皆さんはご家族と、「資産運用」について話題にしたことはありますか。親子だと「資産運用」という言葉に対するイメージが、大きく異なる場合があります。
その理由の1つとして挙げられるのは、世代によって社会人で直面した経済環境が異なるということです。
○親子で異なる「資産運用」のイメージ
たとえば、現在、50代や60代の世代は、日本経済の厳しい局面を社会人として経験してきました。
かつては、国内外の資産にバランスよく投資できる商品がほとんどありませんでした。
そのため、この世代の人たちにとって「投資」と言えば「日本国内の株式」というイメージを持っている人が多いと考えられます。
日経平均株価は、バブル崩壊以降、20年以上も低迷を続けていて、「投資といえば損をするもの」という認識の人も多いのではないでしょうか。
一方、今の20代や30代が社会人になってからは、親世代の頃と比較して経済状況や投資対象などが大きく変化しています。
国内だけを見ても、日経平均株価はこの10年ほど上昇基調にあり、この夏、史上最高値を更新したことが大きなニュースに。
国内外の幅広い資産に低コストで投資できる商品・サービスも増えてきました。また、この10年ほどの間に、NISAが始まったりiDeCoを利用できる人が拡大したりして、資産運用を身近な資産形成の手段として認知している人も多いかと思います。
○資産運用のリスクとリターンは表裏一体
ただ、資産運用に対するイメージが比較的ポジティブであったり、資産を増やした成功体験があったりする世代の方にも、忘れないでほしいことがあります。
それは「資産運用には必ずリスクがともなう」ということです。
「資産が大幅に減る」という経験をしたことがないと、目先の利益を大きくすることに目が行きがちになるかもしれません。
しかし、資産運用のリスクとリターン(=利益)は表裏一体です。
大きなリターンを狙うためには大きなリスクを取る必要があり、その分だけ大きな損失を出す可能性も高まります。リーマン・ショックのような経済情勢の急激な悪化はいつ起こるかわからず、相場の動きを予測して損失を回避することは難しいものです。
リスクを考慮せずにリターンを追い求めていると、思いがけない経済の動きに直面したときに、自分の資産が大幅に減ってしまうかもしれません。
○今の自分に合ったリスクとリターンのバランスを
資産運用では、リターンを追い求める前に、自分がどれくらいのリスクなら取れるかを考えてみることをおすすめします。
「自分に合ったリスク」は、年齢や年収、金融資産の額などをもとに考えるため、ひとりひとりの状況によって異なります。たとえば、一般的に、年齢が若いほど、収入を得ながら資産運用を続けられる期間は長いためリスクを取れるとされています。
さらに、同じ年齢でも他の条件によって取れるリスクは変わってくるため、それらを総合して考えることになります。
自分が取れるリスクの程度が見えたら、さまざまな資産に分散して投資することなどでリスクをコントロールしましょう。世界中のさまざまな国や企業の株式のほか、債券や不動産、金など、値動きの異なる資産に分散することで、お互いの価格の上がり下がりを打ち消し合いリスクを抑える効果が期待できます。
「資産が大幅に減る」という経験をしていないと、最近好調な特定の商品に集中して投資をしたくなるかもしれません。
しかし、最近好調な商品がずっと好調とは限りませんし、それではリスクを取りすぎてしまうおそれもあります。
この夏、ご家族と資産運用について話す機会があれば、それをきっかけに自分自身のリスクとリターンのバランスをあらためて考えてみるのはいかがでしょうか。
牛山 史朗 ウェルスナビ 執行役員 リサーチ&クオンツ 働く世代の誰もが「長期・積立・分散」の資産運用を行えるようにしたいという想いから、2015年12月にウェルスナビに入社。金融工学の専門知識を活用し、自動の資産運用サービス「WealthNavi(ウェルスナビ)」の資産運用の仕組みを開発・リードしてきた。ウェルスナビ入社以前には、三菱UFJ信託銀行で個人向けの資産運用アドバイスなどを担当した後、野村證券にてグローバルな投資戦略の開発を行った。京都大学工学部で人工知能を研究、京都大学大学院情報学研究科で金融工学を専攻。 この著者の記事一覧はこちら