セイコーウオッチの「プレザージュ」は、日本のさまざまな美意識を時計に表現し、世界に向けて発信を続けるブランドだ。5つのシリーズを展開しているが(2025年7月時点)、今回は「クラシックシリーズ クラフツマンシップ」から、白の琺瑯(ほうろう)ダイヤルを採用したレギュラーモデルの「SART009」を実機写真で紹介しよう。
製品サイトによると、プレザージュのクラシックシリーズは『日本の伝統的な工芸品や衣服など日常を彩るものに用いられた色彩や、素材、質感などの「用の美」に着想を得て、そのしなやかさを表現したシリーズ』とされている。その中の「クラフツマンシップ」は、有田焼、漆、琺瑯、七宝といったダイヤルを持つコレクションだ。
SART009は白い琺瑯ダイヤルのモデル。ベテランの琺瑯職人、横澤満氏が手がける琺瑯ダイヤルは、しっとりとした滑らかな艶があり、温かみと柔らかみも感じさせる。どこかほっとする雰囲気だ。横澤氏は0.01mm刻みの仕上がりを見抜く眼力を持つといい、気候などに応じて下塗りを超微妙に調整しているという。
琺瑯は耐久性も高く、この美しい色合いが長持ちする。なんといっても琺瑯には、西洋から飛鳥時代の日本に伝わり、近代では1866年に実用化されたという長い歴史がある。
ダイヤルのデザインは、セイコーの創成期に登場した懐中時計「タイムキーパー」をオマージュしたもの。黒いローマンインデックスと琺瑯ダイヤルの組み合わせ、そしてダイヤル外周のミニッツレール、リーフ針(時分針)、6時位置の24時間サブダイヤルなど、シリーズを象徴するようなクラシカルなたたずまいだ。
時分針と秒針は濃い青色をしており、光の当たり方で色味が変わる。
ケース素材はステンレススチール、ケースサイズは横40.2mm×縦48.0mm×厚さ12.1mmだ。ケースには、独自の表面硬化技術であるダイヤシールドを施している。風防は内面無反射コーティングのデュアルカーブサファイアガラスだ。防水性能は10気圧の日常生活用強化防水となっている。
ストラップは、白い琺瑯と相性のいい黒の牛皮革。LWG(Leather Working Group)の認証を取得したタンナーで生産されたものだ。LWGとは、持続可能なレザー生産を目指して活動する非営利組織。
ムーブメントは手巻きつき自動巻き機械式の「キャリバー6R5H」で、パワーリザーブが最大72時間(約3日間)と長い点がうれしい。精度は日差+25秒~-15秒。
ケースの裏ぶたはガラス素材のシースルーバックとなっており、ムーブメントの構造と動きを見られる。凝った作りではないが、個人的に機械式のムーブメントが時を刻む様子を眺めていると落ち着く。
ストラップがレザーということで暑い時期に常用するのは厳しいが(汗とニオイが気になりやすい)、それ以外の季節ならこういうシンプルな腕時計を持っていると何かと重宝する。年代を問わず、スーツスタイルやビジネスカジュアルにもマッチし、ちょっとしたフォーマルな場所でも安心して身に着けられる1本だ。
○ギャラリー