雪印メグミルクは、バター製造開始から100周年の節目に新商品「The 発酵BUTTER」を今年9月1日に東日本限定で発売する。これに先立ち、8月7日には新商品発表会と先行試食会「"毎日の朝食が待ち遠しくなる"「The 発酵BUTTER」で味わうTheパン朝食体験」を開催した。
同イベントにはパンコーディネーター/パンシェルジュのパン野ゆり氏と、バターマニアの長尾絢乃氏が登場。「パンとバターの専門家が実践する"充実した朝時間の過ごし方"」についてトークした。
○「The 発酵BUTTER」の開発背景と特長
牛乳、チーズ、ヨーグルト、バターなどの乳製品や飲料・デザート商品の製造販売のほか、グループ会社を通じて、酪農生産に関わる「飼料・種苗」などの事業を展開している雪印メグミルク。
1923年の関東大震災で経済が混乱し、国内の酪農業界が苦境に陥るなか、酪農家の窮地を救うため、1925年に設立された北海道製酪販売組合が前身のひとつとなっている。
「1925年7月25日にバターの製造を開始し、創業100周年を迎えた2025年より、7月25日を「雪印北海道バターの日」と新たに制定しました」とは、同社の乳食品事業部・杉本貴司氏。新商品「The 発酵BUTTER」の開発背景や特長について説明した。
「バターの製造から100年を迎えた今年、次の100年に向けたバターの新商品として「The 発酵BUTTER」を発売します。バターの製造から始まった会社としてバターの新しいおいしさを引き続き提供し、これからの100年に向けてバター市場をより活性化させたいとの思いから、今回の新商品開発に着手しました」(杉本氏)
「The 発酵BUTTER」はバターと相性の良いパン好きを主なターゲットに据え、黄色の商品ロゴとカラーを採用して「雪印北海道バター」から生まれた発酵バターであることを訴求しているという。
「特徴のひとつが、パンの香りと調和する豊かな発酵風味と後味に余韻を与える濃厚さとコク。そして、その濃厚さとコクが生み出す贅沢感です。忙しい朝のわずかな時間の中でも、この発酵バターを楽しんでいただくことで充実感を感じていただけるよう、すっきりとした風味に仕上げています」(杉本氏)
「The 発酵BUTTER」は通常のバターと違って薄く塗り広げるのではなく、分厚く削ってパンなどに載せる食べ方を推奨している。分厚く載せることで、よりバターのおいしさをダイレクトに味わえるようだ。
「バターは非発酵タイプと発酵タイプの2種類に分類され、、店頭で現在並ぶ「雪印北海道バター」シリーズは、すべて非発酵型の商品です。発酵バターはヨーロッパで主流な商品で、日本ではなかなか種類が少なく、本商品で発酵バターの国内市場を拡大していきたいと考えています」
発酵バターの作り方は2通りあり、原料となるクリームの段階で乳酸菌を配合する方法では、より発酵風味が強くなるという。輸入品のエシレバターなどはこの製法を採用しているそうだ。
「もうひとつはクリームを撹拌してバターの塊ができた段階で、乳酸菌を配合する製法です。後発酵と呼ばれるタイプで、「The 発酵BUTTER」ではこちらの方法で製造しています。風味が比較的穏やかで後味にコクを感じやすく、より日本の方にも食べやすい味わいが特徴です」
また、「雪印北海道バター」特有のコクと発酵風味の特長である爽やかさを兼ね備え、分厚く削って載せてもコクが強すぎるといったことがないよう、パンとの相性が良い風味に仕立てているという。
○日本市場における発酵バター普及の課題と期待
発酵バターを楽しめる朝食メニューが提供され、パンコーディネーター/パンシェルジュのパン野ゆり氏と、バターマニアの長尾絢乃氏によるトークセッションが実施された。
パン野氏は日本全国数え切れないほどのベーカリーを訪れ、パンを独自の視点で分析。メディア出演などで幅広く活躍している。バターマニアの長尾氏は、観光牧場で約10年間の勤務を経て国内外160種類以上のバターを味わい、メディアでバターを解説しているバター愛好家だ。
濃厚なコクと芳醇な香りが忙しい朝にゆとりの時間と贅沢感を与えてくれる「The 発酵BUTTER」にちなみ、パン野氏は"充実した朝食時間"について「私は前日から朝にどんなパンを食べるか考えていることが多いんですが、自分のお気に入りのパンを選んで、好きな器に載せる時間が、贅沢だなと感じます」とコメント。
「冷凍でストックしているパンから選ぶだけでなく、朝にパン屋さんへ買いに行くこともあるんですが、午前中の朝食時間が充実すると、その日1日を前向きな気持ちで過ごせる気がます」と述べ、その美味しさを最大限に引き出す朝のルーティンを紹介した。
「パンとコーヒー、バター、できれば果物のような彩りのあるものが食卓に並ぶと、より気分も上がりますね。バターはパンを焼く前に冷蔵庫から出して常温に少し戻したり、冷凍の食パンをふっくら水々しく焼き上げるため、トーストする前に霧吹きでお水をかけたりすることもルーティンです」(パン野氏)
バターマニアの長尾氏もパンは冷凍でストックしているそうで、「最近だとパンは10種類前後。パターは冷蔵庫などに8種類くらい。本当にバターとパンだらけです」とのこと。「The 発酵BUTTER」の味わいについては「塗るのではなくてこんもり盛って食べたい」と語った。
その後、パン野氏は専門家として「食パンやバケットは鉄板ですが、クロワッサンやブリオッシュなどバターがたくさん使われているパンに、追いバターするのもリッチでおすすめです。ライ麦パンや全粒粉パンなどの酸味とも発酵バターの乳酸菌との相性が良いのかなと。パン業界で最近トレンドのサワードゥも合うと思います」と、「The 発酵BUTTER」に合うパンを紹介した
最後は日本市場で認知度が低い発酵バター普及への課題と「The 発酵BUTTER」への期待を、それぞれ次のように語った。
「私はフランスなどヨーロッパにもパンを食べに行くんですが、パリは発酵バターが主流で種類も多く、フランスのスーパーでは日本より安価に手に入ります。種類と価格面はこれからの課題なのかなと思います。ただ、100円、200円の金額で朝の充実感が変わって、贅沢な気持ちや特別な時間になると思えば、ポジティブに受け止められます」(パン野氏)
「この商品が出ることで日本の発酵バターの市場がもっと広がっていくのかなと。フランスの少し癖のある個性的なバターもそれはそれで美味しいんですが、「The 発酵BUTTER」は日本人の口に合うバターなので、この贅沢感とすっきりコクを味わえるバターをどんどん広げていただきたいです」(長尾氏)
9月1日から東日本限定で発売される「The 発酵BUTTER」。
希望小売価格は598円となっている。
伊藤綾 いとうりょう 1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii この著者の記事一覧はこちら
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