。ちょっと忙しいだけだったら全然余裕なので、「バグっている」「おかしい」とよく言われます(笑)。『ダメマネ!』の時も疲れなくて、セリフ量も「私、この話少なくない?」とか言うと、共演者の方から「めちゃくちゃ多いよ! 大丈夫!?」と言われました。

――過去にセリフ量の多い役を経験されていたのでしょうか。

朝ドラ後に『となりのナースエイド』というドラマをやらせてもらって、医療用語で早口でセリフがめちゃくちゃ多くて、過去一セリフ量的にしんどかったんです。
それを経ての『ダメマネ!』だったので余裕だなと。日々鍛えられてパワーアップしている感じはあります。

――とはいえ、連ドラの撮影期間中などは子育てとの両立がかなり大変だったのでは?

ドラマ中は両立できてないです。シッターさんやお母さんが見に来てくれたり、みんなの助けを借りながら、うまくスケジュールを組んでやっているという感じです。

アカデミー賞受賞や朝ドラヒロインの母役…今後の抱負を語る

――この先の人生はどのように思い描いていますか?

自分がやりたい方向に進んでいけたらいいなと。新しい夢ができたらそれを叶えられるように努力したいですし、一番は健康で楽しく過ごせたらと思います。今、役者が楽しいからやっていますが、セリフ覚えが悪くなって楽しくないと思ったらやめると思いますし、常に楽しいことを求めながら生きていきたいです。

――40代ではどうなっていたいですか?

朝ドラでヒロインのお母さん役もやりたいので、40代になってできたらうれしいです。あと、配信系が流行っているので、配信で世界の方に見てもらうというのも憧れています。

――AKB48卒業時に掲げた3つの目標のうち、残すは「アカデミー賞受賞」です。

これは30代のうちに叶えたいと思っています。新人賞など何でもいいのでアカデミー賞のあの場に行けたら。
その先にまた夢ができるかもしれませんが、まずはあの場に行きたいです。

――お母さんとしての抱負もお聞かせください。

子供が自由にのびのびと暮らせていたらそれでいいと思っていますが、子供の夢ができた時にそれを応援できるように、私も夢を追い続けて、その背中を見せていきたいなと思います。

――ちなみにお子さんたちは川栄さんのお仕事を理解されていますか?

理解していて、すごく応援してくれています。下の子もテレビを見て『ママ』と言っています。

――頑張っている姿を見せたいというのも大きな原動力に?

そうですね。子供のためにママはお仕事を休んだとか言いたくなくて、夢を追うことの素晴らしさを伝えられるように、これからもお仕事を頑張りたいです。

■川栄李奈
1995年2月12日生まれ、神奈川県出身。2010年7月にAKB48第11期研究生オーディションに合格し、同年11月に公演デビュー。2015年8月にAKB48を卒業後、女優として活躍。2021年度後期の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』でヒロインの1人を演じて注目を浴びた。そのほか、近年の出演作に、大河ドラマ『青天を衝け』(21)、ドラマ『知ってるワイフ』(21)、『親愛なる僕へ殺意をこめて』(22)、『となりのナースエイド』(24)、『ダメマネ! ーダメなタレント、マネジメントしますー』(25)、映画『地獄の花園』(21)、『変な家』(24)、『ディア・ファミリー』(24)など。
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